低地
ISBN: 9784105901103

低地

若くして命を落とした弟。身重の妻と結ばれた兄。過激な革命運動のさなか、両親と身重の妻の眼前、カルカッタの低湿地で射殺された弟。遺された若い妻をアメリカに連れ帰った学究肌の兄。仲睦まじかった兄弟は二十代半ばで生死を分かち、喪失を抱えた男女は、アメリカで新しい家族として歩みだす――。着想から16年、両大陸を舞台に繰り広げられる波乱の家族史。

¥ 2,700
新潮社(ペーパーバック: 2014-08-26)
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著者:ジュンパ・ラヒリ

(1967年7月11日 - )インド系米国人の作家。処女短編集『停電の夜に』でピューリッツァー賞を受賞。長編小説『その名にちなんで』は同名で映画化された。移民の心理と行動の機微を丹念に描く。PENアメリカン・センター副代表。

ジュンパ・ラヒリの本
2017.
12.13Wed

低地

まずこの小説はデニス・ルヘインみたいなノワールとして読んでいいと思う。『その名にちなんで』では女性特有の残酷さ、ひとのいい男に生理的に苛立たせられる気持とか、そういうのが見事に描かれていた。この小説ではその鋭さが、最初はやはりひとのいい男に、それから年を重ねた自分自身に、逃れようもなく向けられていく感じがする。そうして読んでいくと、この本は家族小説でもあり、それ以上に恋愛小説でもあると思えてくる。歳を重ねて変わっていくこと、歳を重ねても変われないことが書かれていて、それが小説なのだと思う。ずいぶん前に読んだのであやしげな記憶だけれども、『その名にちなんで』では語り口に切迫感があった気がする。読んでいて締めつけられるようだった。『低地』にはおおらかな余裕が感じられた。蓄えた力を性急に出し切るのではなく、あえて力を抜いて俯瞰して書かれたような感じがする。基本的にひとつの場面ごとにひとりの視点から語られてゆき、山場の対決においてふたりの視点がせめぎ合うような書き方になる。おそらく意図され計算されたやり方で、成功している。自分でも小説を書くことがあるのでわかるのだけれども、筆力のコントロールに確信がないとこういう書き方はできない。この技巧によって場面は緊迫したものとなり、そうしてまたふっと力を抜いて淡々と、語られるべきことが語られる。男の目から女が描写される。そのようにして物語は静かに幕を下ろす。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的な作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『逆さの月』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。最新恋愛小説『ぼっちの帝国』連載中。
ぼっちの帝国

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