
CLOUD 9
by: 杜 昌彦
第1話 : Born on a Different Cloud(1)
ずっと書いてきたけれど自伝じゃない。実人生について書いた連中はみんな死んじまうのに気づいたんでね。 ——JL、一九七六年、ファンの質問に答えて 好きなとこ行けない タイムマシーンいらない ——The Birthday「C […]
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第2話 : Born on a Different Cloud(2)
母は成熟した女性や保護者というよりも、どちらかといえば映画や音楽や踊りを教えてくれる歳上の女性といった風だった。躍起となって枠に嵌めようとする伯母から逃げ込むには母の家はぴったりの隠れ家だった。もとより空想ばかりして授 […]
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第3話 : Born on a Different Cloud(3)
PとGがいうように不審者を実際に見たやつも、実際に見たやつを実際に知っているやつもいなかった。街はずれのあの建物には幽霊が出るらしいとか、ネス湖の怪物とかUFOといった類いのくだらない噂にすぎず、だれひとり本気にはして […]
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第4話 : Get Off Of My Cloud(1)
ジュリアーニ以前、まだソーシャルメディアもなく、殺人が日常茶飯事だった僕の街では、Mの死は数行の記事にさえならず、一五分間の名声を得ようとした襲撃者にはお気の毒なことに、一瞬たりとも話題にならなかった。Mが何者であるか […]
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第5話 : Get Off Of My Cloud(2)
一九六〇年秋の霧がかった夜、のちに僕らのアルバムの装画を描き、僕とYのベーシストにもなるKはひどく腹を立てていた。とはいってもMの癇癪のような常軌を逸した怒りではない。襟が高いロング丈のジッパーつきスウェード革ジャケッ […]
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第6話 : Get Off Of My Cloud(3)
その数週間前といってもいいし百年後といってもいいのだけれど、その東洋人は気づくと地獄にいた。それまで赤い膠質液に浸かって積層形成されながら前世の夢を見ていた。その夢もまたろくな世界ではなかった。夢が破られたのは有機印刷 […]
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第7話 : Obscured By Clouds(1)
僕は歴史家としては落第だ。かつて幾度となくMが真顔で僕に伝えようとしてくれていたときには、その戯言たわごとはもうよせよ、酒が不味くなると遮り、聞き流してしまった。おかげでいざ書こうとしてみると何ひとつ思いだせない。前章 […]
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第8話 : Obscured By Clouds(2)
まったく奇妙な体験だった。僕、P、Gの三人ともが本来の人生とは異なる時間を生きはじめた気分になったのだ。このことは何度も話し合って意見が一致している。あるいはそれまでにも無数の小さな歯車が機能していたのだろうし、その後 […]
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第9話 : Obscured By Clouds(3)
アー写の撮影をはじめて経験したのはその数日後だったように思う。Aが僕らを撮りたいとMを通じて申し入れてきたのだ。ふうん、まぁいいけど……とかなんとか、すかした態度を装いながら僕らはまんざらでもなく、着たきりだった衣裳を […]
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第10話 : Cloudburst(1)
歴史上もっとも大金を稼いだロックグループの自負はあるし、また稼ぎませんかとの誘いを何度も断ってはきたけれど、僕らだって最初から順風満帆だったわけじゃない。いつの世の若者もそうであるように、Mならぬ僕らには先なんて見えな […]












