忙しい死体
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忙しい死体

ギャングのエンジェルはボスに命令されて、墓に埋葬された仲間の死体を掘り返しに行った。どうやら25万ドル相当のヘロインを身につけたまま埋められたらしいのだ。だが、死体は墓から忽然と消えていた!死体を追って奔走するエンジェルの行く手に、謎の女や警官が立ちはだかる。それぞれの思惑が入り乱れて…。ウェストレイク初訳長編のユーモアミステリ。


¥2,200
論創社 2009年, 単行本 243頁
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あっさり薄味、中途半端

読んだ人:杜 昌彦

忙しい死体

この小説のいいところは短さだわずか二百数十ページの中編であっさり読める不満なのは薄さだ分量よりも味つけのあっさりしすぎて読んだ甲斐がない鬱で小説を読む力が衰えていてもウェストレイクのどたばた喜劇なら読めるだろうと手にとった狙いは当たって一日で読み終えた具も味も養分もない白湯みたいな無色透明の液体をスープですといって出されたようなものだ巻末に付された解説によれば初期のノワールからかれの登録商標みたいな喜劇への作風の転換期に当たる代物らしいいわれてみればなるほどそんな印象プロットはよくある犯罪ものでそこそこおもしろいかれお得意のひねった文体もいつものギャグ満載とまではいかないまでもまぁ笑えるしかしあっさり薄味すぎてつまらなかったのはのちの作品のような活き活きとした個性が登場人物に感じられないのと文体やプロットの巧みさが小手先の技量に留まってそこから先どこへも広がらないからだおもしろさには二種類あって技術としてのおもしろさと味わいとしてのおもしろさ後者のおもしろさは前者がだめでも成立しうるが前者はいくら巧みでも単体では意味をなさない⋯⋯というかおれにとってはつまらない何かのための手段として用いられなければ後者のおもしろさにつながらない片方だけでも成立するし商売としては前者だけで充分むしろ後者がないほうが好まれもするし昨今の日本の出版状況では前者ですらも読む技量を要求されるとして厭われどちらの意味でもつまらないものこそがソーシャルで消費されやすいなじみ感をそなえた商品として、 「わかりやすいと喜ばれたりするのだが⋯⋯しかしおれはもう 47 歳残りわずかな人生でそんなものに時間も労力も使いたくないノワールとしても喜劇としても中途半端で読んで損をしたとまではいわないが文体に似たところがある分だけわが敬愛する作家イシュマエル・ノヴォークの劣化した紛い物を読まされたかのような残念な気持が拭えなかった

(2022年10月24日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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AUTHOR


ドナルド・E・ウェストレイク
1933年7月12日 - 2008年12月31日

米国の作家。著書が100冊を越える犯罪小説の名手。エドガー賞を3度とも違う部門で受賞した。1993年にはアメリカ探偵作家クラブ 巨匠賞も受賞した。

ドナルド・E・ウェストレイクの本

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