特集: 書かれなかった物語

未完で途絶した作品や書けない作家の物語を集めました。

瀕死の双六問屋

1998年11月~2001年4月にかけて『TV Bros.』(東京ニュース通信社)で連載され、キヨシローが、「俺が唯一(絵本以外で)というくらい、まじめに(ゴーストライターやインタビューおこしではなく)自分で書いた」(「あとがき」より)と語る、「瀕死の双六問屋」を加筆修正した本書は、「理想郷」である「瀕死の双六問屋」で暮らす男が縦横無尽に音楽への愛、社会への怒りを語り尽くすというサイケな作品。君が代、憲法、自殺問題、さらには反核・反原発曲の収録問題を理由としたレコード発禁事件等々エピソードは多岐に亘り、10年以上の時を経ても、その文章はサイコーにクールでホット!

読んだ人: 杜 昌彦

お薦め!

長い別れ

テリー・レノックスという酔っぱらい男と友人になった私立探偵フィリップ・マーロウは、頼まれて彼をメキシコに送り届けることになった。メキシコからロスに戻ったマーロウは警官に逮捕されてしまう。レノックスが妻殺しの容疑で警察に追われていたのだ。しかし、レノックスが罪を告白して自殺したと判明。マーロウのもとにはレノックスからの手紙が届いた。ギムレットを飲んですべて忘れてほしいという手紙だったが……。『大いなる眠り』、『さらば愛しき女よ』と並ぶチャンドラーの代表作。愛と友情を描いた不朽の名作を名手渾身の翻訳で!

読んだ人: 杜 昌彦

お薦め!

骨の袋

ある暑い夏の昼下がり、妻が死んだ。最愛の妻を襲った、あっけない、なんのへんてつもない死。切望していた子供を授からぬまま、遺されたベストセラー作家のわたし=マイク・ヌーナンは書けなくなり、メイン州デリーの自宅で一人、クロスワード・パズルに没頭する。最後に妻が買ったもの―妊娠検査薬。なぜ。澱のように溜まっていく疑い、夜毎の悪夢。作家は湖畔の別荘を思い出し、吸い寄せられるように、逃れるように妻との美しい思い出が宿る場所、“セーラは笑う”へと向かう。そこでわたしを待っていた一人の少女が、すべての運命を変えていく―。『グリーン・マイル』のスティーヴン・キングが圧倒的な筆力で描く、哀切なまでに美しい、重量級のゴースト・ラヴ・ストーリー。

読んだ人: 杜 昌彦

お薦め!

おるもすと

もうほとんど何もかも終えてしまったんじゃないかと僕は思う。間違っていたらごめんなさい。
僕は「こうもり」と呼ばれ、崖っぷちの家にひとりで暮らしながら、石炭を選り分ける仕事をしている。高級な石炭である〈貴婦人〉を見つけ出す天才だった祖父が亡くなり、家と仕事を引き継いだのだ。机と電話機しか置いていない〈でぶのパン屋〉の固いパンを、毎日食べるようになったある日、公園のベンチで居合わせた体格のいい男のひとに英語で話しかけられた。が、意味はさっぱり理解できない。長い話の最後に、彼はひと言「おるもすと」と云った。

読んだ人: 一夜文庫

無料

Pの刺激

呪われた言葉が世界を染める。アヴァンポップな黙示録!
州辻郁夫、24歳。カルト集団自殺事件の生き残り。街は謎の断片群「PCz」に覆われていた。噂では13年前に失踪した無頼派、羅門生之助が作者だという。その孫の家出少女に振りまわされ、渦中へ巻きこまれる郁夫。大量の断片群に刻まれた魔術的想像力は、やがて現実を侵食しはじめ……。硬質な文体で描くダークファンタジー。(2005年作)

読んだ人: 人格OverDrive 編集部

お薦め!

ぼっちの帝国

「正しさ」の押しつけは、もういらない。
コールセンター勤務の明日香はささいな揉めごとから28歳にして無職に。彼氏のはずの年下男にはほかに彼女がいて、アパートは取り壊され帰る場所もない。ひょんなことから昭和モダン建築アパートの住み込み管理人となった明日香だが……。笑いあり涙ありアクションあり、殺人事件からカーチェイスまで全部入り。生きづらさを抱えるすべてのひとに贈る、爆笑と鬱の恋愛エンターテインメント小説!

読んだ人: 杜 昌彦

お薦め!

ガープの世界

看護婦ジェニーは男に頼らずに子供を産む。子供の名はT・S・ガープ。やがて成長したガープは、ふとしたきっかけで作家を志す。文章修業のため母ジェニーと赴いたウィーンで、ガープは小説の、母は自伝の執筆に励む。帰国後、ジェニーが書いた『性の容疑者』はベストセラーとなるのだが―。現代アメリカ文学の輝ける旗手アーヴィングの自伝的長編。

読んだ人: 杜 昌彦

お薦め!

2666

謎の作家アルチンボルディを研究する四人の文学教授、メキシコ北部の国境の街に暮らすチリ人哲学教授、ボクシングの試合を取材するアフリカ系アメリカ人記者、女性連続殺人事件を追う捜査官たち……彼らが行き着く先は? そしてアルチンボルディの正体とは? 2008年度全米批評家協会賞受賞。

読んだ人: 杜 昌彦

花終る闇

“漂えど沈まず”。小説のタイトルは決まった。しかし、男はそこから一歩も進めなくなった。焦燥と倦怠の中、男は酒と情事と幻想に耽る―。熱帯の甘い泥に蠢く古代の虫。機関銃の猛射の下、惚けた顔で佇むベトナム兵。みなし児のようにヨーロッパをさまよう女の疲れた首筋。記憶を食いつぶした男は崩壊の手前で辛うじて踏み止まるのだが…。『輝ける闇』『夏の闇』に続く未完の最終篇。

読んだ人: 杜 昌彦

チューリップ

『マルタの鷹』『血の収穫』のダシール・ハメットはパルプマガジン「ブラックマスク」から登場し、ヘミングウェイやフィッツジェラルドと並ぶ二十世紀アメリカ文学の重要な小説家と見なされるまでになった。1961年に亡くなるまで書き続けられ、未完となっている中篇小説「チューリップ」を中心とし、初期の文芸作品風の短篇も収めた小説集。ハードボイルド小説の日本での紹介者・小鷹信光個人訳に、評論・解説を付す。
ハードボイルド精神とは何か? 遺作と編者特選短篇を集めた愛蔵版。

読んだ人: 杜 昌彦