ディケンズなんですよ。 人格障害とマインドコントロールについて書かれてるんです。 医学的にはまったく理解されていなかった時代にディケンズも、 そして孤児ピップの末裔であるフィリップ・マーロウも、 その病態について見抜いていたんです。 チャンドラーは実際かなりディケンズっぽいんですけど、 ユーモアとか人間への洞察とかね、 この本では特にその特質がよくあらわれてます。 村上訳も悪くないです。 旧訳とそれほど違う印象は受けませんでした。 清水訳の時点で昭和も末期、 すでにいまと近い感覚で訳してたんですよね。 『長いお別れ』 の訳業だって評伝での抜粋部分と比較すれば、 清水さんが時代に応じて訳し方を変えてたことがわかります。 新訳版は装幀もいいですね。 村上訳シリーズでいちばん好きです。
ASIN: 4152095067
高い窓
by: レイモンド・チャンドラー
私立探偵フィリップ・マーロウは、裕福な老女エリザベス・マードックから、出奔した義理の娘リンダを探してほしいと依頼された。老女は、亡き夫が遺した貴重な金貨をリンダが持ち逃げしたと固く信じていたが、エリザベスの息子レスリー、秘書のマールの振る舞いにもどこか裏がありそうな気配だ。マーロウは、リンダの女友だちや金貨の所在を尋ねてきた古銭商に当たるところから調査を始める。が、彼の行く手には脅迫と嘘、そして死体が待ち受けていた―『高い窓』の新訳版。
¥2,200
早川書房 2014年, 単行本 348頁
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読んだ人:杜 昌彦
(2017年09月05日)
(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
『高い窓』の次にはこれを読め!