特集: 法螺話
CLOUD 9
杜 昌彦
AIがひとびとの行動を操り戦争へと駆り立てる未来。過去の遺伝情報から再現された逃亡兵のMはひょんなことから1960年のハンブルグへ。のちに音楽で世界を救うことになる不良少年たちに出逢う。敵に捕らえられたMは命と引き換えにかれらの解散を防ぐ使命を与えられる。世界滅亡を望む勢力からMはかれらを守り通すことができるのか——? だれもが一度は夢想しながら書かれることのなかったSFエスピオナージュ!
読んだ人: 杜 昌彦
吉里吉里人
井上ひさし
医学立国、農業立国、好色立国を掲げ、東北の一寒村が突如日本から分離独立した! SF、パロディ、ブラックユーモア、コミック仕立て、小説のあらゆる面白さ、言葉の魅力を満載した記念碑的巨編。
ある六月上旬の早朝、上野発青森行急行「十和田3号」を一ノ関近くの赤壁で緊急停車させた男たちがいた。「あんだ旅券ば持って居だが」。実にこの日午前六時、東北の一寒村吉里吉里国は突如日本からの分離独立を宣言したのだった。政治に、経済に、農業に医学に言語に……大国日本のかかえる問題を鮮やかに撃つ、おかしくも感動的な新国家。日本SF大賞、読売文学賞受賞作。
読んだ人: 杜 昌彦
V.
トマス・ピンチョン
闇の世界史の随所に現れる謎の女、V.。その謎に取り憑かれた“探求者”ハーバート・ステンシルと、そこらはどうでもよい“木偶の坊”ベニー・プロフェインの二人は出会い、やがて運命の地へと吸い寄せられる…。V.とは誰か?いや、V.とはいったい何なのか?謎がさらなる謎を呼ぶ。手がかり多数、解釈無数、読むものすべてが暗号解読へと駆り立てられる―。天才の登場を告げた記念碑的名作、ついに新訳成る。
読んだ人: 杜 昌彦
インフィニット・ジェスト
デヴィッド・フォスター・ウォレス
過去に夢見られた未来。中毒者更生施設エネットハウスの住民と、その近所のエンフィールドテニスアカデミーの学生は、視聴者を耽溺させ発狂に至らしめる映画『インフィニット・ジェスト』、及びそれを生み出した家庭の歴史を巡る謀略に巻き込まれる……世界的ベストセラー、本邦初訳成る!
読んだ人: 杜 昌彦
☆
イシュマエル・ノヴォーク
『コロナの時代の愛』の鬼才、イシュマエル・ノヴォーク待望の最新長編!
ウォルマートのレジ係、マーガレット・ホットフィールドは一ヶ月前に母を亡くして天涯孤独。ある昼下がり、アパートを訪れた弁護士に、逢ったこともない父の存在を告げられた。1971年にパリのアパートで客死した伝説のロックバンド〈パーセプション〉の歌手、ダグラス・ハイドパークの血をマーガレットが受け継いでいるというのだ。運命に導かれるがごとく契約書に署名した彼女は、ヌンチャクを手にしたトンボ眼鏡のアフロファンキーDJ、全裸で空から降ってきたプレスリーのそっくりさん、写真家にして弁護士のトランスジェンダーといった奇妙な仲間たちと珍道中を繰り広げながら、血と音楽のルーツを求めて冒険の旅に出る……70年代にオーバードーズで死んだ伝説のロック歌手を巡る、抱腹絶倒、ワチャワチャでハチャメチャなドタバタ劇!
読んだ人: 28(にわ)
11/22/63
スティーヴン・キング
小さな町の食堂、その倉庫の奥の「穴」。その先にあるのは50年以上も過去の世界、1958年9月19日。このタイムトンネルをつかえば、1963年11月22日に起きた「あの悲劇」を止められるかもしれない…ケネディ暗殺を阻止するためぼくは過去への旅に出る。世界最高のストーリーテラーが新たに放った最高傑作。
読んだ人: 杜 昌彦
重力の虹
トマス・ピンチョン
世界文学史上に空前の伝説を刻んだ33万語、100万字超の巨篇――新訳成る! 耳をつんざく叫びとともに、V2ロケット爆弾が空を切り裂き飛んでくる。ロンドン、一九四四年。情報局から調査の命を受けたスロースロップ中尉は――。 ピューリッツァー賞が「卑猥」「通読不能」と審査を拒否した超危険作にして、今なお現代文学の最先端に屹立する金字塔がついに新訳。
読んだ人: 杜 昌彦
GONZO
杜 昌彦
姫川尊の噂をするとき、わたしたちが浮かべる表情は、決まって揶揄であり蔑みだった……頭のおかしい嘘つきおばさんが語る、ばかばかしくも切実なZ級BLアクション!(2021年作)
読んだ人: 人格OverDrive 編集部
エブリシング・イズ・イルミネイテッド
ジョナサン・サフラン・フォア
ジョナサン・サフラン・フォア最新作『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』発売にあわせて デビュー作を電子化!
著者20代半ばでのデビュー作にして、全米60万部の大ベストセラー。自らのルーツと、祖父をホロコーストから救ってくれた女性を探しにウクライナの片田舎へ向かう青年と、ウクライナ人通訳との奇妙な珍道中と明らかになる家族の秘密。時代も国境も超えて絡まり合うヴォイス──衝撃のデビュー作。
読んだ人: 杜 昌彦
青い脂
ウラジーミル・ソローキン
7体の文学クローンの身体に溜まる謎の物質「青脂」。スターリンとヒトラーがヨーロッパを二分する一九五四年のモスクワに、その物体が送りこまれる。巨頭たちによる大争奪戦の後、エロ・グロ・ナンセンスな造語に満ちた驚異の物語は、究極の大団円を迎える。20世紀末に誕生した世界文学の新たな金字塔!!
読んだ人: 杜 昌彦
雲
エリック・マコーマック
出張先のメキシコで、突然の雨を逃れて入った古書店。そこで見つけた一冊の書物には19世紀に、スコットランドのある町で起きた黒曜石雲という謎の雲にまつわる奇怪な出来事が書かれていた。驚いたことに、かつて、若かった私はその町を訪れたことがあり、そこで出会ったある女性との愛と、その後の彼女の裏切りが、重く苦しい記憶となっていたのだった。書物を読み、自らの魂の奥底に辿り着き、自らの亡霊にめぐり会う。ひとは他者にとって、自分自身にとって、いかに謎に満ちた存在であることか…。幻想小説、ミステリ、そしてゴシック小説の魅力を併せ持つ、マコーマック・ワールドの集大成とも言うべき一冊。
読んだ人: 杜 昌彦
JR
ウィリアム・ギャディス
11歳の少年JRが巨大コングロマリットを立ち上げて株式市場に参入、世界経済に大波乱を巻き起こす!? ミステリ作家・殊能将之も熱讃した、世界文学史上の超弩級最高傑作×爆笑必至の金融ブラックコメディがついに奇跡的邦訳!! 第27回全米図書賞受賞作。
読んだ人: 杜 昌彦
どこに転がっていくの、林檎ちゃん
レオ・ペルッツ
元オーストリア陸軍少尉ヴィトーリンは、大戦中に捕虜収容所の司令官セリュコフに受けた屈辱が忘れられず、復讐のためロシアへと舞い戻った。革命後の混乱のなか、姿を消した仇敵を探して旅を続けるヴィトーリン。ロシアとヨーロッパを股にかけた壮大な追跡行の果てに彼を待っていたものとは…。冒険に次ぐ冒険、若き日のイアン・フレミングが「天才的」作品と絶賛した、レオ・ペルッツの傑作。
読んだ人: 杜 昌彦
ドーキー古文書
フラン・オブライエン
遁走する言の葉たちの狂想的喜劇! 海辺の町ドーキーでミック・ショーネシィが知りあった科学者にして神学者ド・セルビィは、厭世が昂じて世界破壊計画を企て、大気中の酸素を除去する物質D・M・Pを研究開発していた。嘘か真か、それによって時間を停止させることにも成功したという。一方、ミックは行きつけの酒場で「ジェイムズ・ジョイスが死んだという報道は眉唾物だ」と聞かされる。ダブリン郊外で名前を隠して居酒屋の給仕になっていたジョイスを探し出したミックは、彼をド・セルヴィに会わせようと画策するが……。世界破壊、時間の停止、彼岸との交信、生きていた(?)ジョイスといった奇想に加えて、オブライエン作品ではお馴染みの奇人たちが登場、ほら話とも真面目な議論ともつかぬ会話がくりひろげられる。世界中で愛されたアイルランド文学の異才フラン・オブライエン最後の傑作。
読んだ人: 杜 昌彦
淡い焰
ウラジーミル・ナボコフ
詩から註釈へ、註釈から詩へ、註釈から註釈へ……。幾重もの層を渡り歩きながら奇妙な物語世界へといざなう、『ロリータ』と並び称されるナボコフの英語小説の傑作! 架空の詩人による九九九行の詩、架空の編者が添えたまえがき、註釈、索引。
読んだ人: 杜 昌彦
巨匠とマルガリータ
ミハイル・ブルガーコフ
焼けつくほどの異常な太陽に照らされた春のモスクワに、悪魔ヴォランドの一味が降臨し、作家協会議長ベルリオーズは彼の予告通りに首を切断される。やがて、町のアパートに棲みついた悪魔の面々は、不可思議な力を発揮してモスクワ中を恐怖に陥れていく。黒魔術のショー、しゃべる猫、偽のルーブル紙幣、裸の魔女、悪魔の大舞踏会。4日間の混乱ののち、多くの痕跡は炎に呑みこまれ、そして灰の中から〈巨匠〉の物語が奇跡のように蘇る……。SF、ミステリ、コミック、演劇、さまざまなジャンルの魅力が混淆するシュールでリアルな大長編。ローリング・ストーンズ「悪魔を憐れむ歌」にインスピレーションを与え、20世紀最高のロシア語文学と評される究極の奇想小説、全面改訳決定版!
読んだ人: 杜 昌彦
驚異の発明家(エンヂニア)の形見函
アレン・カーズワイル
骨董の”函”が語る自動人形発明家=フランス版平賀源内の数奇な運命! 1983年、パリの骨董品オークションで手に入れた、がらくたの詰まった函。それは産業革命以前のフランスで、自動人形の開発に心血をそそいだ天才発明家の「形見函」だった。10の仕切りのなかには、それぞれ、広口壜、鸚鵡貝、編笠茸、木偶人形、金言、胸赤鶸、時計、鈴、釦、そして最後のひとつは空のまま。フランス革命前夜、のちに発明家となる少年クロード・パージュの指が、ジュネーヴの外科医によって“故意”に切り落とされる事件が起こる。ここに端を発する彼の波瀾万丈の生涯について、函におさめられた10の想い出の品は、黙したまま雄弁と語りはじめるのだ――。18世紀という好奇心にみちた時代を鮮やかに再現し、世界の批評家たちを唸らせた驚異のデビュー作!
読んだ人: 杜 昌彦
ガルヴェイアスの犬
ホセ・ルイス・ペイショット
ある日、ポルトガルの小さな村に、巨大な物体が落ちてきた。異様な匂いを放つその物体のことを、人々はやがて忘れてしまったが、犬たちだけは覚えていた――。村人たちの無数の物語が織り成す、にぎやかで風変わりな黙示録。デビュー長篇でサラマーゴ賞を受賞し「恐るべき新人」と絶賛された作家の代表作。オセアノス賞受賞。
読んだ人: 杜 昌彦
踊る黄金像
ドナルド・E・ウェストレイク
南米から密輸されてきた百万ドルの黄金像がちょっとした手違いから十五体の模造品にまぎれこみ、ニューヨーク中にばらまかれてしまった。一獲千金をめざす悪党たちが次から次へと登場し、一大争奪戦が始まるが――マルクス兄弟のパワーを凌ぐ究極のスラップスティック大作。
読んだ人: 杜 昌彦
うたかたの日々
ボリス・ヴィアン
純粋無垢、夢多き青年コランが出会った少女クロエは、肺の中に睡蓮が生長する奇病にかかっていた――パリの片隅で儚い青春の日々を送る若者たちの姿を、優しさと諧謔に満ちた笑いで描く、現代で最も悲痛な恋愛小説。39年の短い生涯を駆け抜け、様々なジャンルで活躍した天才ヴィアンの代表作。
読んだ人: 杜 昌彦
数学的にありえない
アダム・ファウアー
破滅寸前の天才数学者ケイン。彼を悩ませる謎の神経失調には大きな秘密があった。それは、世界を根底から揺るがす「能力」の萌芽だったのだ。それを狙い、政府の秘密機関“科学技術研究所”が動き出し、その権力を駆使してケインを追いはじめた。なぜ彼らはケインを追うのか?彼らが狙うケインの「能力」とは何なのか?そして科学者トヴァスキーが進める「研究」の目的とは?執拗な追手から逃れつつ、ケインはその謎に迫ってゆく。いくつもの物語が謎をはらんで一斉に疾走、ここに前代未聞のアイデアを仕込んだジェットコースター・サスペンスが幕を開ける。第1回世界スリラー作家クラブ新人賞受賞作。
読んだ人: 杜 昌彦
パターン・レコグニション
ウィリアム・ギブスン
ケイスは新製品の売れ行きを直感的に判断できる「クールハンター」。ファッション業界を中心とした企業から相談を受け、そのジャッジにより生計をたてている。彼女の興味の中心は“フッテージ”。“フッテージ”はネット上にランダムに流されている断片的な映像で、ストーリーもないが、抜群の完成度を誇る。クライアントからロンドンでの仕事を得たケイスは友人のフラットに居をかまえる。最終的なタスクは“フッテージ”の正体を探ること。広告界の新しい分野を切り開きたいというのが目的だ。半強制的に探索に協力することになったケイスは、タキという日本人が“フッテージ”の正体の一部を解読したという情報を仕入れ、日本へと旅立った…。サイバーパンクの王者ギブスンが、現実世界を舞台に描いたスピード感あふれる極上のハイブリッド・エンタテインメント。
読んだ人: 杜 昌彦
アーダ
ウラジーミル・ナボコフ
美しい11歳の従姉妹アーダに出会ってまもなく、14歳のヴァンは彼女の虜となった。青白い肌の博学なアーダと知的なヴァン。一族の田舎屋敷で、愛欲まみれの恋を繰り広げる二人はしかし、ある事情により引き裂かれる。著者の想像力と言語遊戯が結実する傑作長篇!
読んだ人: 杜 昌彦
わたしを離さないで
カズオ・イシグロ
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムの親友トミーやルースも「提供者」だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。
読んだ人: 杜 昌彦
マーティン・ドレスラーの夢
スティーヴン・ミルハウザー
20世紀初頭のニューヨーク。葉巻商の息子マーティン・ドレスラーは、九歳で早くも商才を発揮し父親の店を手伝い始めたのがきっかけで、近くのホテルで雇われる。持ち前の勤勉さと頭の回転の速さで、ベルボーイから始めて順調に昇進を重ねた彼は、ついに自らホテル経営に乗り出す。彼が夢見るホテルとは、それ自体がひとつの街を内包したような巨大ホテルだった。一見アメリカン・ドリームの主人公のようでいて、実は独自の世界へ突き進んでしまう芸術家肌の実業家。実用の世界を超えて凝りに凝った仕掛けのホテル。ピュリッツァー賞を受賞した、ミルハウザー・ワールド炸裂の傑作長編。
読んだ人: 杜 昌彦
フェルマータ
ニコルソン・ベイカー
Hで愉快な電話小説『もしもし』と、極微的身の回り品考察小説『中二階』で読者の腹をよじらせた著者が、今度はどんな手で面白がらせてくれるのかと思えば、なんとこれが、時間を止めて女性の服を脱がせる特技をもつ男の自伝(!?)である。もちろんあの桁外れの想像力と微細な描写も健在。
読んだ人: 杜 昌彦
孤独の要塞
ジョナサン・レセム
ブルックリンに住む二人の少年ディランとミンガスは、同じストリートに住み、一緒に育った親友だ。しかし、ディランは白人、ミンガスは黒人。アメリカン・コミックや音楽への情熱で結びついていても、その友情には多くの試練が待ち受けていた。ある時、偶然にも空飛ぶ指輪を手に入れたディランは、ヒーロー「エアロマン」に変身して、ミンガスとともに街を守ろうと試みるが、それは二人の関係の転機となる―。ファンク、パンク、ヒップホップ、そしてグラフィティにドラッグ。全米批評家協会賞受賞作家が四年間の沈黙の末に発表した、70年代ニューヨークの息づかいが聞こえる傑作長篇。
読んだ人: 杜 昌彦
みんな行ってしまう
マイケル・マーシャル・スミス
『スペアーズ』の鬼才が贈る、哀感と郷愁に満ちたSFホラー集。小品ながら忘れがたい味わいを残す表題作、奇跡の医療用ナノテクがもたらした人類の意外な終末「地獄はみずから大きくなった」、田舎町に暮らす不思議な絵描きを巻き込んだ事件を描いた英国幻想文学大賞受賞作「猫を描いた男」、巨大テーマパーク兼養老院での奇怪な冒険劇「ワンダー・ワールドの驚異」など12編。
読んだ人: 杜 昌彦
スペアーズ
マイケル・マーシャル・スミス
悪夢はここからはじまる…。フィリップ・K・ディック賞受賞作家による傑作近未来ミステリー
妻と子をむごたらしく殺されたときから、ジャック・ランドールの人生は坂を転がり落ちるように悪くなるばかりだった。勤めていた警察も辞め、自堕落な生活を送っていた彼が最後に行き着いた先、そこは“スペア”たちを飼育する「農場」と呼ばれる場所だった。自分より過酷な運命を背負うスペアたちに愕然とするジャック。しかしそこには、彼のハードでクールな魂をふたたび呼び覚ます者たちがいた! 近未来の壮絶な世界を、圧倒的な筆力で描いたノワール・スリラー。
読んだ人: 杜 昌彦
オンリー・フォワード
マイケル・マーシャル・スミス
スタークは、未来都市のトラブルシューター。彼だけが、ある特殊な能力を備えていた。あるとき彼は、誘拐された重要人物を探し出すよう依頼される。しかし、事件は単なる捜索だけでは終わらず、スタークは次々と新たなトラブルに巻き込まれていく。だが、スタークにもうあと戻りは許されない。オンリー・フォワード―すべてを終結させるために、ただ前進するしかないのだ。2001年フィリップ・K・ディック賞受賞作。
読んだ人: 杜 昌彦
魔法
クリストファー・プリースト
爆弾テロに巻きこまれ、記憶を失った報道カメラマンのグレイ。彼のもとへ、かつての恋人を名乗るスーザンが訪ねてきた。彼女との再会をきっかけに、グレイは徐々に記憶を取り戻したかに思われたのだが…南仏とイギリスを舞台に展開するラブ・ストーリーは、穏やかな幕開けから一転、読者の眼前にめくるめく驚愕の異世界を現出させる!奇才プリーストが語り(=騙り)の技巧を遺憾なく発揮して描いた珠玉の幻想小説。
読んだ人: 杜 昌彦
ドリーム・マシン
クリストファー・プリースト
それは未来予測のための画期的な計画だった。神経催眠装置につながった39人の男女の無意識が、平和で牧歌的な150年未来の町を創りあげ、この想像の世界で現実同然に生活するのである。彼らは理想的な未来社会のデータを記憶にとどめ、やがて現実世界に帰還するのだ。だが一人の男がこの夢の世界にとどまったとき、計画の歯車が狂いはじめた! 現代英国SFの鬼才が放つ傑作。
読んだ人: 杜 昌彦
ホーカス・ポーカス
カート・ヴォネガット
二〇〇一年、アメリカはまたも破産に瀕し、企業の大半が外国に買収された。ベトナム戦争中にばかげたスピーチ、ホーカス・ポーカスで新兵を鼓舞していたハートキは、帰国後、勤めていた大学を首になり、日本人が経営する刑務所の教師になる。だが、そこで大脱獄事件が発生した……ハートキがたどる波瀾の人生。
読んだ人: 杜 昌彦
スラップスティック
カート・ヴォネガット
ある日突然どういうわけか地球の重力が強くなり、そこへまた緑死病なる奇病まで発生して世界は無秩序、大混乱! アメリカ合衆国もいまや群雄割拠、ミシガン国王やオクラホマ公爵が勝手放題をしている始末。ジャングルと化したマンハッタンの廃墟では、史上最後の合衆国大統領が手記を書きつづる--愚かしくもけなげな人間たちが演ずるドタバタ喜劇、スラップスティックの顛末を……涙と笑いとハイホーに満ちた傑作長篇
読んだ人: 杜 昌彦
タイタンの妖女
カート・ヴォネガット
時空を超えたあらゆる時と場所に波動現象として存在する、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードは、神のような力を使って、さまざまな計画を実行し、人類を導いていた。その計画で操られる最大の受難者が、全米一の大富豪マラカイ・コンスタントだった。富も記憶も奪われ、地球から火星、水星へと太陽系を流浪させられるコンスタントの行く末と、人類の究極の運命とは? 巨匠がシニカルかつユーモラスに描いた感動作。
読んだ人: 杜 昌彦
イリワッカー
ピーター・ケアリー
「イリワッカー」とはオーストラリア口語で「プロのペテン師」のことを指す。当年139歳のおそろしく元気なペテン師が語る滑稽にして感動的なホラ話の中に、親子三代の確執とあの大陸の歴史が浮かび上がる。いま最も生きのいいブッカー賞作家による現代小説の壮大なる傑作、ついに邦訳なる!
読んだ人: 杜 昌彦
ミスター・ヴァーティゴ
ポール・オースター
「私と一緒に来たら、空を飛べるようにしてやるぞ」ペテン師なのか? 超人なのか? そう語る「師匠」に出会ったとき少年はまだ9歳だった。両親なし、教養なし、素行悪し。超然とした師匠の、一風変わった「家族」と暮らす奇妙な修行生活のなかで、少年がやがて手にしたものとは――。アメリカ文学界きっての語りの名手が編む、胸躍る歓喜と痛切なる喪失のタペストリ、心に迫る現代の寓話。
読んだ人: 杜 昌彦
第四の手
ジョン・アーヴィング
TVジャーナリスト、パトリックは、インドでサーカスの取材中、ライオンに左手を喰いちぎられる。以来、なんども夢に現われる、深緑の湖と謎の女―。やがて事故死した男の手が移植されることになるが、手術を目前に「手」の未亡人に子作りを迫られ、月満ちて男の子が誕生する…。稀代の女ったらしが真実の愛に目覚めるまでのいただけない行状と葛藤を描く、巨匠による最新長篇。
読んだ人: 杜 昌彦
逆光
トマス・ピンチョン
フロンティア消滅直後の19世紀末アメリカ。飛び立つは謎の飛行船“不都号”。文学史にそびえる金字塔『重力の虹』を嗣ぐ著者最大最長の長篇、空想科学冒険少年スパイ超能力探偵SM陰謀ミステリ歴史。
読んだ人: 杜 昌彦
スロー・ラーナー
トマス・ピンチョン
華氏37度で変わらぬ外気、階下では終わらぬパーティ。温室のような部屋でひそやかに暮らす男と女は終末の予感のなかで―鮮烈な結末と強靱な知性がアメリカ文学界に衝撃を与えた名篇「エントロピー」。“革命”を夢見る少年たちの秋を描く、詩情溢れる「シークレット・インテグレーション」、年間最優秀短篇として『O・ヘンリー賞作品集』に収録され、デビュー長篇『V.』の一章へと発展してゆくスパイ小説「アンダー・ザ・ローズ」など、眩いほどの才能に満ちた全五篇、著者唯一の短篇集を新訳。ダメキャラに熱力学、ゴミに機械に帝国主義、スパイ、神話、ポップ・カルチャー…。のちのピンチョン作品の萌芽を見るもよし、一篇たりとも読み逃せない作品群に加え、作家本人による仰天のこき下ろし自作解説、訳者による目から鱗の解説・訳註を収録。
読んだ人: 杜 昌彦
真夜中に海がやってきた
スティーヴ・エリクソン
北カリフォルニアでのカルト教団の集団自殺から逃れたクリスティンが、風俗店ひしめく歌舞伎町のホテル・リュウで行なう「メモリー嬢」という仕事とは?地下鉄サリン事件や、ロックスターの暗殺などカオス的な事件の日付から成る「アポカリプスのカレンダー」。その作成にとり憑かれた「居住者」の過去とは?現代アメリカ文学の鬼才が放つ最新作。
読んだ人: 杜 昌彦
ルビコン・ビーチ
スティーヴ・エリクソン
幻覚的描写が次々に繰り広げられる圧倒的に魅力的な小説。空間のよじれの向こうに、もう一つの“アメリカ”が立ち現れる。第一部は仮釈放されて図書館で働くケール、第二部は南米のジャングルで生まれ育ったキャサリン、第三部は「もうひとつの数」の発見から物語は始まる。そしてどことも知れない場所へ。T.ピンチョン絶賛の著者の、代表作!
読んだ人: 杜 昌彦
黒い時計の旅
スティーヴ・エリクソン
仮に第二次大戦でドイツが敗けず、ヒトラーがまだ死んでいなかったら…。ヒトラーの私設ポルノグラファーになった男を物語の中心に据え、現実の二十世紀と幻のそれとの複雑なからみ合いを瞠目すべき幻視力で描き出した傑作。
読んだ人: 杜 昌彦
百年の孤独
ガブリエル・ガルシア=マルケス
蜃気楼の村マコンド。その草創、隆盛、衰退、ついには廃墟と化すまでのめくるめく百年を通じて、村の開拓者一族ブエンディア家の、一人からまた一人へと受け継がれる運命にあった底なしの孤独は、絶望と野望、苦悶と悦楽、現実と幻想、死と生、すなわち人間であることの葛藤をことごとく呑み尽しながら…。20世紀が生んだ、物語の豊潤な奇蹟。
読んだ人: 杜 昌彦
ビビビ・ビ・バップ
奥泉光
「僕の葬式でピアノを弾いて頂きたいんです」それがすべての始まりだった。電脳内で生き続ける命、アンドロイドとの白熱のジャズセッション。大山康晴十五世名人アンドロイドの謎、天才工学少女、迫り来る電脳ウィルス大感染…。平成の新宿から近未来の南アフリカまで、AI社会を活写し、時空を超えて軽やかに奏でられるエンタテインメント近未来小説!
読んだ人: 杜 昌彦
Pの刺激 黒い渦
杜 昌彦
『Pの刺激』
呪われた言葉が世界を染める。アヴァンポップな黙示録!
州辻郁夫、24歳。カルト集団自殺事件の生き残り。街は謎の断片群「PCz」に覆われていた。噂では13年前に失踪した無頼派、羅門生之助が作者だという。その孫の家出少女に振りまわされ、渦中へ巻きこまれる郁夫。大量の断片群に刻まれた魔術的想像力は、やがて現実を侵食しはじめ……。硬質な文体で描くダークファンタジー!(2005年)
『黒い渦』
あの渦からは逃れられない。愛と暴力の悪夢世界! 騒乱の夜から十年。かつて天才原型師と呼ばれた宍神は、企業の不祥事を隠蔽する「揉み消し屋」として日銭を稼いでいた。謎の女を救った夜から、黒い幻覚剤を巡る因縁に巻き込まれる。親しい人を「人形」に次々に殺され、過去と対峙した彼が見たものとは? 詩的な暴力描写、予想を裏切るめまぐるしい展開。ウルトラ・ヴァイオレンスな近未来ノワール!(1999年、2006年改稿)
読んだ人: 人格OverDrive 編集部