トマス・ピンチョン
V.
闇の世界史の随所に現れる謎の女、V.。その謎に取り憑かれた“探求者”ハーバート・ステンシルと、そこらはどうでもよい“木偶の坊”ベニー・プロフェインの二人は出会い、やがて運命の地へと吸い寄せられる…。V.とは誰か?いや、V.とはいったい何なのか?謎がさらなる謎を呼ぶ。手がかり多数、解釈無数、読むものすべてが暗号解読へと駆り立てられる―。天才の登場を告げた記念碑的名作、ついに新訳成る。
重力の虹
世界文学史上に空前の伝説を刻んだ33万語、100万字超の巨篇――新訳成る! 耳をつんざく叫びとともに、V2ロケット爆弾が空を切り裂き飛んでくる。ロンドン、一九四四年。情報局から調査の命を受けたスロースロップ中尉は――。 ピューリッツァー賞が「卑猥」「通読不能」と審査を拒否した超危険作にして、今なお現代文学の最先端に屹立する金字塔がついに新訳。
ブリーディング・エッジ
2001年9月、ITバブル崩壊後のNY。非公認の会計調査師マクシーン・ターナウは、コンピュータセキュリティ会社の財政調査をはじめるなり陰謀に巻き込まれる。アールデコ調のモーターボートを操るヤクの売人、ヒトラーが使ったひげ剃り後ローションに執着する超人的嗅覚の持ち主、靴の趣味が悪いネオリベラリズムのゴリ押し屋、ロシア系マフィアにブロガー、ハッカー、下っ端プログラマーに実業家……そしてもちろん、殺人だ。ディープ・ウェブへ、ロングアイランドへ。内なるユダヤ系の母にチャンネルをあわせ、ピンチョンが読者を連れて行く先にあるものは。正義の鉄槌はさておいて、真犯人は明らかになるのか。マクシーンはハンドバッグから拳銃を抜くのか。夫とよりを戻すのか。貸し借りがゼロになり、運命は清算されるのか……なあ、そんなの誰が知りたがる?
メイスン&ディクスン
世は植民地時代。領地紛争解決のため、天文学者チャールズ・メイスンと測量士にしてアマチュア天文学者のジェレマイア・ディクスンは大地に境界を引くべく新大陸に派遣される。後世にその名を残す境界線、すなわち、のちにアメリカを南部と北部に分けることとなるメイスン‐ディクスン線を引くために―。アメリカの誕生を告げる測量道中膝栗毛の始まり始まり。驚愕と茫然が織りなす、飛躍に満ちた文学の冒険。ノーベル文学賞候補常連の世界的作家の新たな代表作が、名翻訳家の手によりついに邦訳。
スロー・ラーナー
華氏37度で変わらぬ外気、階下では終わらぬパーティ。温室のような部屋でひそやかに暮らす男と女は終末の予感のなかで―鮮烈な結末と強靱な知性がアメリカ文学界に衝撃を与えた名篇「エントロピー」。“革命”を夢見る少年たちの秋を描く、詩情溢れる「シークレット・インテグレーション」、年間最優秀短篇として『O・ヘンリー賞作品集』に収録され、デビュー長篇『V.』の一章へと発展してゆくスパイ小説「アンダー・ザ・ローズ」など、眩いほどの才能に満ちた全五篇、著者唯一の短篇集を新訳。ダメキャラに熱力学、ゴミに機械に帝国主義、スパイ、神話、ポップ・カルチャー…。のちのピンチョン作品の萌芽を見るもよし、一篇たりとも読み逃せない作品群に加え、作家本人による仰天のこき下ろし自作解説、訳者による目から鱗の解説・訳註を収録。
競売ナンバー49の叫び
ある夏の日に突然、かつての恋人から遺産のゆくえを託された若妻エディパは茫然と立ちすくむ。その男こそ、カリフォルニアきっての大富豪だったのだから―。調査に赴く女探偵の前に現れたのはハンサムな顧問弁護士に大量の切手コレクション、いたるところに記された暗号めいた文字列に郵便ラッパのマーク、そして、奇怪にして残酷、暗喩に満ちた古典劇。すべては歴史の裏に潜む巨大な闇を指し示していた…。だが謎は増え、手掛かりは喪われてゆく。果たしてエディパは間に合うのか?そして、彼女に真に託された遺産とは?絶え間ない逸脱と連発されるギャグの数々。にもかかわらず、天才作家は最速のスピードで読者を狂熱へと連れ去る。稠密にして底抜け、痛快にして精緻なる名作が、詳細なガイド「49の手引き」を付して新訳。
ヴァインランド
1984年、夏。別れた妻をいまだ忘れられぬゾイド・ホイーラーは、今年もヴァインランドの町で生活保護目当てに窓ガラスへと突撃する。金もなく、身動きもならず、たゆたうだけの日々。娘のプレーリーはすでに14歳、60年代のあの熱く激しい季節から、どれほど遠くまで来てしまったことか―。だが、日常は過去の亡霊の登場で一変する。昔なじみの麻薬捜査官が示唆したあの闇の男、異様なまでの権能を誇り、かつて妻を、母を、奪い去ったあの男の、再びの蠢動。失われた母を求める少女の、封印された“時”をめぐる旅が始まった。超ポップなのに、この破壊力。作品の真価を示す改訳決定版。
LAヴァイス
目覚めればそこに死体。LAPDの警官の群れ。顔見知りの刑事。んで―おいおいオレが逮捕なの?60年代も終わった直後、街にサーフ・ロックが鳴り響くなか、ロスのラリッ放し私立探偵ドックが巻き込まれた殺人事件。かつて愛した女の面影を胸に、調査を進めるドックが彷徨うは怪しげな土地開発の闇に拉致とドラッグ、洗脳の影。しかも、えーと、“黄金の牙”って?なに?ドックが辿り着いた真実とは―。