イシュマエル・ノヴォーク

七〇年代にオーバードーズで死んだ架空のロック歌手を巡る、抱腹絶倒、ワチャワチャでハチャメチャなドタバタ劇!

第11話: テキサス州ダラス

上着に袖を通したコッパードは、裸でベッドに寝転がるグウィネズに向かって微笑んだ。枕によりかかるグウィネズの右手には腕時計が巻かれており、もし、彼女の首に黒のリボンが巻かれていたとしたら、エドゥアール・マネの『オランピア』 […]

第12話: アーカンソン州リトルロック

リトルロックのアパートに帰るなり、マーガレットはシャワーも浴びずにソファに寝転がった。考えるべきことはあったが、とめどなく溢れてくるので、静まり返った居間で、無為な、哲学的ですらある時間を過ごした。台所では水気を失った観 […]

第13話: カリフォルニア州ロサンゼルス

ウォルナット材の円形テーブルを囲む者たち。その場を取り仕切るのは、白髪の長い髪をカール・ラガーフェルドのようにポニーテールに結んだ男で、ダークスーツと丸みを帯びた襟が遊び心を感じさせた。この男はロサンゼルスの弁護士であり […]

第14話: カリフォルニア州ブエナパーク

ナイトクラブ〈エクスチェンジズ〉では大音量の明解なビートが流れている。高い天井から吊り下がる鳥籠のような鉄柵の中ではレザー・コルセット姿の、ほとんど裸に近い恰好をした若い女たちが挑発的に踊っている。ニューオーリンズ版謝肉 […]

第15話: アーカンソン州リトルロック

ベッドの上でマーガレットは掌を透かすようにかざし、青白い手を見つめるとため息をついた。ベッドの周辺には菓子パンが入っていたビニール袋が散乱している。三日という間、トイレ以外の目的でベッドから起き上がることはなかった。食事 […]

第16話: サタデー・ナイト・サタナイトショー

一九六一年型のコンバーチブル、リンカーン・コンチネンタルがローザ・パークス・フリーウェイを滑るように走っている。ハンドルを握るのはアフロヘアーにトンボのようなサングラス、ブルース・リー風全身タイツ姿のジョニー・オーロラ。 […]

第17話: 黒いブラックサバス

ライブハウス〈スプロイテーション〉の客席は既に埋まっており、開演時間が遅れていることで客たちは苛立ちはじめていた。楽屋にはアフロヘアーにラメ入りタイツ姿のバンド、〈黒いブラックサバス〉のメンバー。ガンボ・ケンドリックス、 […]

第18話: カリフォルニア州スキッドロウ

マーガレットは快適なベッドで目を覚ました。薄く切られた合成肉がフライパンの上で弾ける音と、ポップアップ型トースターの熱膨張率が異なる二枚の金属板、バイメタルが一定以上の熱量を受けたことでトーストが吐き出される音も聞こえた […]

第19話: ブリテン・ボード・システム

「六九年七月四日の海賊版は聴いたか?」 「そんなのがリリースされたんだ。録音はオーディエンス?」 「ラジオ放送用にスタジオ録音されたものらしい」 「エド・サリバン・ショーの海賊版と勘違いしていないか?」 「サリバン・ショ […]

第20話: カリフォルニア州インペリアル郡 ~ジャック・トレモンド

オネオンタ・アベニューにある、撮影スタジオの壁からは、純白のスクリーンが垂れ下がっている。両袖には四角や八角、円形。大小様々な撮影用ライトが設置されており、ニコン社製一眼レフの前ではケイト・モスに似た全裸の女が両手を腰に […]