マルタの鷹
SKU: 4150773076

マルタの鷹

私立探偵サム・スペードの事務所を若い女が訪れた。悪い男にひっかかり、駆け落ちした妹を連れ戻して欲しいとの依頼だった。スペードの相棒が相手の男を尾行するが、相棒も男も何者かに射殺されてしまう。女の依頼には何か裏があったのか…。やがて、スペードは黄金の鷹像をめぐる金と欲にまみれた醜い争いに巻き込まれていく―ハンフリー・ボガート主演映画で知られる、ハードボイルド小説の不朽の名作。改訳決定版。

著者:ダシール・ハメット

(1894年5月27日 - 1961年1月10日) 米国のミステリ作家。厳しい客観筆致によるいわゆるハードボイルド文体を確立した代表的な人物である。ピンカートンでの探偵としての経験を生かした描写で知られる。

2017.
09.07Thu

マルタの鷹

終盤の、悪漢が勢揃いして部屋で会話してるだけのシークエンスが、退屈になってもおかしくないのに緊張感があるんですよね。こういうのは実際に犯罪者と渡り合ってたひとでなければ書けない場面だと思います。正しいことをしたはずなのに、それがゆえに地獄に落ちる主人公。だから冒頭であれほどまでに悪魔面だと強調されるんですね。これもまた胸を締めつけられるような、罪の意識を物語に昇華した例だと思います。腑に落ちない文章がひとつだけあって、全編を通して客観描写なのにそこだけ「スペイドは見つけられなかった」とか書かれてるんですよね。ほかの文章では見つけられない様を表情や行動や発言で描写するのに。そこだけ浮いてるんです。あれは謎だったな。フリッツクラフトの寓話も文脈がよく理解できませんでした。その点『ガラスの鍵』は寓意がわかりやすい。うまく表現されていたと思います。ハメットは最初から巧かったわけじゃなくて、仕事として請けながら書き方を憶えていった感じがあるんですよね。実録ものの短編からはじめて、中編に挑戦し、中編を組み合わせて長編を手がけ、長編の書き方を少しずつ学んでいく。前作まではそのプロセスにあって、この本から刈り入れどきという印象です。


杜 昌彦

(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。硬質な文体と独創的な物語で知られる。作風はアヴァン・ポップ、スリップストリーム、スペキュレイティブ・フィクションに分類される。2010年から別名義で活動。2013年日本電子出版協会(JEPA )主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。

似ている本