D.I.Y.出版日誌

連載第105回: 踊る熊

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2017.
12.29Fri

踊る熊

Tanssiva Karhu は踊る熊を意味するヘルシンキのバンドYouTube に歌ってみた動画を投稿していたヘルシンキの Jenna-Marie LaineDiscogs では Jenna Marie Pietil äと表記ギタリストの Toni Pietil äは夫か兄もしくは弟だろうかという女性をボーカルとして昨年デビュー EP をリリースしたボーカルのほかフルートギターキーボードベースドラムスという編成の六人組フルートのメンバーは YouTube 動画と Discogs とで異なっており五人で映っているアー写もあることからEP 収録時にはフルートのみサポートメンバーでのちに現在の Tin-jay Vuori が加入したと思われる公式 Facebook ページや SoundCloud のプロフィールにはおかしな帽子を被ってくるくる廻るサーカスに囚われた熊ではなく松林で踊る自然の熊とあるポップフォークロックプログレッシヴサイケデリアジャズに分類されるJenna Marie 本人によれば 60 〜 70 年代に触発された音楽とのこと個人的には Stereolab や初期の Autour de Lucie を連想したいわゆる渋谷系の洗礼を受けた世代には1995 年の The Cardigans や Cloudberry Jam をより耳に心地よくポップにした感じといえば伝わるだろうかFacebook ページでは DungenThe ByrdsMamas & the PapasDonovanFairport ConventionPentangleOs MutantesMarcos ValleMikael RamelLinda PerhacsWendy & BonnieFree DesignLiekki をお薦めアーティストとして挙げている

Jenna Marie のことは九年前The Velvet Underground のカバーで初めて知ったこの動画は 35 万回以上も再生され世界中の歌ってみた少女が彼女に倣ってAfter Hoursを歌った以降彼女はヴェルヴェッツのほか PJ Harvey や Elliott Smith のカバーで人気を博す投稿の間隔が長くなり 2012 年を最後に YouTube での活動を休止2013 年に Google+ でオリジナル曲での復帰を示唆二年後に SoundCloud に Tanssiva Karhu のデモ曲が投稿される

翌 2016 年Tanssiva Karhu は待望のデビュー EPKutsu E.P.をリリースFacebook ページもその頃に開設されたようだ今年になって知ったのは Jenna Marie が YouTube にプロモ動画を投稿したからだ大学卒業後結婚し子育てをしていたために音楽活動およびウェブでの活動から遠ざかっていたのではないかと推察されるインスタグラムのプロフィールには Tanssiva Karhu の歌手であり母であり鳥の友でもあると記されている

現時点では YouTube にライヴ動画がいくつか見つかるだけで情報は少ない日本語の情報はおそらくこの記事が唯一だと思われる美しいメロディ耳に心地よい音色や歌声は日本人好みだフルアルバムのリリースが待たれるちなみに金髪にした理由をファンに問われた Jenna Marie はフィンランド人は大抵そうですと答えているかつては黒く染めていたのだ


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。