終わりの感覚
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終わりの感覚

穏やかな引退生活を送る男のもとに、見知らぬ弁護士から手紙が届く。日記と500ポンドをあなたに遺した女性がいると。記憶をたどるうち、その人が学生時代の恋人ベロニカの母親だったことを思い出す。託されたのは、高校時代の親友でケンブリッジ在学中に自殺したエイドリアンの日記。別れたあとベロニカは、彼の恋人となっていた。だがなぜ、その日記が母親のところに?―ウィットあふれる優美な文章。衝撃的エンディング。記憶と時間をめぐるサスペンスフルな中篇小説。2011年度ブッカー賞受賞作。

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著者:ジュリアン・バーンズ

(1946年1月19日 - )英国の小説家。ポストモダン的と評される作風で、現代英国の代表的作家の一人として活躍している。『終わりの感覚』で2011年のブッカー賞受賞。ダン・カヴァナという筆名でミステリー小説も執筆している。

ジュリアン・バーンズの本
2018.
09.22Sat

終わりの感覚

ブッカー賞といえばピーター・ケアリーやグレアム・スウィフトが思い浮かぶ。読んでまちがいのない傑作、名作ばかりの印象があった。けれどもこれはまったく好みではなかった。ある女性についての物語なのだけれども、そのひとの姿がまるで見えてこない。ひとの人生や人格は結末のわずかなページだけであっさり片づけられるべきものではなかろう。鼻持ちならない気取った小説だと思った。若き日の恋人はたしかに鼻持ちならない女であったろうけれども、そういう女とつきあう主人公も大概だし、知的障害者の扱いにはあきらかに見下した感じがあって生理的になじめない。たしかにきれいごとではすまないだろうけれども、きれいごとではすまない側の人生に立つのが小説というものではないのか。人生のほとんどを社会の規範にのっとってそつなく生きてこられたひとが、そのようには生きられなかった人生に対して、完全に他人事として眉間に皺を寄せてみせるかのような、そんな感触がこの小説にはあった。恋愛小説ではあるだろうし、その気になって読めば推理小説のようでもあるのだけれど、それならもうすこし謎に深みがあってほしい。解き明かすことに何の痛みも切実さもない。関係のない他人からおもしろ半分で家族の弱みを暴かれたかのような気分になる。読んでいるあいだも不愉快だったし後味も悪い。ブッカー賞ねぇ……。


杜 昌彦

(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。硬質な文体と独創的な物語で知られる。作風はアヴァン・ポップ、スリップストリーム、スペキュレイティブ・フィクションに分類される。2010年から別名義で活動。2013年日本電子出版協会(JEPA )主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。

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