ピーター・ケアリー
ケリー・ギャングの真実の歴史
19世紀、オーストラリア。貧しいアイルランド移民の子ネッド・ケリーは、幼いころから獄中の父にかわり、母と6人の姉弟妹を支えてきた。父の死後、母はネッドを山賊ハリー・パワーに託す。だがそのせいで、ネッドはわずか15歳で馬泥棒の共犯容疑で逮捕されることになった。
出所したネッドは、美しい娘メアリーと出会い恋に落ちるが、ようやくつかんだ幸せも長くは続かない。横暴な警察は、難癖をつけてはネッドや家族を投獄しようとしてくる。いまや、ネッドと弟のダン、二人の仲間たち“ケリー・ギャング”は、国中にその名を轟かすおたずね者となっていた。あまりの理不尽さに、遂にネッドは仲間と共に立ち上がるが……。死後百年を超えてなお人々を魅了しつづける実在のヒーローの真実の姿を、彼がまだ見ぬ娘へ綴った手紙を通して描く感動作。
ジャック・マッグズ
1837年、流刑囚としてオーストラリアに流されていたジャック・マッグズは、露見すれば死刑となる危険をおかし、密かにロンドンに舞い戻ってきた。ところが到着を知らせてあった屋敷には当主はおろか使用人の姿もない。誤解をさいわい隣家の従僕におさまったマッグズは、「息子」である当主の帰りを待つことにした。マッグズに関心をもった新進作家のオーツは、マッグズの息子の捜索への協力と引き換えに、催眠実験の被験者となるよう取り引きを申し出る。持病の治療のためと説得されしぶしぶ承諾したマッグズだが、オーツは催眠実験でマッグズの正体をつかんでいた。
オスカーとルシンダ
信仰ゆえに孤独に身をおくイギリス人牧師オスカー。遺産でシドニーのガラス工場を買いとり経営する孤児ルシンダ。それぞれにギャンブルと出合い、のめりこんでいった2人の出会いと数奇な運命を、19世紀のイギリスとオーストラリアを舞台に描く長編。13カ国語に翻訳、ブッカー賞受賞作、待望の翻訳。
イリワッカー
「イリワッカー」とはオーストラリア口語で「プロのペテン師」のことを指す。当年139歳のおそろしく元気なペテン師が語る滑稽にして感動的なホラ話の中に、親子三代の確執とあの大陸の歴史が浮かび上がる。いま最も生きのいいブッカー賞作家による現代小説の壮大なる傑作、ついに邦訳なる!