まさに衝撃的な出逢いでしたねぇ。 書くことを本気で悩んでた時期だったから、 「小説ってなんでもありなんだ!」 と開眼した気分でした。 ピンチョンってね、 正直読みにくい。 妙なことにぜんぜん硬い文章じゃなくて、 ユーモアもあればギャグもあり、 物語だって漫画的な楽しい発想に満ちてるし、 奇想天外で起伏に富んでいて、 スリルありサスペンスあり、 もう確実に娯楽小説なんですよ。 けっして堅苦しいジュンブンガクじゃない。 なのになんで読みにくいんだろうなぁ⋯⋯。 でもその読みにくさが変な中毒になるんですよ。 それがまたおかしい。 物語からしておかしいしね。 ゴジラとか普通に出てくるし。 おもしろいのに読むのが苦痛で苦痛なのに夢中になる。 ぜったいおれだけじゃないはずですよ。 ピンチョンのファンのかなりの割合がそんなふうに読んでるはず。 『KISS の法則』 『Pの刺激』 の二作はこの本に影響を受けて書きました。 前者は親子の話で後者は、 旧版の装幀に描かれていたブラウン管がモチーフとなりました。 ほんとおかしいですよ、 ピンチョンの魅力は。 わけがわからない。 ⋯⋯あ、 この本は普通に読みやすいです。 内容もキャッチーでとっつきやすいし。 最初の一冊におすすめ。
ASIN: 4105372106
ヴァインランド
by: トマス・ピンチョン
1984年、夏。別れた妻をいまだ忘れられぬゾイド・ホイーラーは、今年もヴァインランドの町で生活保護目当てに窓ガラスへと突撃する。金もなく、身動きもならず、たゆたうだけの日々。娘のプレーリーはすでに14歳、60年代のあの熱く激しい季節から、どれほど遠くまで来てしまったことか―。だが、日常は過去の亡霊の登場で一変する。昔なじみの麻薬捜査官が示唆したあの闇の男、異様なまでの権能を誇り、かつて妻を、母を、奪い去ったあの男の、再びの蠢動。失われた母を求める少女の、封印された“時”をめぐる旅が始まった。超ポップなのに、この破壊力。作品の真価を示す改訳決定版。
¥4,400
新潮社 2011年, 単行本 621頁
特集: スラップスティック!, カルトの子ら
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なんでもあり
読んだ人:杜 昌彦
(2017年09月06日)
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
『ヴァインランド』の次にはこれを読め!