サンセット・パーク
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サンセット・パーク

大不況下のブルックリン。名門大を中退したマイルズは、霊園そばの廃屋に不法居住する個性豊かな仲間に加わる。デブで偏屈なドラマーのビング、性的妄想が止まらない画家志望のエレン、高学歴プアの大学院生アリス。それぞれ苦悩を抱えつつ、不確かな未来へと歩み出す若者たちのリアルを描く、愛と葛藤と再生の物語。


¥2,178
新潮社 2020年, Kindle版 頁
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著者: ポール・オースター

(1947年2月3日 -)米国の作家・詩人・映画監督。彼の作品はニューヨーク、特にブルックリンを土台にしている。1993年、『リヴァイアサン』によってフランス・メディシス賞の外国小説部門賞を受賞した。

2020.
05.09Sat

サンセット・パーク

オースターには物語性に富む「いいほう」とひたすら鬱々と内向して物語に一切起伏のない「悪いほう」があり、おおむね交互に書いているかに以前は思っていたけれど、ある時期から双方が融合されたように感じる。本作がその好例で、両方のいいとこどりだ。それぞれの問題を抱えた孤独なひとびとが「通り過ぎる場所」としてのシェアハウス(打ち棄てられた家の不法占拠)で生活する話で、拙作『ぼっちの帝国』との共通点を思わざるを得なかった。拙作では徹頭徹尾、てんでばらばらな個の寄り集まりが、疑似家族としての理想郷を築こうとするも、「世間」の悪意によってその夢を奪われる。本作ではどこまでも孤独なひとりひとりが、他人とは分かち合いようもない人生を生きながらも(ここまでは拙作と同じなのだが)、いつかは「世間」によって奪われる仮初めの場所/時間に助けられ、互いに支え合いながら現在に立ち向かおうとする姿が描かれる。そしてそこには生が次の世代へ受け継がれることへの圧倒的な信頼が感じ取れる。結末に破綻が描かれながらも『偶然の音楽』のような絶望が感じられないのはそのためだ。互いを思うがゆえにうまくいかなかったり、互いの孤独を尊重することと利用し合うことが矛盾せずに同居したり、愛し合うことが社会的な罪であったり。わかるし、わたしにはない。正常でない両親と発達障害とをもつわたしはだれともまっとうな信頼関係を築けたためしがない。唯一の例外が毎月末に飲む友人なのだが、昨今の状況のおかげで先月はその会合すらかなわなかった。本作に描かれるひととひととの関係性は、だから、痛みを伴って切実に理解できるとともに、わたしには縁のないものでもあった。次世代への信頼と、暗い時代を描いているというふたつの点で、ピンチョン『ブリーディング・エッジ』とも呼応するものを感じた。『冬の日誌』と並ぶオースターの最高傑作のひとつだと思う。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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