半年放置していた。 いろいろありすぎた。 義務感だけでこれを書いている。 さっさと終わらせて映画を二本観たい。 アマプラに無料で来ているオッペンハイマーと、 マンションのケーブル契約特典で二ヶ月無料だった Disney+ の Let it be だ。
マンションの話を先にする。 前回の投稿で隣室に蟻が大発生したらしいことを書いた。 その前月にエアコンの水漏れで管理会社を呼んだ。 ついでに床の不陸と網戸の破れと浴室換気扇の故障と押入扉の不具合と洗濯のたびに排水口から水が溢れることとそのせいで床が腐ってぶよぶよになっていることとトイレの水がたまに止まらなくなること、 あとは忘れたが部屋の不具合をあれこれ訴えた。 エアコンは管理会社が訪れる前に自力でドレンホースをポンプで清掃して直した。 換気扇と網戸は交換してもらった。 しかしどうもその話と、 そしてたぶん隣室の蟻の件とで大家がうんざりしてしまったらしい。 ある日帰宅すると取り壊しを告げるビラがアパートの外壁に貼られていた。 小説に書くとだいたい現実になる。 2005 年に 『Pの刺激』 で震災を書いたら六年後にあのざまだ。 幸運にも 『ぼっちの帝国』 の明日香とちがってビラに気づけた。 小説を書くためにたまたま取得していた有休を使って部屋を探し、 近所のマンションにどうにか移れた。 この有休はどうも職場で不信感を招いたらしくて辞めるのかと思ったとあとで上司から小言をいわれた。 引越の詳細は Mastodon にさんざん書いたので気が済んだ。 ここではくり返さない。 前回の投稿で金がない旨をくどくど書いたが退去費用はもらえなかった。 本の装幀をつくるのに使った iPad Pro やら古い HKKB やらを売って六万、 本や CD を売って二万、 帰ってきた敷金が四万弱。 それでも焼け石に水で、 いくつかの家電を買い換えたり引越業者を雇ったりしたのでひどいことになった。 賞与と月給がふりこまれたが瞬時に蒸発した。
そんなことになるとわかっていたらキーボードなんか買い換えなかった。 台湾 Tex 社の修羅にあれこれカスタマイズして六万費やし、 誕生日に早めの夏休みをもらって 『Cloud9』 に取りかかった。 十年使い倒した MBP Late2013 が限界だったので引越を機に Mac も新調した。 Mac mini M4 梅、 十年後を見越してメモリだけ 24GB に増設。 結果的に執筆環境を一新することになった。
蟻事件の前月、 『Cloud9』 を書きはじめた頃からアトピーが三十年ぶりに再発した。 原因はわからない。 シャンプーやボディソープを低刺激のものに替えたが改善されない。 最初はワイシャツの袖が血で汚れる程度だった。 急速に悪化して全身に広がった。 最初は市販薬でごまかしていたが金がかかりすぎるし悪化する一方。 引越と並行して皮膚科に行った。 処方薬を塗りたくっているがさして改善しない。 同時期に詰め物がとれた。 歯科医によれば歯周病が進んでいるという。 大工事になった。 歯石ばかりか歯肉まで大いに削られた。 引越騒ぎで最近はあまり行けていないが通常の歯ブラシとデンタルフロスと歯間ブラシと二種類の歯磨き粉を日々、 駆使することでかなりましになった。
走るのと筋トレはそれなりに継続している。 筋トレは毎日レッグレイズ、 クランチ、 サイドレッグレイズ、 バックエクステンション各百回だけは欠かさない。 デクラインプッシュアップやダンベルリフト、 ダンベルカール、 スクワット、 リバースプッシュアップはさぼりがちだ。 米を喰っていたときには薄らデブだった。 ジーンズのウェストがきつかった。 やめたら改善された。 去年穿けなかった Levi’s のコーデュロイ 519 が穿けた。 新居に姿見がついていた。 思ったよりましになっていた。 あとちょっと筋肉がついてあとちょっと体脂肪が落ちればと思う。 たぶんむりだろう。
引越はほとんど自力でやった。 荷物を手にばかみたいにせかせかと往復した。 そのくらい近所だ。 お気に入りの真空管アンプは壊れて六千円の中華デジアンに買い換えた。 腰痛になり鎮痛剤の湿布を貼った。 あるいはアトピーはそうした薬剤のせいかもしれない。 腰痛とアトピーのほかはたいした病気はしなかった。 風邪もひかなかった。 これはいいことだろう。 マンションでの暮らしも気に入った。 設備が現代的になり贅沢になった。 しかし金がないとか十六年暮らしたアパートを取り壊しで追い出されるとか、 三十年ぶりのアトピー再発とか本業のこととか、 おれの人生いろいろと限界だよなぁと思う。 両親もそろそろ介護とか死ぬとかの時期だろう、 大昔に妹に押しつけて逃げてきたけれど。
そもそも遺伝的にも生育環境的にもおれは社会でやっていくだけの能力を手に入れられなかった。 というか逆にどうあがいても社会に適応できなくなるような教育を受けた。 両親の努力は実った。 おれは人間性に問題のある無能だ。 やれるのは小説を書くことだけ。 この (おれの人生にしては) 贅沢なあたらしい部屋でだれとも会わず、 小説だけ書いて生きていくことはできないものか。 そうでない現実のいまの生活がむしろ不自然に思える。 むりがある。 だから憎まれ蔑まれているのだ。
月イチで飲む友人とは今年も欠かさず楽しい時間を持つことができた。 コロナ禍にはおれが怖じ気づいて会わなかった時期もあったから今年は十二回まっとうできてよかった。 区役所での罹災証明発行のバイト以来だから、 かれとの関係はもう十三年もつづいている。 人生でもっとも長く継続できた人間関係だ。 これからも楽しくやれたらと思う。
そのためにも来年は書いたものをどうにか金に換えたい。 この十五年ばかりさんざんやってきたが自主出版の限界が見えた。 書いて編集して装幀して出版して、 今年は売るところまでやった。 それだけやって得たのは貧困だけだ。 いま書いている 『Cloud9』 はおれをましな舞台へ連れて行ってくれると信じる。 2004 年の 『KISS の法則』 でもその翌年の 『Pの刺激』 でもおなじことを思ったのであてにならないが。 しかしまぁ今度こそはと夢見るくらい許されるだろう。 宝くじなんか買うよりは努力のしようがある、 少なくとも錯覚を信じていられる。
だれも知らないウェブサイトのだれも読まない記事でだれに向かっていうのか自分でも滑稽に思えるが、 こんな記事だからこう締めくくろう。 よいお年を。