ドーキー古文書
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ドーキー古文書

遁走する言の葉たちの狂想的喜劇! 海辺の町ドーキーでミック・ショーネシィが知りあった科学者にして神学者ド・セルビィは、厭世が昂じて世界破壊計画を企て、大気中の酸素を除去する物質D・M・Pを研究開発していた。嘘か真か、それによって時間を停止させることにも成功したという。一方、ミックは行きつけの酒場で「ジェイムズ・ジョイスが死んだという報道は眉唾物だ」と聞かされる。ダブリン郊外で名前を隠して居酒屋の給仕になっていたジョイスを探し出したミックは、彼をド・セルヴィに会わせようと画策するが……。世界破壊、時間の停止、彼岸との交信、生きていた(?)ジョイスといった奇想に加えて、オブライエン作品ではお馴染みの奇人たちが登場、ほら話とも真面目な議論ともつかぬ会話がくりひろげられる。世界中で愛されたアイルランド文学の異才フラン・オブライエン最後の傑作。


¥1,980
白水社 2019年, 新書 362頁
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著者: フラン・オブライエン

(1911年10月5日-1966年4月1日)アイルランドの作家。長篇第一作『スウィム・トゥー・バーズにて』はベケット、ジョイスらに高く評価されたが、第二作『第三の警官』の原稿は出版社に拒否される。マイルズ・ナ・ゴパリーン名義の新聞コラムで長年にわたって人気を博した。1960年代に『ハードライフ』『ドーキー古文書』を発表。没後『第三の警官』が出版されると、前衛的方法とアイルランド的奇想が結びついた傑作として絶賛を浴びた。

フラン・オブライエンの本
2019.
04.10Wed

ドーキー古文書

禁酒していたのであるしかるにこの小説はしらふで読んでもつまらないおかしな人物が次々に出てきて酔っ払っているからこそ理解できる種類の会話をくりかえす話なのだ友人や見知らぬ他人と腹を抱えてげらげら笑って同じ話題を何周もしてそのたびに爆笑して翌朝ひとりで二日酔いとともに目覚めてみれば何がそんなにおもしろかったのか首をひねる夜ってあるでしょうド・セルビィ博士のご相伴にあずかればたちどころにそのような世界が出現するたとえばとある警官は自転車がなければ格好がつかないとの職業的信念と自転車を漕げば尻とサドルに分子の交換が生じて人間が自転車に乗っ取られるとの妄想とをともに抱えているそして酔っ払ったときの世界が往々にしてそういう理屈で機能するようにこの小説ではどうやらその考えはあながち荒唐無稽でもないらしいめんどくさいやつだなだったらしょうがないという程度の扱いになる時間の流れが乱れて聖人の亡霊があらわれ高尚な神学論議を交わす⋯⋯かと思えばやはり酔っ払いのたわごとだあるいは尊い古文書と酔っ払いのたわごとに差はないのかもしれない中盤まではしらふでつきあおうと努めたがむりだった退屈で数ヶ月放置したクロストーク読了後アイリッシュつながりで再開するや自然と瓶に手が伸びたそれから俄然愉しめたしらふだった前半はもたもた読んでいたのに後半は一気読みだったずるいことにマッド・サイエンティストのセルビィ博士は主人公が彼の妄想を受け入れて世界を救い国民的作家をとっちめた頃にはもっというならこちらが禁酒を破った頃にはしらふに返って物語からあっさり退場してしまうあたかも悪魔の発明品を奪われ銀行の貸金庫によって遮蔽されたことで自分だけ先に酔いから醒めたかのようだそして迎える予想外のまっとうな結末徹頭徹尾現実に生きていたのは主人公の恋人だけで酔っ払いの幻想を共有したかに見えた親友もまた主人公よりは醒めていたセルビィ博士が先週仕込んだ酒は酔い覚めすっきりであるようだちょっと待てよそういう話だったの? それまでのとち狂ったたわごとはどこへ消えたのかこちらはおたくらのために禁酒を破ったのだいまや主人公さえも酔いから醒めて大人になろうとする残されたこちらは腑に落ちない気分で再読を強いられる


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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