ありきたりの狂気の物語
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ありきたりの狂気の物語

なぜか酔いどれの私が付添人を務めることになった結婚式のめちゃくちゃな顛末(「禅式結婚式」)。残業だらけの工場を辞め、編集者として再出発した男がやらかした失敗の数々(「馬鹿なキリストども」)。何もかもに見放された空っぽでサイテーな毎日。その一瞬の狂った輝きを切り取った34の物語。伝説的カルト作家による愛と狂気と哀しみに満ちた異色短篇集。

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読んだ人:杜 昌彦

ありきたりの狂気の物語

四半世紀ぶりに読み返したweb ちくまで読んだ巻末エッセイがすごくよかったのでブコウスキーについて書かれた文章で共感できるのは珍しい彼ほど人生と労働に対してくそまじめな人間もいないなかなかわかってくれるひとがいないので嬉しかったブコウスキーとエルモア・レナードとディックとチャンドラーのユーモアはそれぞれスタイルや発露の仕方はちがうけれども似たところがあるピンチョンもだな彼もそうだああいう乾いてとぼけたユーモアをなんと呼ぶのだろうドロシー・ヒーリーってだれだ? と思ってぐぐったらどうやら共産主義活動で有名な女性らしいブコウスキーと会ったときは五十代だったようだ二日酔いでよく憶えてないけど美しい女性だったよというあの書きぶりには活動家に対する敬意の念が感じられたさらにぐぐったらブコウスキー専門のフォーラムを見つけたいいなぁ英語ができたら入り浸るのにとにかくブコウスキーには共感できる性暴力を笑えるネタと信じ込んでいるのを除けばしかし多くの点でおれとはまったく異なるまず労働に対する意識からだがくたくたになるまで働くということを基本的におれはしないというかできない何をどうしたらいいかわからず右往左往するだけだこういう無能を BUK は蔑む蔑まれて当然だと思う結局のところ彼は有能なのだギャンブルはつきつめれば労働だと彼は書いていてまさにそうだとおれも思う浪費してもいい金だけを持って競馬場へ出かけたと何かで読んだ分析し考え投資したのだろう仕事ができるからギャンブルをするおれはしない何をどうしたらいいかわからず右往左往するだけだひとりになりたいと彼は書くおれもつねにそのように感じる彼とは違う理由で無能を蔑まれるのがいやだからだ彼はひとりになれば書けるおれはそうでもない書けるかどうかは自分を OK と思えるかどうかにかかっているそして大抵の時間自分をそのようには思えない無能だからブコウスキーはじつに写真映えのするおっさんでウェブに溢れるどの画像でも優しい目を糸のように細めて笑っているひとが好きだったのだろうなんだかんだいって人間を信じて愛していたのだおれもいつかあんなふうに笑えたらと思う

(2018年03月10日)

(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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チャールズ・ブコウスキー
1920年8月16日 - 1994年3月9日

米国の作家。二歳でドイツから米国へ移住。大学離籍後、さまざまな職業を経て’52年から’70年まで郵便局に勤務しながら創作を続ける。ブラックスパロウ・プレスのジョン・マーティンと出会い、執筆に専念。白血病で亡くなるまで50冊に及ぶ詩集や小説を発表した。