セバスチャン・ナイトの真実の生涯
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セバスチャン・ナイトの真実の生涯

1899年ロシアの名門貴族として生まれ、米国に亡命後「ロリータ」で世界的なセンセーションを巻き起こしたナボコフが初めて英語で書いた前衛的小説。早世した小説家で腹違いの兄セバスチャンの伝記を書くために、文学的探偵よろしく生前の兄を知る人々を尋ね歩くうちに、次々と意外な事実が明らかになる。

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ゆめうつつ

読んだ人:杜 昌彦

セバスチャン・ナイトの真実の生涯

眠りが浅くてまともに起きていられない読みながら眠って目覚めたらつづきを読むどこから夢でどこまで実際に読んだのかわからなくなったしかしそもそも本書は何ひとつ現実ではない作り話なのだ小説には言葉のおもしろさと物語のおもしろさがあってどちらに偏ってもつまらないナボコフは前者を志向しつつ後者の手管も巧みに援用するしかもただ用いるのではなくいったんバラして組み上げ直しより遠い場所へ到達するための曲芸的な手段へと変換するノンフィクションと探偵もののジャンル手法を換骨奪胎なんだかわけのわからぬ怪物キメラを生み出すとはいえ前半はいささか言葉の側に偏重して調子が鈍い歴史的大傑作淡い焰を先に読んでしまうと物足りなさは否めない愚作ぼっちの帝国ですらおなじことを娯楽のいち手法としてもっとこなれたかたちでやっている奇妙な人物が続々と現れて物語性に傾く後半から俄然おもしろくなるナボコフ先生はご不満かもしれぬが小説はこうでなくてはならないわたしが気になるのは彼がこの小説を便座の蓋をおろして書いたのかそれともズボンをおろして書いたのかだWikipedia によればかの亡命作家はこの本を便座に座りトランクを机代わりにして書いたそうだ)。 『絶望にも通じる発達障害らしいオチのあと結びに至る文章は意図はわかるのだが文意がよくわからない早くいえば雑だ催して筆を急いだのではないか脱×のために慌てて脱稿したかのような印象がある思えばわれわれ読者には本がどこでどのように書かれたかなど知りようがない百万人が落涙し感動した傑作が案外排×しながら書かれたかもしれないのだちなみにプリズムの刃先では意味が通らないように思う。 『虹めくベゼルあたりが妥当ではないか発達障害特有の着眼と比喩のように感じたLou ReedSome Kind a Loveの有名な一節between thought and expression lies a lifetimeが本書のthe bridging of the abyss lying between expression and thoughtからの引用だとわかったのは収穫だったなぜそのことをだれも言及しないのかわからない

(2020年06月05日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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ウラジーミル・ナボコフ
1899年4月22日 - 1977年7月2日

帝政ロシアで生まれ、欧州と米国で活動した作家・詩人。米国文学史上では亡命文学の代表格の一人。自作の翻訳も手がけ、大小を問わず改作を多く行ったのみならず、その過程で新たに生まれた作品も存在する。