特集: 子ども時代
ヴァーチャル・ガール
エイミー・トムスン
金色がかった栗色の髪に、左右色違いの大きな瞳が印象的な美少女マギー。彼女はコンピュータの天才アーノルドが自らの伴侶にしようと作りあげたロボットだった。人間と変わらぬ優しい心を持つマギーだが、人工知能の開発が禁じられている今、正体がばれれば即座に破壊されてしまう。かくして二人は追跡の手を逃れ、波乱に満ちた放浪の旅に出た…純真なロボット少女の成長と冒険を描く、スリリングで心あたたまる物語。キャンベル賞受賞。
読んだ人: 杜 昌彦
オリガ・モリソヴナの反語法
米原万里
1960年、チェコのプラハ・ソビエト学校に入った志摩は、舞踊教師オリガ・モリソヴナに魅了された。老女だが踊りは天才的。彼女が濁声で「美の極致!」と叫んだら、それは強烈な罵倒。だが、その行動には謎も多かった。あれから30数年、翻訳者となった志摩はモスクワに赴きオリガの半生を辿る。苛酷なスターリン時代を、伝説の踊子はどう生き抜いたのか。感動の長編小説。第13回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作。
読んだ人: 杜 昌彦
インフィニット・ジェスト
デヴィッド・フォスター・ウォレス
過去に夢見られた未来。中毒者更生施設エネットハウスの住民と、その近所のエンフィールドテニスアカデミーの学生は、視聴者を耽溺させ発狂に至らしめる映画『インフィニット・ジェスト』、及びそれを生み出した家庭の歴史を巡る謀略に巻き込まれる……世界的ベストセラー、本邦初訳成る!
読んだ人: 杜 昌彦
GONZO
杜 昌彦
姫川尊の噂をするとき、わたしたちが浮かべる表情は、決まって揶揄であり蔑みだった……頭のおかしい嘘つきおばさんが語る、ばかばかしくも切実なZ級BLアクション!(2021年作)
読んだ人: 人格OverDrive 編集部
父を撃った12の銃弾
ハンナ・ティンティ
12歳の少女ルーは、父とともに亡き母の故郷に移り住んだ。それまでは父とふたり、各地を転々としながら暮らしてきたが、娘に真っ当な暮らしをさせようと、父サミュエルは真っ当に働くことを決めたのだ。しかし母方の祖母は父娘に会おうとしない。母はなぜ死んだのか。自分が生まれる前、両親はどんなふうに生きてきたのか。父の身体に刻まれた弾傷はどうしてできたのか。真相は彼女が考える以上に重く、その因縁が父娘に忍び寄りつつあった……。ティーンとしていじめや恋愛を経験して成長してゆくルーの物語と、サミュエルを撃った弾丸にまつわる過去の断章を交互に語り、緊迫のクライム・サスペンスと雄大なロード・ノヴェル、鮮烈な青春小説と美しい自然の物語を完璧に融合させ、みずみずしい感動を呼ぶ傑作ミステリー。
読んだ人: 杜 昌彦
ヴァーノン・ゴッド・リトル―死をめぐる21世紀の喜劇
DBCピエール
コロンバイン高校の銃乱射事件からヒントを得たらしい高校での大量殺人を背景に、15歳の少年が国境を越えて逃げ回る。痛快無類な文体で、現代アメリカを黒い笑いの連打で駆け抜ける! 賛否両論まっぷたつ、ブッカー賞受賞の大問題作ついに刊行。
読んだ人: 杜 昌彦
マザーレス・ブルックリン
ジョナサン・レセム
フランク・ミナは、ぼくらの兄貴で、父で、恩人で、ボスだった。孤児院暮らしのぼくらを雇い、稼がせ、成長させ、大人にしてくれた。そんなミナが、ゴミ箱のなかで血にまみれ…無免許探偵のぼくらは、殺されたミナのため、奥さんのため、仕事のため、ぼくらのため、町へ出る!言葉の魔術師の異名を取る著者が魅力を全開させた、超個性脈ハードボイルド。
読んだ人: 杜 昌彦
拳銃使いの娘
ジョーダン・ハーパー
【アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀新人賞、アレックス賞受賞】 11歳のポリーの前に、刑務所帰りの実の父親ネイトが突然現われた。獄中で凶悪なギャング組織を敵に回したネイトには、妻子ともども処刑命令が出ており、家族を救うため釈放されるや駆けつけたのだった。だが時すでに遅くポリーの母親は殺されてしまった。自らと娘の命を救うため、ネイトはポリーを連れて逃亡の旅に出る。処刑命令を出した組織に損害を与えるため、道々で強盗をくりかえす父子。暴力と犯罪に満ち危険と隣りあわせの旅の中で、ポリーは徐々に生き延びる術を身に着けていく。迫る追っ手と警察をかわして、父子は生き残れるか? 人気TVシリーズのクリエイターが放つ鮮烈なデビュー作!
読んだ人: 杜 昌彦
ビューティフル・デイ
ジョナサン・エイムズ
元海兵隊員のジョーは、売春を強要されている少女や女性の救出を生業とするフリーランサーだ。ある時、仲介役のマクリアリーから、誘拐された上院議員の娘を助ける仕事が回ってきた。娘が娼館に閉じ込められているという情報を得たジョーは、現場へと急行するが背後には穢らわしい陰謀が―。ホアキン・フェニックス主演、リン・ラムジー監督で映画化!カンヌ国際映画祭2冠!気鋭の作家による傑作ノワール・スリラー。
読んだ人: 杜 昌彦
アバウト・ア・ボーイ
ニック・ホーンビィ
ウィル、36歳。仕事ナシ、する気もナシ。亡父の印税で悠悠自適。シングル・マザーとの後腐れのない関係に味をしめた彼は、シングル・ファーザーになりすまして、シングル・ペアレンツの会に乗り込んだ……。マーカス、12歳。転校した学校は大問題。すぐ落ち込むママも大問題。ピクニックで出会ったお気楽独身男とお悩み少年は早速騒動に巻き込まれ——。心温まる全英ベストセラー。
読んだ人: 杜 昌彦
ボトムズ
ジョー・R・ランズデール
80歳を過ぎた今、70年前の夏の出来事を思い出す―11歳のぼくは暗い森に迷い込んだ。そこで出会ったのは伝説の怪物“ゴート・マン”。必死に逃げて河岸に辿りついたけれど、そこにも悪夢の光景が。体じゅうを切り裂かれた、黒人女性の全裸死体が木にぶらさがっていたんだ。ぼくは親には黙って殺人鬼の正体を調べようとするけど…恐怖と立ち向かう少年の日々を描き出す、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
読んだ人: 杜 昌彦
キャッチャー・イン・ザ・ライ
J・D・サリンジャー
高校を放校となった17歳の少年ホールデン・コールフィールドがクリスマス前のニューヨークの街をめぐる物語。口語的な文体で社会の欺瞞に対し鬱屈を投げかける内容は時代を超えて若者の共感を呼び、青春小説の古典的名作として世界中で読み継がれている。
読んだ人: 杜 昌彦
ツ、イ、ラ、ク
姫野カオルコ
地方。小さな街。閉鎖的なあの空気。渡り廊下。放課後。痛いほどリアルに甦るまっしぐらな日々--。給湯室。会議。パーテーション。異動。消し去れない痛みを胸に隠す大人たちへ贈る、かつてなかったピュアロマン。恋とは、「墜ちる」もの。
読んだ人: 杜 昌彦
孤独の要塞
ジョナサン・レセム
ブルックリンに住む二人の少年ディランとミンガスは、同じストリートに住み、一緒に育った親友だ。しかし、ディランは白人、ミンガスは黒人。アメリカン・コミックや音楽への情熱で結びついていても、その友情には多くの試練が待ち受けていた。ある時、偶然にも空飛ぶ指輪を手に入れたディランは、ヒーロー「エアロマン」に変身して、ミンガスとともに街を守ろうと試みるが、それは二人の関係の転機となる―。ファンク、パンク、ヒップホップ、そしてグラフィティにドラッグ。全米批評家協会賞受賞作家が四年間の沈黙の末に発表した、70年代ニューヨークの息づかいが聞こえる傑作長篇。
読んだ人: 杜 昌彦
子ども諸君
ダニエル・ペナック
ある朝、目が覚めてみると、なんと子どもが大人になり、両親が子どもになっていた! 『人喰い鬼のお愉しみ』『片目のオオカミ』のペナックが放つ傑作ユーモア・ファンタジー。
読んだ人: 杜 昌彦
冬の日誌
ポール・オースター
いま語れ、手遅れにならないうちに。肉体と感覚をめぐる、あたたかな回想録。幼いころの大けが。性の目覚め。パリでの貧乏暮らし。妻との出会い。自動車事故。暮らしてきた家々。記憶に残る母の姿と、その突然の死。「人生の冬」にさしかかった著者が、若き日の自分への共感と同情、そしていくぶんの羨望をもって綴る「ある身体の物語」。現代米文学を代表する作家による、率直で心に沁みるメモワール。
読んだ人: 杜 昌彦
ケリー・ギャングの真実の歴史
ピーター・ケアリー
19世紀、オーストラリア。貧しいアイルランド移民の子ネッド・ケリーは、幼いころから獄中の父にかわり、母と6人の姉弟妹を支えてきた。父の死後、母はネッドを山賊ハリー・パワーに託す。だがそのせいで、ネッドはわずか15歳で馬泥棒の共犯容疑で逮捕されることになった。
出所したネッドは、美しい娘メアリーと出会い恋に落ちるが、ようやくつかんだ幸せも長くは続かない。横暴な警察は、難癖をつけてはネッドや家族を投獄しようとしてくる。いまや、ネッドと弟のダン、二人の仲間たち“ケリー・ギャング”は、国中にその名を轟かすおたずね者となっていた。あまりの理不尽さに、遂にネッドは仲間と共に立ち上がるが……。死後百年を超えてなお人々を魅了しつづける実在のヒーローの真実の姿を、彼がまだ見ぬ娘へ綴った手紙を通して描く感動作。
読んだ人: 杜 昌彦
ミスター・ヴァーティゴ
ポール・オースター
「私と一緒に来たら、空を飛べるようにしてやるぞ」ペテン師なのか? 超人なのか? そう語る「師匠」に出会ったとき少年はまだ9歳だった。両親なし、教養なし、素行悪し。超然とした師匠の、一風変わった「家族」と暮らす奇妙な修行生活のなかで、少年がやがて手にしたものとは――。アメリカ文学界きっての語りの名手が編む、胸躍る歓喜と痛切なる喪失のタペストリ、心に迫る現代の寓話。
読んだ人: 杜 昌彦
あの川のほとりで
ジョン・アーヴィング
ニューハンプシャーの山あいの小さな林業の町に暮らす、料理人とその息子。ある夜、寝室から漏れるただならぬ呻き声を聞いた息子は、父親が熊に襲われていると思い込み、ベッドの上の何者かをフライパンで撲殺してしまう。それは父の愛人であり、悪いことに町の悪辣な治安官の情婦でもあった。そして二人の逃避行が始まる―。構想20年!半自伝的大長篇。
読んだ人: 杜 昌彦
オウエンのために祈りを
ジョン・アーヴィング
5歳児ぐらいの身長、一度聞いたら忘れられないへんな声、ずば抜けた頭脳を持つぼくの親友オウエンを、ある日過酷な運命が襲った。ピンチヒッターで打ったボールが、大好きだったぼくの母の命を奪ったのだ。ぼくは神様の道具なんだと言い続ける彼にとって、出来事にはすべて意味がある。他人と少し違う姿に生れたオウエンに与えられた使命とは?米文学巨匠による現代の福音書。
読んだ人: 杜 昌彦
サイダーハウス・ルール
ジョン・アーヴィング
セント・クラウズの孤児院で、望まれざる存在として生を享けたホーマー・ウェルズ。孤児院の創設者で医師でもあるラーチは、彼にルールを教えこむ。「人の役に立つ存在になれ」と。だが堕胎に自分を役立てることに反発を感じたホーマーは、ある決断をする―。堕胎を描くことで人間の生と社会を捉えたアーヴィングの傑作長篇。
読んだ人: 杜 昌彦
ホテル・ニューハンプシャー
ジョン・アーヴィング
1939年夏の魔法の一日、ウィン・ベリーは海辺のホテルでメアリー・ベイツと出会い、芸人のフロイトから一頭の熊を買う。こうして、ベリー家の歴史が始まった。ホモのフランク、小人症のリリー、難聴のエッグ、たがいに愛し合うフラニーとジョン、老犬のソロー。それぞれに傷を負った家族は、父親の夢をかなえるため、ホテル・ニューハンプシャーを開業する―現代アメリカ文学の金字塔。
読んだ人: 杜 昌彦
スロー・ラーナー
トマス・ピンチョン
華氏37度で変わらぬ外気、階下では終わらぬパーティ。温室のような部屋でひそやかに暮らす男と女は終末の予感のなかで―鮮烈な結末と強靱な知性がアメリカ文学界に衝撃を与えた名篇「エントロピー」。“革命”を夢見る少年たちの秋を描く、詩情溢れる「シークレット・インテグレーション」、年間最優秀短篇として『O・ヘンリー賞作品集』に収録され、デビュー長篇『V.』の一章へと発展してゆくスパイ小説「アンダー・ザ・ローズ」など、眩いほどの才能に満ちた全五篇、著者唯一の短篇集を新訳。ダメキャラに熱力学、ゴミに機械に帝国主義、スパイ、神話、ポップ・カルチャー…。のちのピンチョン作品の萌芽を見るもよし、一篇たりとも読み逃せない作品群に加え、作家本人による仰天のこき下ろし自作解説、訳者による目から鱗の解説・訳註を収録。
読んだ人: 杜 昌彦
くそったれ!少年時代
チャールズ・ブコウスキー
わたしはみんなが嫌いだった。学校に友だちは一人もいなかったし、欲しいとも思わなかった。1930年代、ロサンジェルス。大恐慌に見舞われ失業者があふれる下町を舞台に、少年ハンクのハードでパンクな青春を描く。父親の虐待に対する激しい怒り、容貌への強烈な劣等感に苛まれながら多感な思春期を送った著者の自伝的長編。『詩人と女たち』の後、「この時代に辿り着くには時間がかかった。わたしはただタイプライターの前に座ってじっと待った」、そして一気に書き上げられた最高傑作。
読んだ人: 杜 昌彦
胡椒息子
獅子文六
牟礼家の次男、昌二郎は12歳。気が優しくて曲ったことが大嫌いなのだが、家族から邪魔者扱いされるので反発して悪戯ばかり。味方は、婆やのお民だけ。ある日、誤解と行き違いから異母兄と喧嘩して大怪我をさせてしまい感化院へ…。しかし、そこで出会った友達との生活で本来の気性を取り戻していく。小粒だがぴりっとしたまるで“胡椒”みたいな少年の成長物語。
読んだ人: 杜 昌彦
悦ちゃん
獅子文六
悦ちゃんはお転婆でおませな10歳の女の子。ちょっぴり口が悪いのはご愛嬌、歌がとても上手で、周りのみんなも目が離せない存在。早くに母親を亡くして、のんびり屋の父親と二人で暮らしているが、そこへ突如、再婚話が持ち上がったから、さあ大変。持ち前の行動力で東京中を奔走、周囲を巻き込みながら最後には驚きの事件が! ユーモアと愛情に満ちた初期代表作。
読んだ人: 杜 昌彦
ロデリック:(または若き機械の教育)
ジョン・スラデック
捨てられてしまった幼いロボット「ロデリック」の冒険を描く、スラップスティックなコミック・ノベル! 20世紀最後の天才作家スラデックが遺した、究極のロボットSFがついに邦訳。
読んだ人: 杜 昌彦
血と言葉 逆さの月 崖っぷちマロの冒険
杜 昌彦
『血と言葉』(『悪魔とドライヴ』改題)
県警本部長の娘、海堂ちありは援助交際の男に連れられて訪れた店で、カウンターに立つ国語教師、辻凰馬に激しく惹かれる。ちありの小説は波紋を呼び……。異色の恋愛小説!(2016年)
『逆さの月』
あたし渡辺聡美、17歳。悪友たちのおかげで今日も二日酔い。携帯電話がまだふたつ折りだった頃。ツインタワーが倒壊する少し前。あたしと幸田と春ちゃんはだれとも違うあたしたちだけの時間を生きていた……。恋を恋と認めない語り手による青春サスペンス。(2001年)
『崖っぷちマロの冒険』
僕は世界の忘れられた子。照らし出しては殲滅する——放課後に呼び出された11歳の僕が見たものは、中指を立てて木に縛りつけられたお嬢の屍体だった! 自伝的習作。(2002年)
別名義でベストセラーとなった代表作『血と言葉』に初期中篇二作を併録。
読んだ人: 28(にわ)
Pの刺激 黒い渦
杜 昌彦
『Pの刺激』
呪われた言葉が世界を染める。アヴァンポップな黙示録!
州辻郁夫、24歳。カルト集団自殺事件の生き残り。街は謎の断片群「PCz」に覆われていた。噂では13年前に失踪した無頼派、羅門生之助が作者だという。その孫の家出少女に振りまわされ、渦中へ巻きこまれる郁夫。大量の断片群に刻まれた魔術的想像力は、やがて現実を侵食しはじめ……。硬質な文体で描くダークファンタジー!(2005年)
『黒い渦』
あの渦からは逃れられない。愛と暴力の悪夢世界! 騒乱の夜から十年。かつて天才原型師と呼ばれた宍神は、企業の不祥事を隠蔽する「揉み消し屋」として日銭を稼いでいた。謎の女を救った夜から、黒い幻覚剤を巡る因縁に巻き込まれる。親しい人を「人形」に次々に殺され、過去と対峙した彼が見たものとは? 詩的な暴力描写、予想を裏切るめまぐるしい展開。ウルトラ・ヴァイオレンスな近未来ノワール!(1999年、2006年改稿)
読んだ人: 人格OverDrive 編集部