ウラジーミル・ナボコフ
透明な対象
さえない文芸編集者ヒュー・パーソンは、スイスに住む大作家Rのもとを訪れるため列車に乗り込んだ。車内で同席した若く美しい女性アルマンドに心惹かれた彼は、やがて奇妙な恋路へと足を踏み入れていく。ナボコフ一流の仕掛けが二重三重に張り巡らされ、読者を迷宮へと誘い込む最後の未邦訳作品、待望の刊行。
セバスチャン・ナイトの真実の生涯
1899年ロシアの名門貴族として生まれ、米国に亡命後「ロリータ」で世界的なセンセーションを巻き起こしたナボコフが初めて英語で書いた前衛的小説。早世した小説家で腹違いの兄セバスチャンの伝記を書くために、文学的探偵よろしく生前の兄を知る人々を尋ね歩くうちに、次々と意外な事実が明らかになる。
ロリータ 魅惑者
読み直すたびに新たな発見がある20世紀文学に聳える最高傑作の完全版。少女への倒錯した愛を描く恋愛小説であり、壮大なロード・ノベルであり、ポストモダン小説の先駆でもある。数々の謎を孕み多様な読み解きを可能とするナボコフの代表作「ロリータ」。ロシア語版との異同の注釈を付したその増補版に、少女愛モチーフの原型となった中編「魅惑者」を併録。ナボコフ・コレクション全5巻完結!
絶望
ベルリン存在のビジネスマンのゲルマンは、プラハ出張の際、自分と“瓜二つ”の浮浪者を偶然発見する。そしてこの男を身代わりにした保険金殺人を企てるのだが…。“完全犯罪”を狙った主人公がみずからの行動を小説にまとめ上げるという形で書かれたナボコフ初期の傑作!
カメラ・オブスクーラ
裕福で育ちの良い美術評論家クレッチマーは、たまたま出会った美少女マグダに夢中になるのだが、そこにマグダの昔の愛人が偶然姿をあらわす。ひそかに縒りを戻したマグダに裏切られているとは知らず、クレッチマーは妻と別居し愛娘をも失い、奈落の底に落ちていく……。あの『ロリータ』の原型であるナボコフ初期の傑作。英語版と大きく異なるロシア語原典の独特の雰囲気を活かし、細部の緻密な面白さを際立たせた野心的な新訳。
ルージン・ディフェンス 密偵
至高のチェス小説、究極の視点人物。精緻で奇想的なナボコフ世界へ。自ら愛好するチェスへの情熱と構成美を詰め込み、不死鳥のように甦った偉大なロシア文学と賞賛された傑作長篇「ルージン・ディフェンス」。謎に満ちた視点の語りが驚きをもたらす、ハードボイルドな味わいの中篇「密偵」。1930年代、ナボコフ30代はじめに発表された革新的な傑作2篇を、初のロシア語原典訳で収録。
淡い焰
詩から註釈へ、註釈から詩へ、註釈から註釈へ……。幾重もの層を渡り歩きながら奇妙な物語世界へといざなう、『ロリータ』と並び称されるナボコフの英語小説の傑作! 架空の詩人による九九九行の詩、架空の編者が添えたまえがき、註釈、索引。
アーダ
美しい11歳の従姉妹アーダに出会ってまもなく、14歳のヴァンは彼女の虜となった。青白い肌の博学なアーダと知的なヴァン。一族の田舎屋敷で、愛欲まみれの恋を繰り広げる二人はしかし、ある事情により引き裂かれる。著者の想像力と言語遊戯が結実する傑作長篇!