特集: 『インフィニット・ジェスト』の次にはこれを読め!
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杜 昌彦
AIがひとびとの行動を操り戦争へと駆り立てる未来。過去の遺伝情報から再現された逃亡兵のMはひょんなことから1960年のハンブルクへ。のちに音楽で世界を救うことになる不良少年たちに出逢う。敵に捕らえられたMは命と引き換えにかれらの解散を防ぐ使命を与えられる。世界滅亡を望む勢力からMはかれらを守り通すことができるのか——? だれもが一度は夢想しながら書かれることのなかったSFエスピオナージュ!
読んだ人: 杜 昌彦
吉里吉里人
井上ひさし
医学立国、農業立国、好色立国を掲げ、東北の一寒村が突如日本から分離独立した! SF、パロディ、ブラックユーモア、コミック仕立て、小説のあらゆる面白さ、言葉の魅力を満載した記念碑的巨編。
ある六月上旬の早朝、上野発青森行急行「十和田3号」を一ノ関近くの赤壁で緊急停車させた男たちがいた。「あんだ旅券ば持って居だが」。実にこの日午前六時、東北の一寒村吉里吉里国は突如日本からの分離独立を宣言したのだった。政治に、経済に、農業に医学に言語に……大国日本のかかえる問題を鮮やかに撃つ、おかしくも感動的な新国家。日本SF大賞、読売文学賞受賞作。
読んだ人: 杜 昌彦
バラクーダ・スカイ
イシュマエル・ノヴォーク
『☆』で読書家の話題をさらったインディ文学の巨匠、イシュマエル・ノヴォーク最新長篇!
ヴェトナムの悪夢から大麻とおふざけに逃避する作家、ジェイクは腐れ縁の元恋人ステイシーから実家に帰る話を切り出され、無関心を装いながらも落ち着かない。偉大な父を追うあまり家庭を顧みないテキサスの保安官代理、エミールは失敗した結婚から逃げるように無茶をやり、妻ばかりか息子の愛まで失いかねない有様。護送中に逃亡した囚人を追い、カリフォルニアを訪れたエミールは傷心のステイシーと出逢う。一方、クラブを焼かれたギャングが落とし前をつけるべく囚人に刺客を差し向け、不運にもジェイクは騒動に巻き込まれる……。人生を繋ぎ止めるために作家は書き、保安官はレンジャーになることに固執する。男らしさに翻弄されるふたりの人生が、虹色スペクトルのパレードで交差する!! 80年代カリフォルニアを舞台に展開されるオフビートな物語。
読んだ人: 杜 昌彦
インフィニット・ジェスト
デヴィッド・フォスター・ウォレス
過去に夢見られた未来。中毒者更生施設エネットハウスの住民と、その近所のエンフィールドテニスアカデミーの学生は、視聴者を耽溺させ発狂に至らしめる映画『インフィニット・ジェスト』、及びそれを生み出した家庭の歴史を巡る謀略に巻き込まれる……世界的ベストセラー、本邦初訳成る!
読んだ人: 杜 昌彦
☆
イシュマエル・ノヴォーク
『コロナの時代の愛』の鬼才、イシュマエル・ノヴォーク待望の最新長編!
ウォルマートのレジ係、マーガレット・ホットフィールドは一ヶ月前に母を亡くして天涯孤独。ある昼下がり、アパートを訪れた弁護士に、逢ったこともない父の存在を告げられた。1971年にパリのアパートで客死した伝説のロックバンド〈パーセプション〉の歌手、ダグラス・ハイドパークの血をマーガレットが受け継いでいるというのだ。運命に導かれるがごとく契約書に署名した彼女は、ヌンチャクを手にしたトンボ眼鏡のアフロファンキーDJ、全裸で空から降ってきたプレスリーのそっくりさん、写真家にして弁護士のトランスジェンダーといった奇妙な仲間たちと珍道中を繰り広げながら、血と音楽のルーツを求めて冒険の旅に出る……70年代にオーバードーズで死んだ伝説のロック歌手を巡る、抱腹絶倒、ワチャワチャでハチャメチャなドタバタ劇!
読んだ人: 28(にわ)
目に映らない愚か者
柳楽 馨
研究者であるための必要条件は、批評家であることの十分条件ではない。今日、批評は大学に対して微妙な距離を保ちにくくなっている。こうした「自由」な学問によって見え難くなる権力こそ、今日の「批評」の標的となる……『裏切り者へ愛をこめて:阿部和重論』で反響を呼んだ『インフィニット・ジェスト』翻訳者、柳楽馨による批評の批評。
読んだ人: 人格OverDrive 編集部
GONZO
杜 昌彦
姫川尊の噂をするとき、わたしたちが浮かべる表情は、決まって揶揄であり蔑みだった……頭のおかしい嘘つきおばさんが語る、ばかばかしくも切実なZ級BLアクション!(2021年作)
読んだ人: 人格OverDrive 編集部
透明な対象
ウラジーミル・ナボコフ
さえない文芸編集者ヒュー・パーソンは、スイスに住む大作家Rのもとを訪れるため列車に乗り込んだ。車内で同席した若く美しい女性アルマンドに心惹かれた彼は、やがて奇妙な恋路へと足を踏み入れていく。ナボコフ一流の仕掛けが二重三重に張り巡らされ、読者を迷宮へと誘い込む最後の未邦訳作品、待望の刊行。
読んだ人: 杜 昌彦
ベンドシニスター
ウラジーミル・ナボコフ
独裁的警察国家で、運命を弄ばれる主人公クルークと息子。やがて魔の手が息子を人質にとり…。ナボコフの品切書の中でもっともリクエストが多い、愛についての美しいファンタジー。
読んだ人: 杜 昌彦
裏切り者へ愛をこめて:阿部和重論
柳楽 馨
阿部和重に芥川賞をもたらした『グランド・フィナーレ』の宣伝文句を、私はよく覚えている。「文学が、ようやく阿部和重に追いついた」。しかし、「批評」が阿部に追いついていない。
読んだ人: 人格OverDrive 編集部
コロナの時代の愛
イシュマエル・ノヴォーク
「色んな人に会った。色んな経験も。変わったことは沢山あるように思うけれど、そうでもない気もする」……1950年代のサウス・ブロンクス、1960〜1990年代のエル・パソ、同時多発テロから数年後のイングルウッドとニューヨーク。さまざまな時代を舞台に、自由に、クスっと笑えるジョークをまじえて描く土地と血の物語。
読んだ人: 人格OverDrive 編集部
インディゴ
クレメンス・J・ゼッツ
オーストリア・シュタイアーマルク州北部に、ヘリアナウという全寮制の学校がある。インディゴ症候群を患う子供たちのための学園だ。この子供たちに接近するものはみな、吐き気、めまい、ひどい頭痛に襲われることになる。新米の数学教師クレメンス・ゼッツはこの学園で教鞭をとるうちに、奇妙な事象に気づく。独特の仮装をした子供たちが次々と、車でどこかに連れ去られていくのだ。ゼッツはこの謎を探りはじめるが、進展のないまますぐに解雇されてしまう。その15年後、新聞はセンセーショナルな刑事裁判を報じる。動物虐待者を残虐な方法で殺害した容疑で逮捕されていた元数学教師が、釈放されたというのだ。その新聞記事を目にした画家のロベルト・テッツェルはかつての教え子として、ゼッツが手を染めたかもしれない犯罪の真相を追いかけていく──軽快な語り口と不気味さが全篇を覆い、独特な仕掛けがさまざまな読みを可能にする。既存の小説の枠組みを破壊して新しい文学の創造を目指した、神童クレメンス・J・ゼッツの野心溢れる傑作長篇。
読んだ人: 杜 昌彦
スキャナー・ダークリー
フィリップ・K・ディック
カリフォルニアのオレンジ郡保安官事務所麻薬課のおとり捜査官フレッドことボブ・アークターは、上司にも自分の仮の姿は教えず、秘密捜査を進めている。麻薬中毒者アークターとして、最近流通しはじめた物質Dはもちろん、ヘロイン、コカインなどの麻薬にふけりつつ、ヤク中仲間ふたりと同居していたのだ。だが、ある日、上司から麻薬密売人アークターの監視を命じられてしまうが……
読んだ人: 杜 昌彦
青い脂
ウラジーミル・ソローキン
7体の文学クローンの身体に溜まる謎の物質「青脂」。スターリンとヒトラーがヨーロッパを二分する一九五四年のモスクワに、その物体が送りこまれる。巨頭たちによる大争奪戦の後、エロ・グロ・ナンセンスな造語に満ちた驚異の物語は、究極の大団円を迎える。20世紀末に誕生した世界文学の新たな金字塔!!
読んだ人: 杜 昌彦
ウィトゲンシュタインの愛人
デイヴィッド・マークソン
地上から人が消え、最後の一人として生き残ったケイト。彼女はアメリカのとある海辺の家で暮らしながら、終末世界での日常生活のこと、日々考えたとりとめのないこと、家族と暮らした過去のこと、生存者を探しながら放置された自動車を乗り継いで世界中の美術館を旅して訪ねたこと、ギリシアを訪ねて神話世界に思いを巡らせたことなどを、タイプライターで書き続ける。彼女はほぼずっと孤独だった。そして時々、道に伝言を残していた……。ジョイスやベケットの系譜に連なる革新的作家デイヴィッド・マークソンの代表作にして、読む人の心を動揺させ、唯一無二のきらめきを放つ、息をのむほど知的で美しい〈アメリカ実験小説の最高到達点〉。
読んだ人: 杜 昌彦
ブリーディング・エッジ
トマス・ピンチョン
2001年9月、ITバブル崩壊後のNY。非公認の会計調査師マクシーン・ターナウは、コンピュータセキュリティ会社の財政調査をはじめるなり陰謀に巻き込まれる。アールデコ調のモーターボートを操るヤクの売人、ヒトラーが使ったひげ剃り後ローションに執着する超人的嗅覚の持ち主、靴の趣味が悪いネオリベラリズムのゴリ押し屋、ロシア系マフィアにブロガー、ハッカー、下っ端プログラマーに実業家……そしてもちろん、殺人だ。ディープ・ウェブへ、ロングアイランドへ。内なるユダヤ系の母にチャンネルをあわせ、ピンチョンが読者を連れて行く先にあるものは。正義の鉄槌はさておいて、真犯人は明らかになるのか。マクシーンはハンドバッグから拳銃を抜くのか。夫とよりを戻すのか。貸し借りがゼロになり、運命は清算されるのか……なあ、そんなの誰が知りたがる?
読んだ人: 杜 昌彦
絶望
ウラジーミル・ナボコフ
ベルリン存在のビジネスマンのゲルマンは、プラハ出張の際、自分と“瓜二つ”の浮浪者を偶然発見する。そしてこの男を身代わりにした保険金殺人を企てるのだが…。“完全犯罪”を狙った主人公がみずからの行動を小説にまとめ上げるという形で書かれたナボコフ初期の傑作!
読んだ人: 杜 昌彦
JR
ウィリアム・ギャディス
11歳の少年JRが巨大コングロマリットを立ち上げて株式市場に参入、世界経済に大波乱を巻き起こす!? ミステリ作家・殊能将之も熱讃した、世界文学史上の超弩級最高傑作×爆笑必至の金融ブラックコメディがついに奇跡的邦訳!! 第27回全米図書賞受賞作。
読んだ人: 杜 昌彦
ぼっちの帝国
杜 昌彦
「正しさ」の押しつけは、もういらない。
コールセンター勤務の明日香はささいな揉めごとから28歳にして無職に。彼氏のはずの年下男にはほかに彼女がいて、アパートは取り壊され帰る場所もない。ひょんなことから昭和モダン建築アパートの住み込み管理人となった明日香だが……。笑いあり涙ありアクションあり、殺人事件からカーチェイスまで全部入り。生きづらさを抱えるすべてのひとに贈る、爆笑と鬱の恋愛エンターテインメント小説!(2019年作)
読んだ人: 一夜文庫
ルージン・ディフェンス 密偵
ウラジーミル・ナボコフ
至高のチェス小説、究極の視点人物。精緻で奇想的なナボコフ世界へ。自ら愛好するチェスへの情熱と構成美を詰め込み、不死鳥のように甦った偉大なロシア文学と賞賛された傑作長篇「ルージン・ディフェンス」。謎に満ちた視点の語りが驚きをもたらす、ハードボイルドな味わいの中篇「密偵」。1930年代、ナボコフ30代はじめに発表された革新的な傑作2篇を、初のロシア語原典訳で収録。
読んだ人: 杜 昌彦
淡い焰
ウラジーミル・ナボコフ
詩から註釈へ、註釈から詩へ、註釈から註釈へ……。幾重もの層を渡り歩きながら奇妙な物語世界へといざなう、『ロリータ』と並び称されるナボコフの英語小説の傑作! 架空の詩人による九九九行の詩、架空の編者が添えたまえがき、註釈、索引。
読んだ人: 杜 昌彦
巨匠とマルガリータ
ミハイル・ブルガーコフ
焼けつくほどの異常な太陽に照らされた春のモスクワに、悪魔ヴォランドの一味が降臨し、作家協会議長ベルリオーズは彼の予告通りに首を切断される。やがて、町のアパートに棲みついた悪魔の面々は、不可思議な力を発揮してモスクワ中を恐怖に陥れていく。黒魔術のショー、しゃべる猫、偽のルーブル紙幣、裸の魔女、悪魔の大舞踏会。4日間の混乱ののち、多くの痕跡は炎に呑みこまれ、そして灰の中から〈巨匠〉の物語が奇跡のように蘇る……。SF、ミステリ、コミック、演劇、さまざまなジャンルの魅力が混淆するシュールでリアルな大長編。ローリング・ストーンズ「悪魔を憐れむ歌」にインスピレーションを与え、20世紀最高のロシア語文学と評される究極の奇想小説、全面改訳決定版!
読んだ人: 杜 昌彦
文学会議
セサル・アイラ
奔放なウィットと想像力の炸裂する、アルゼンチン作家の衝撃作。小説家でマッド・サイエンティストの〈私〉は、文学会議に出席する文豪のクローンを作製しようと企む。しかし小さな手違いから大惨事が――。奇想天外な表題作のほか「マオとレーニン」というパンク少女たちと街角で出会った〈私〉がスーパーを襲撃するまでを描く「試練」を併録。世界的名声を誇る作家による、渾身の2篇。
読んだ人: 杜 昌彦
メイスン&ディクスン
トマス・ピンチョン
世は植民地時代。領地紛争解決のため、天文学者チャールズ・メイスンと測量士にしてアマチュア天文学者のジェレマイア・ディクスンは大地に境界を引くべく新大陸に派遣される。後世にその名を残す境界線、すなわち、のちにアメリカを南部と北部に分けることとなるメイスン‐ディクスン線を引くために―。アメリカの誕生を告げる測量道中膝栗毛の始まり始まり。驚愕と茫然が織りなす、飛躍に満ちた文学の冒険。ノーベル文学賞候補常連の世界的作家の新たな代表作が、名翻訳家の手によりついに邦訳。
読んだ人: 杜 昌彦
地下鉄道
コルソン・ホワイトヘッド
アメリカ南部の農園で、苦しい生活を送る奴隷の少女コーラ。あるとき、仲間の少年に誘われて、意を決して逃亡を試みる。地下をひそかに走る鉄道に乗り、ひとに助けられ、また裏切られながら、自由が待つという北をめざす――。各賞を総なめにした世界的ベストセラー、ついに刊行!
読んだ人: 杜 昌彦
隣接界
クリストファー・プリースト
近未来英国、フリーカメラマンのティボー・タラントは、トルコで反政府ゲリラの襲撃に遭い、最愛の妻を失ってしまう。本国に送還されるタラントだが、それから彼の世界は次第に歪み始めていく……。現実と虚構のあわいを巧みに描きとる、著者の集大成的物語。
読んだ人: 杜 昌彦
アーダ
ウラジーミル・ナボコフ
美しい11歳の従姉妹アーダに出会ってまもなく、14歳のヴァンは彼女の虜となった。青白い肌の博学なアーダと知的なヴァン。一族の田舎屋敷で、愛欲まみれの恋を繰り広げる二人はしかし、ある事情により引き裂かれる。著者の想像力と言語遊戯が結実する傑作長篇!
読んだ人: 杜 昌彦
2666
ロベルト・ボラーニョ
謎の作家アルチンボルディを研究する四人の文学教授、メキシコ北部の国境の街に暮らすチリ人哲学教授、ボクシングの試合を取材するアフリカ系アメリカ人記者、女性連続殺人事件を追う捜査官たち……彼らが行き着く先は? そしてアルチンボルディの正体とは? 2008年度全米批評家協会賞受賞。
読んだ人: 杜 昌彦
マーティン・ドレスラーの夢
スティーヴン・ミルハウザー
20世紀初頭のニューヨーク。葉巻商の息子マーティン・ドレスラーは、九歳で早くも商才を発揮し父親の店を手伝い始めたのがきっかけで、近くのホテルで雇われる。持ち前の勤勉さと頭の回転の速さで、ベルボーイから始めて順調に昇進を重ねた彼は、ついに自らホテル経営に乗り出す。彼が夢見るホテルとは、それ自体がひとつの街を内包したような巨大ホテルだった。一見アメリカン・ドリームの主人公のようでいて、実は独自の世界へ突き進んでしまう芸術家肌の実業家。実用の世界を超えて凝りに凝った仕掛けのホテル。ピュリッツァー賞を受賞した、ミルハウザー・ワールド炸裂の傑作長編。
読んだ人: 杜 昌彦
囚人のジレンマ
リチャード・パワーズ
戦争は、終わらない。父エディの謎を追って、ホブソン一家は最大のパラドクスに直面する ― 前作『舞踏会へ向かう三人の農夫』と同様に三つの物語が錯綜しながら展開する。果たして最後に、物語のパズルのピースは納まるのか!? 2006年に最新作 The Echo Maker で全米図書賞を受賞し、いまや現代アメリカ文学を代表する作家リチャード・パワーズの感動の第二長編。待望の翻訳!
読んだ人: 杜 昌彦
孤独の要塞
ジョナサン・レセム
ブルックリンに住む二人の少年ディランとミンガスは、同じストリートに住み、一緒に育った親友だ。しかし、ディランは白人、ミンガスは黒人。アメリカン・コミックや音楽への情熱で結びついていても、その友情には多くの試練が待ち受けていた。ある時、偶然にも空飛ぶ指輪を手に入れたディランは、ヒーロー「エアロマン」に変身して、ミンガスとともに街を守ろうと試みるが、それは二人の関係の転機となる―。ファンク、パンク、ヒップホップ、そしてグラフィティにドラッグ。全米批評家協会賞受賞作家が四年間の沈黙の末に発表した、70年代ニューヨークの息づかいが聞こえる傑作長篇。
読んだ人: 杜 昌彦
奇術師
クリストファー・プリースト
北イングランドに赴いたジャーナリストのアンドルーは、彼を呼び寄せた女性ケイトから思いがけない話を聞かされる。おたがいの祖先は、それぞれに“瞬間移動”を得意演目としていた、二十世紀初頭の天才奇術師。そして、生涯ライバル関係にあった二人の確執は子孫のアンドルーにまで影響を与えているというのだが……!? 二人の奇術師がのこした手記によって、衝撃の事実が明らかとなる!世界幻想文学大賞受賞の幻想巨篇
読んだ人: 杜 昌彦
ホーカス・ポーカス
カート・ヴォネガット
二〇〇一年、アメリカはまたも破産に瀕し、企業の大半が外国に買収された。ベトナム戦争中にばかげたスピーチ、ホーカス・ポーカスで新兵を鼓舞していたハートキは、帰国後、勤めていた大学を首になり、日本人が経営する刑務所の教師になる。だが、そこで大脱獄事件が発生した……ハートキがたどる波瀾の人生。
読んだ人: 杜 昌彦
イリワッカー
ピーター・ケアリー
「イリワッカー」とはオーストラリア口語で「プロのペテン師」のことを指す。当年139歳のおそろしく元気なペテン師が語る滑稽にして感動的なホラ話の中に、親子三代の確執とあの大陸の歴史が浮かび上がる。いま最も生きのいいブッカー賞作家による現代小説の壮大なる傑作、ついに邦訳なる!
読んだ人: 杜 昌彦
Xのアーチ
スティーヴ・エリクソン
フランス革命直前のパリ。アメリカ独立宣言起草者として名高いトマス・ジェファソンは、自らの美しき女奴隷で愛人のサリーを連れて帰国しようとする。トマスとともにアメリカに帰り、再び彼の奴隷になるか、パリに残って自由人の黒人でい続けるか。サリーの決断により、愛と快楽、自由と隷属をめぐる、時空を超えた目くるめく物語が幕を開ける…現代アメリカ文学最重要作家の超弩級の傑作!
読んだ人: 杜 昌彦
黒い時計の旅
スティーヴ・エリクソン
仮に第二次大戦でドイツが敗けず、ヒトラーがまだ死んでいなかったら…。ヒトラーの私設ポルノグラファーになった男を物語の中心に据え、現実の二十世紀と幻のそれとの複雑なからみ合いを瞠目すべき幻視力で描き出した傑作。
読んだ人: 杜 昌彦
ヴァリス
フィリップ・K・ディック
友人グロリアの自殺をきっかけにして、作家ホースラヴァー・ファットの日常は狂い始める。麻薬におぼれ、孤独に落ち込むファットは、ピンク色の光線を脳内に照射され、ある重要な情報を知った。それを神の啓示と捉えた彼は、日誌に記録し友人らと神学談義に耽るようになる。さらに自らの妄想と一致する謎めいた映画『ヴァリス』に出会ったファットは……。ディック自身の神秘体験をもとに書かれた最大の問題作。
読んだ人: 杜 昌彦
血と言葉 逆さの月 崖っぷちマロの冒険
杜 昌彦
『血と言葉』(『悪魔とドライヴ』改題)
県警本部長の娘、海堂ちありは援助交際の男に連れられて訪れた店で、カウンターに立つ国語教師、辻凰馬に激しく惹かれる。ちありの小説は波紋を呼び……。異色の恋愛小説!(2016年)
『逆さの月』
あたし渡辺聡美、17歳。悪友たちのおかげで今日も二日酔い。携帯電話がまだふたつ折りだった頃。ツインタワーが倒壊する少し前。あたしと幸田と春ちゃんはだれとも違うあたしたちだけの時間を生きていた……。恋を恋と認めない語り手による青春サスペンス。(2001年)
『崖っぷちマロの冒険』
僕は世界の忘れられた子。照らし出しては殲滅する——放課後に呼び出された11歳の僕が見たものは、中指を立てて木に縛りつけられたお嬢の屍体だった! 自伝的習作。(2002年)
別名義でベストセラーとなった代表作『血と言葉』に初期中篇二作を併録。
読んだ人: 28(にわ)
Pの刺激 黒い渦
杜 昌彦
『Pの刺激』
呪われた言葉が世界を染める。アヴァンポップな黙示録!
州辻郁夫、24歳。カルト集団自殺事件の生き残り。街は謎の断片群「PCz」に覆われていた。噂では13年前に失踪した無頼派、羅門生之助が作者だという。その孫の家出少女に振りまわされ、渦中へ巻きこまれる郁夫。大量の断片群に刻まれた魔術的想像力は、やがて現実を侵食しはじめ……。硬質な文体で描くダークファンタジー!(2005年)
『黒い渦』
あの渦からは逃れられない。愛と暴力の悪夢世界! 騒乱の夜から十年。かつて天才原型師と呼ばれた宍神は、企業の不祥事を隠蔽する「揉み消し屋」として日銭を稼いでいた。謎の女を救った夜から、黒い幻覚剤を巡る因縁に巻き込まれる。親しい人を「人形」に次々に殺され、過去と対峙した彼が見たものとは? 詩的な暴力描写、予想を裏切るめまぐるしい展開。ウルトラ・ヴァイオレンスな近未来ノワール!(1999年、2006年改稿)
読んだ人: 人格OverDrive 編集部