登場人物が当然のように携帯電話を使うので、 そういうものが存在しなかった当時は意味がよくわかりませんでした。 性転換の描写はともかく、 ムスリム社会が舞台である理由もよくわかりませんでした。 同時多発テロとその後のあれこれで、 なるほどそういうことかと気づかされました。 ポール・オースター『リヴァイアサン』 やスティーヴ・エリクソンの諸作などを読んだときにも思いましたが、 見えているひとには見えていたのですね。 予定されていた四、 五作目を書かずに亡くなったのがとても残念です。 ずっと待っていたので死亡記事を読んだときはショックでした。 三作目の邦題は 『亡命の接吻』 のほうがよかったと思います。 もっと評価されていい作家です。
ASIN: 4150108366
重力が衰えるとき
by: ジョージ・アレック・エフィンジャー
おれの名はマリード。アラブの犯罪都市ブーダイーンの一匹狼。小づかい稼ぎに探偵仕事も引きうける。今日もロシア人の男から、行方不明の息子を捜せという依頼。それなのに、依頼人が目の前で撃ち殺されちまった!おまけになじみの性転換娼婦の失踪をきっかけに、血まなぐさい風が吹いてきた。街の秩序を脅かす犯人をつかまえなければ、おれも死人の仲間入りか。顔役に命じられて調査に乗りだしたものの、脳みそを改造した敵は、あっさりしっぽを出しちゃくれない。…実力派作家が近未来イスラーム世界を舞台に描く電脳ハードボイルドSF。
¥593
早川書房 1989年, 文庫 435頁
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読んだ人:杜 昌彦
(2018年02月28日)
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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