地下鉄道

地下鉄道

アメリカ南部の農園で、苦しい生活を送る奴隷の少女コーラ。あるとき、仲間の少年に誘われて、意を決して逃亡を試みる。地下をひそかに走る鉄道に乗り、ひとに助けられ、また裏切られながら、自由が待つという北をめざす――。各賞を総なめにした世界的ベストセラー、ついに刊行!

著者紹介

(1969年11月6日 - )ニューヨーク州出身の作家。ハーバード大学を卒業後、『ビレッジボイス』で本や音楽のコラムを手がける。99年に発表したデビュー作『The Intuitionist』でPEN/ヘミングウェイ賞の最終候補。昨年発表した6作目となる長編『地下鉄道』で全米図書賞やピュリッツァー賞などを総なめにする。ブルックリン在住。

コルソン・ホワイトヘッド の本
2018.
01.26Fri

地下鉄道

序盤は読むのがつらかった。この国ではいまだに黒塗りの顔が楽しい演し物だと思われているし、自由意志に対するヘイトが強い。個人的にも過去になっていない。選び取る人生がひとを人間にする。あるいは選び取れると信じることが。そのことを知っていたがために罰されて育った。抗うたびに罪を思い知らされた。追っ手がいつ現れるかと怯えながら逃げつづけている。いまだ所有されている。安住の地はない。

徐々に這い上がり頂点に達したところでまた絶望へ叩き落とされる。この物語ではそのくりかえしが山場へ向けて盛り上がる。地獄から逃げ出して自由な土地にたどり着くが、その幸福は偽りであり、一瞬でも人生を自分のものと信じた罪が罰される。かと思いきや助けられてまた逃げる。しかしその自由はかりそめであり、降りる駅まで乗り合わせただけであるかのように、逃亡幇助者らはいずれ殺される。

その構造に別の繰り返しが組み合わされる。殺された人物がどんな思いを抱いて生きたかが語られる。あるひとつの死が伝えようとした事実が山場で語られる。最後に手にした力、伝えられなかった希望は自由意志だった。選び取れると信じることの持つ力だ。主人公が序盤で二度、かいま見せる力である。それはすぐさま無残に踏みにじられる。しかし死んではいない。その蒸気機関こそがこの物語を終着駅まで動かす力となる。

その魔力モジョを信じた男が彼女を服従の外へと連れ出す。助けたひとびとは次々に殺される。主人公は流されるばかりに見える。しかし実際には彼女だけの力だった。叩き落とされ踏みにじられてもそのたびに這い上がる。その積み重ねが追っ手の力を奪い、彼女を強くした。自身の蒸気機関が彼女をそこまで連れてきたのだ。結末でついに主人公はだれの助けも借りずに追っ手を倒し、選び取った鉄路を進む。そのようにして人生をつかみ取る。


杜 昌彦

(Masahiko Mori, 1975年6月18日 -)著者、出版者。出版レーベル「人格OverDrive」主宰。2010年から六年間、ヘリベマルヲ名義で自主出版活動を行う。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにてウェブディレクター・佐々木大輔氏から「注目の『セルフパブリッシング狂』10人」に選ばれた。