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やっさもっさ
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やっさもっさ

舞台は横浜。志村亮子は才気と実行力を買われ孤児院「双葉園」の運営に奔走する。そこへアメリカ人実業家、文芸評論家、婦人運動家と三流プロ野球選手など、個性的な人物が集まりドタバタ劇が始まる。一方、夫の志村四方吉は戦争による虚脱症で無為の生活を送っているように見えたが…。戦後の社会問題を巧みに取り込み、鋭い批評性と高い諧謔性で楽しませる傑作。

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日本版『サイダーハウス・ルール』

読んだ人:杜 昌彦

やっさもっさ

打ちのめされた細部に至るまでじつによく取材して書かれているJAZZ が米語譲りの泥臭い俗語として描かれる事実からもそれは窺われるそりゃ書かれた時代が時代だから言葉や書かれようはひどいよ現代の人権感覚に照らしてひどいとしかいいようのない箇所も多出する心臓を突き刺されたように感じる箇所や吐き気を催す箇所もやたらある何もこんなひどい書きようをしなくたっていいじゃないかと苦情を述べたくなるのも数カ所に留まらないごく当たり前の人間を生まれないほうが幸福であったかのように捉えたりあまりにもあからさまな優生思想であったりでもそれは当時のありのままの現実に取材して書かれたのだとわかるそのような書きようもまた当時の日本人男性なりの誠実さだったのだバドガールめいた意に沿わぬ扮装をさせられて占領軍から性暴力に遭うシュウマイ売りであったり優生思想を声高に訴え避妊法を説いて同性のセックスワーカから笑われるフェミニストであったり獅子文六は物事を人間をちゃんと見ているほんとうのことをしっかり見て嘘をつかずに書いてある現代日本の作家にはこれがないできても出版が許されないこれがわたしには腹立たしくてならない作家も出版人も恥ずかしくないのか七十年近く前の小説にあんたらの仕事は政治的な意識において遠く及ばないんだぞシスジェンダーの中年男性であるわたしの主観でしかないけれど獅子文六は日本の作家でもっとも生身の女性を描くのがうまい美化することも貶めることもなくいいことも悪いこともありのまま地に足のついた生きるのに懸命な血の通ったひとりの個人として書いている人間の弱さ惨めさ哀しさそこから這い上がるしたたかさを目をそらさずに書いているなぜ現代日本の作家は出版はそれができないのかなぜ過去の偉大な作家にしかそれが求められないのかわれわれはそのことを深く恥じ入らねばならない希望を窺わせつつも苦い結末はビリー・ワイルダーアパートの鍵貸しますを思わせたいつだって時代は若い男女につらく当たる

(2020年07月18日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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獅子文六
1893年7月1日 - 1969年12月13日

日本の作家、演出家。多くの作品が映像化された。1961年にNHKでテレビドラマ化された『娘と私』は、連続テレビ小説の第1作となった。1963年、日本芸術院賞受賞、1964年芸術院会員、1969年文化勲章受章、同時に文化功労者となる。