自分自身の主になる、 とはいかなることか。 理想主義を叫ぶ者、 政治や商売に野心を抱く者。 世の価値観が一変したことで、 登場人物はだれもが 「自分自身の主」 になろうとして迷います。 一発の銃声ではじまった物語は大地震で幕を閉じます。 失恋と大地震のショックでわれに返った主人公が、 最後に選んだ答えは、 うわついた夢に惑わされず、 地に足をつけて暮らすことでした。 原爆も強盗のピストルも等しく人生へのテロだという視点、 世相に惑わされてうわついた夢を見る愚かしさ (政治や商売や宗教で一山当てようとしたり、 非現実的な女性を追い求めたり)、 「自分自身の主」 という概念。 当時の読者をただ愉しませるためだけに書かれたであろう言葉に、 意外に含蓄があります。 ひとを見て描き読者を愉しませるのが案外、 文学の本道かもしれません。
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てんやわんや
by: 獅子文六
臆病で気は小さいが憎めない犬丸順吉は、太平洋戦争直後、戦犯を恐れた社長の密命により四国へ身を隠す任務を与えられる。そこには荒廃した東京にはない豊かな自然があり、地元の名士に食客として厚遇を受けながら夢のような生活が待っていた。個性豊かな住民たちと織りなす笑いあり恋ありのドタバタ生活はどんな結末を迎えるか……。昭和を代表するユーモア小説。
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読んだ人:杜 昌彦
(2017年02月08日)
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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