お薦め!
ぼっちの帝国
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ぼっちの帝国

「正しさ」の押しつけは、もういらない。
コールセンター勤務の明日香はささいな揉めごとから28歳にして無職に。彼氏のはずの年下男にはほかに彼女がいて、アパートは取り壊され帰る場所もない。ひょんなことから昭和モダン建築アパートの住み込み管理人となった明日香だが……。笑いあり涙ありアクションあり、殺人事件からカーチェイスまで全部入り。生きづらさを抱えるすべてのひとに贈る、爆笑と鬱の恋愛エンターテインメント小説!


¥2,860
人格OverDrive 2022年, ペーパーバック 375頁
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あなた自身であるために

ぼっちの帝国

あなた自身であるということについての小説です元ネタは映画フィッシャー・キングドリーム・チームです制作時期がわずか一年違いなぜか筋立ても旅立てジャックが登場するところも似ていますどちらも大好きな映画ですほかにもドラマシリコンバレーやこの五年ほどのあいだに読み込んだ大量の少女漫画を参考にしていますドラマ結婚できない男も参考にしたのですがこれはつい最近続編が制作されてGyao! で視聴したところあまりのひどさにがっかりしました#MeToo や Time’s Up 以降の作品とはとても思えないあれが現代のこの国が求めるわかりやすさなのでしょうね二話の前半で見るのをやめましたそういうことじゃないだろうと思いましたじゃあどういうことかという答えがこの本ですヒロインに家政婦まがいの仕事をさせるのには葛藤がありましたがよく考えると男だろうと女だろうとゲイだろうと家事が好きな人間はいるわけだし愛を口実として強制される感情労働ではなく対価の発生する商売としての家事なら真剣に打ち込めるひとは多いのではないかと思い直しました見かけ上ジェンダーロールの押しつけを容認するかのような設定を使う代わりに家事労働が自己実現の手段になる必然は明示するよう心がけました車の話が出てくるんですがおれ免許持ってないんですよ発達性協調運動障害だからだれも殺したくないし事故死もご免なので車種はヤンキー 車」 「見栄っぱり スポーツカーで検索して決めました参照した記事がまちがっていたとしても知りようがありません書名は村田基フェミニズムの帝国から正しい生き方を押しつけられ適応できなければ生きていかれないことへの疑問について書いたのですが結婚も題材のひとつです正直七割以上の男が結婚するほうが異常だと思うし女性の未婚率と釣り合いがとれていないのは差別のあらわれに感じます男よりも多くの女が結婚させられさらにその大半が子どもを産まされ家族の面倒を見させられるという意味で)。 映画ガタカに登場するような心身共に完璧な男女だけが家族をつくればいいと思うんですそれ以外の人間はだれとも関わらずに自分ひとりの幸福を追求するのがいい他人にその考えを強制したらナチや 1996 年までの日本みたいになりますが自分自身にのみ適用する人生であればたぶん救済になる作中にも書きましたが相模原障害者施設殺傷事件の加害者は彼自身の考えに従えばだれよりもまず先に淘汰されるべき個体でありましたそのことをなぜ認識できなかったのかなぜ淘汰する優れた側だと錯覚したのかその自己愛こそが彼のような社会病質とわれわれとを分け隔てています社会的能力に障害のある人間が他人と関わらぬことでだれも傷つけずにいかに人生を自分らしく充実させるかウェブサイトにすべきか小説にすべきか迷って結局こうなりました作中でウェブサービスの話が出てくるのはそのなごりですbotch なる英単語を先日知りました発音もまんまぼっちで意味はできそこない」、 複数形は botches本書にはアイがあるので異なりますという愉快なオチでございます2019 年に最初の版を2022 年 6 月に新装版を出しました

タイトルと背表紙の紹介文でライトな恋愛ストーリーかと思いきや傷と癒しの物語

自分もぼっちだしどちらかというとおっさん系だからか笑しばしば登場人物達に自分を重ね読み

杜さんご自身が独立出版レーベル人格OverDriveを立ち上げており物語の誰かに杜さんが重なるんだろうなと著者様のことも想像

基本的には明るい筆運びで面白おかしくも時折自分自身の傷を抉られるような感覚になる

実は主人公以上に不器用な元妻に一番共感を感じてしまうかも⋯元妻も幸せになってほしい⋯と切に祈る思い⋯⋯

——asa_suzz 様 Instagram

 よかった面白かった

 冒頭から中盤まではギャグみたいな怒涛の展開に翻弄され続けるアラサー女性が、 「~かもしれぬ。」 とかって妙に古風な調子で語る一般常識とかレッテルとか社会性とかいったものに囚われてそれを押しつけてくる人々あるいはそれからはずれてしまった人々はずれつつある自分を辛辣で鋭い皮肉をもってバッサバッサ切るのも小気味よい

 終盤に向かうにつれ少しずつ不穏な影が差し暴力に虐殺SNS 炎上と社会的死といった負の連鎖を食らわしてきて読みながら気が滅入るんだけど続きが気になって読むのを止められない久しぶりに寝るのも忘れて読んだ

 著者の作品を読むのはたぶん五冊目だ共通点として主人公あるいはメインの登場人物が立ち向かう相手に横の広がりと縦の連なりの二つの軸がある

 前者は社会群集団体といったものでより具体的にはカルト宗教インターネット匿名掲示板SNS と作品が書かれた年代と共にアップデートされている群集心理の描写が巧みで真に迫っている登場人物も知りえない事件が目の前で発生し読者だけがそれを追いかけるその構図は実況中継動画のようで興奮するし同時に興奮することに居心地の悪さを感じる

 後者はほぼ一貫しており過去に犯した罪や異常な両親や祖父母親戚との確執や虐待でありその血を引いている血縁遺伝という呪いであったりする

 読み終わってすぐは男女格差や女性差別の問題から始まったのに血縁の呪い虐殺にすり替わったような印象を受けたしばらくして改めて考えてみてそれらは暴力という点で共通していると気づいた性的に搾取する痴漢も派遣会社の担当も銃を乱射する殺人犯と底で繋がっている私自身もまた自覚せず暴力を振るっている

——Y. 田中崖 様水平線上の雨

(2019年11月16日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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杜 昌彦 認証
1975年6月18日 -

著者、出版者。2010年から活動。2013年日本電子出版協会のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。