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きれいな色とことば
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きれいな色とことば

心の動くところから、しゃぼんの虹のようにたくさんの色が生まれてくる。読むたびあたたかい色に包まれるイラスト満載のエッセイ集。


¥924
講談社 2018年, 文庫 224頁
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ほんものの「癒し」には勝てない

きれいな色とことば

知的で上品な人格OverDrive 読者の皆様におかれましては数日前から突如現れた一夜文庫なる下手くそで変な書き手に困惑しているとお見受けします大変申し訳ありませんここで一度自己紹介をさせていただきたいと存じます

と書いたそばから白状してしまえば一夜文庫というのが何者なのか正直私自身も全く分からなくなってきてしまった

元々私は書評サイトで拙い感想文を細々と綴っているだけの素人だった長い間書いているうちに枯渇していきちょうどその頃に転職をしたら仕事が忙しくなって長文を書く時間がとれなくなりサイトへの投稿はほとんど止めてしまったのだが好きな本について語りたいという欲求は私の中で燻り続けていた

そんな折本屋に棚貸し書店という新たな形態が流行り始めたいわゆるレンタルスペースのようなもので棚を一区画借りて自分の書店として売りたい本を並べるシステムだ私はそこで棚を借り一夜文庫を名乗り始めた屋号の由来は私が寝る前に本を読むのが好きなことと一日一日を大切にしたいという思いから名付けたやがて一箱古本市というイベント自分の好きな本をミカン箱程度の箱に入るくらい並べて販売する素人が本屋さんごっこを楽しむという趣旨のイベント東京の不忍ブックストリートが発祥にも出店するようになる対面で自分の好きな本を思いきりお勧めできる楽しさに目覚めてしまった私は狂ったように出店するようになった

イベントに出ながらツイッターで本を紹介しているとフォローしてくださる方が少しずつ増えていった自分でも予想もしていないことだった

私は本の情報に加えて日常のささやかな出来事もつぶやくようになった綺麗な夕焼け季節の変わり目の風の匂い夜の街路樹が道に落とす影道端のコンクリートから生えた野の花⋯⋯

ツイッター見てます」 「癒されますと言って頂く機会が何度もあるようになったとても嬉しかった私はますますツイートにのめりこんだ日常の些細な情景を写真に撮り刺のない柔らかな表現を心掛けてアップし続けた

その頃から私は本来の自分と一夜文庫さんという二次元の存在との解離を感じるようになった

私の活動の根底にはたくさんの人に本を好きになってほしいという願いがあるだから本の写真を撮る時は少しでも見た人が読みたくなるよう布など綺麗な背景を用意して撮り補正もかける写真に写った本は確かに綺麗だが撮った私の部屋は大量に積まれた本で散らかっている

一夜文庫にはおやすみ前にゆったり読める本をご紹介するというコンセプトがあるそのためなるべくネガティブなツイートはしないように心掛けているが本来の私はどす黒さの渦巻くネガティブ人間で雑貨屋の冴えない店員としてマスクの下で嫌な客に悪態をつきながらレジを連打している

ときどき自分のツイートを遡って眺める誰なんだこいつは

オシャレなパスタと本の写真が上がっている確かにそんなものを食った記憶もあるがその前のランチは富士そばその前の前は二郎系メンヤサイ少なめアブラマシマシだった

画面の中の一夜文庫さんはスマートでキラキラしている現実の私はボサボサの髪を振り乱してくたびれたジーパンに変な柄のアロハシャツを着て磨り減ったサンダルを引きずってとぼとぼ歩いている

ツイッターを見て古本市にきてくれた方から⋯⋯本人ですか? 本当ですか?と言われた無理もないあのキラキラわくわくした素敵そうなイメージとこの貧相なブスは全く釣り合っていない

愚痴をつぶやこうとしてスマホを握った手を止める一夜文庫さんはそんな汚いことは言わない

一夜文庫さんの呪縛が私をどんどん縛っていく今はそれが楽しいときの方が多いけれど時々ほんの少し息苦しさを感じる

私なんかの言葉で癒されると仰って頂けるならいくらでも言葉を紡ぎたい

でも癒しって何だろう人を癒したいなんて意識してしまったら出来なくなる気がする

おーなり由子さんのきれいな色とことばを読み返す柔らかな筆とイラストで日常を綴るエッセイ集たいしたことは書かれていないのに読んでいるとのびのびするきっと力まず自然に自分の言葉で書いているからだろう湧き水のように乾いた心に染み渡っていくこんなふうに書くことが私にできるだろうか

私の文体って何だろう

ずっと探しているけどまだ見つけられていない

はりぼてのアバターを被って紛い物の癒しを振り撒いてどこにもいない自分を探して幻想の夜を彷徨っている

一夜文庫さん⋯⋯お前は一体誰なんだ

(2022年09月30日)

寝る前の読書を愛する本好き。趣味で一箱古本市に出たり、ツイッターで本をオススメしたりしている。人格OverDriveに憧れてダメ元でお願いしたら書かせて頂けることになってしまい震えている。永遠の前座。
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AUTHOR


おーなり由子
1965年2月18日 -

日本の絵本作家、漫画家。1982年「路地裏の風景」でデビュー。1985年に短編集「秋のまばたき」に続き計4冊の漫画作品を発表。1992年の「天使のみつけかた」以降は活動の中心を絵本に移す。1999年には北村薫の「月の砂漠をさばさばと」の挿絵を担当。NHK『おかあさんといっしょ』中の歌「あめふりりんちゃん」「ハオハオ」「ゆきだるまかぞく」の作詞も行なっている。

おーなり由子の本