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サンセット・パーク
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サンセット・パーク

大不況下のブルックリン。名門大を中退したマイルズは、霊園そばの廃屋に不法居住する個性豊かな仲間に加わる。デブで偏屈なドラマーのビング、性的妄想が止まらない画家志望のエレン、高学歴プアの大学院生アリス。それぞれ苦悩を抱えつつ、不確かな未来へと歩み出す若者たちのリアルを描く、愛と葛藤と再生の物語。


¥2,178
新潮社 2020年, Kindle版 290頁
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読んだ人:杜 昌彦

サンセット・パーク

オースターには物語性に富むいいほうとひたすら鬱々と内向して物語に一切起伏のない悪いほうがありおおむね交互に書いているかに以前は思っていたけれどある時期から双方が融合されたように感じる本作がその好例で両方のいいとこどりだそれぞれの問題を抱えた孤独なひとびとが通り過ぎる場所としてのシェアハウス打ち棄てられた家の不法占拠で生活する話で拙作ぼっちの帝国との共通点を思わざるを得なかった拙作では徹頭徹尾てんでばらばらな個の寄り集まりが疑似家族としての理想郷を築こうとするも、 「世間の悪意によってその夢を奪われる本作ではどこまでも孤独なひとりひとりが他人とは分かち合いようもない人生を生きながらもここまでは拙作と同じなのだが)、 いつかは世間によって奪われる仮初めの場所/時間に助けられ互いに支え合いながら現在に立ち向かおうとする姿が描かれるそしてそこには生が次の世代へ受け継がれることへの圧倒的な信頼が感じ取れる結末に破綻が描かれながらも偶然の音楽のような絶望が感じられないのはそのためだ互いを思うがゆえにうまくいかなかったり互いの孤独を尊重することと利用し合うことが矛盾せずに同居したり愛し合うことが社会的な罪であったりわかるしわたしにはない正常でない両親と発達障害とをもつわたしはだれともまっとうな信頼関係を築けたためしがない唯一の例外が毎月末に飲む友人なのだが昨今の状況のおかげで先月はその会合すらかなわなかった本作に描かれるひととひととの関係性はだから痛みを伴って切実に理解できるとともにわたしには縁のないものでもあった次世代への信頼と暗い時代を描いているというふたつの点でピンチョンブリーディング・エッジとも呼応するものを感じた。 『冬の日誌と並ぶオースターの最高傑作のひとつだと思う

(2020年05月09日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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ポール・オースター
1947年2月3日 - 2024年4月30日

米国の作家・詩人・映画監督。彼の作品はニューヨーク、特にブルックリンを土台にしている。1993年、『リヴァイアサン』によってフランス・メディシス賞の外国小説部門賞を受賞した。

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