D.I.Y.出版日誌

連載第274回: トゥーレット a Go Go

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2020.
09.17Thu

トゥーレット a Go Go

言論の自由を奪うためならいまの政治家はなんでもする中小出版社を潰して取次を潤わせる政策にしてもそうだけれどもうこの国で企業の出版物にまともな読書は期待できまいなるほどわたしがKISS の法則を書いた当時の政権は公約を守ったわけだ所属政党にまだあったかもしれない最低限の倫理をぶっ壊自己責任と称して弱者に痛みを押しつけ格差を拡大する当たり前の人権を行きすぎた個人主義と称して是正するこれらは当時実際にそのような言葉で語られたことでなんで痛みを押しつけられる側が拍手喝采したのか理解できずそのことに腹を立ててあの小説を書いたインターネットにしてもソーシャルメディアにしても Amazon にしてもあるいは出版社にしても企業が見せたいものを見せられているにすぎずそして彼らの見せたいものとは権力をもつひとたちにとって都合のいいものであってそれは読書の観点からはつまらないものでしかありえない商売であればそんな表示にすり寄って媚びなければいけないがざまをみろ人格 OverDrive はおもしろいものだけを出版することができる。 「売れなければシステムを疑うべきかもしれないけれどシステムの枠内で暮らしているからには適応するしかないといった意味のことを山崎ナオコーラさんがおっしゃっていてでもわたしは幸いにしてほかに生計手段があるので企業に××××を握られてはいないただ現状 D.I.Y. のサミズダートは AmazonPOD と KDP に頼るしかないのも事実だ最悪でも電子版は WordPress で epub を配布で行けるが POD はどうにもならないなんだかんだ Amazon がいちばん安くて汎用性があり使わざるを得ないtwitter の人権侵害報告などでもそうだけれどあの手の企業は評価経済第一なのでたとえばいやがらせレビューへの対応も味方が大勢いる人気アカウントに対してであればそれなりに動くがわたしのような無名人は無視される加担や助長こそしても救済は決してしない加害者はそれを知っているので無名人に対してはやりたい放題だ評価経済システムを利用した暴力を逃れるためには人目につかぬようにするしかなく人目につかぬ無名人はますます攻撃の対象となりそうした淘汰を企業はむしろ積極的に助けるやれるのはせめてよくない客筋に近づかぬことくらいだ素人のゴミに関連づけられるのは迷惑でしかない。 『本の網は関連付けを改善する試行錯誤のひとつだけれどしかし自分以外の力をコントロールする方法など結局はありえないいずれは Amazon とは関わりを断って自力で販路を見出さねばならないのだろうまだずっと先の話だはてなや twitter といったソーシャルメディアで多くの信者を集めるアカウントが Amazon や note でその人気を換金するその仕組みをわたしは評価経済の換金装置と十年ほど前から呼んでいてでもそうしたマッチポンプ的な循環がいつまでもつづくとは思っていない個人商店を潰したトイザらスやタワーレコードがどうなったか考えてみたまえAmazon もたぶん十五年か保っても二十年以内には凋落するだろう出版について最近もうひとつ気になっているのは印刷業者がセルフパブリッシングを自費出版を小洒落たように見せかけるためのカタカナ語として使い出したことだ疫病でコミケが潰れて稼ぎ口がなくなった一方ZINE やリトルプレスでは手製本のコピー誌のような粗末なものしか期待できず金にならないから元年2010 年以降とりわけ黒船来航2012 年以降に広まったその用語に目をつけて乗っかることにしたのだろう確かに自費出版を英語でいったにすぎないので何もまちがいではないのだけれどそんなことになってしまってはますますその用語は使いにくくなった一緒にされたくないD.I.Y. のサミズダートなる珍妙な語を多用するのはそうした状況が理由だでそのサミズダートについてだけれど柳楽先生はどういう意図か記事ではなくサイトの URL を共有された結果20 アクセスのロスが発生うち 8 アクセスが柳楽先生のプロフィールや記事一覧まで閲覧した記事の閲覧にまで至ったのはフォロワーのほぼ十分の一ほぼ同数のアカウントがいいねやリツイートのアクションを実行フォロワーの十分の一はファンだって説そこそこ説得力あるようだ。 「編集者としての次のアクションはクラウドファンディングで版権料を払って翻訳を個人出版した事例が海外にあるか日本でやるのに何か助言をいただけないか藤井太洋さんに訊いてみることかな⋯⋯と夢想したりもしたけれど最後にお世話になったのは悪魔とドライヴのときもう五年も前のことでいまではまるで接点がないので厚かましいと思ってやめた


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。