イシュマエル・ノヴォーク

七〇年代にオーバードーズで死んだ架空のロック歌手を巡る、抱腹絶倒、ワチャワチャでハチャメチャなドタバタ劇!

第1話: 一九七一年 パリ、ホテル・アンリ四世

「ヒトデは星にちなんで名付けられました。フランス、およびドイツでは『海の星』と呼ばれています。この生物は一見すると柔らかいように見えますが、コブ状、針状の突起が並び、丈夫なつくりになっています。消化管は下面の中央の口から […]

第2話: 二〇〇三年 アーカンソン州リトルロック

ベッドの上でマーガレット・ホットフィールドは寝返りを打った。マルセル・プルーストならば数項引き延ばして読者に知的満足を提供し、編集者に出版社に恥じない出だしであると納得させることができるだろう。あるいは、商業的に失敗の烙 […]

第3話: リトルロック空港

空港のバーラウンジで欠伸を噛み殺したコッパードは飛行機酔い止めのブランデーを飲みながらボーズ社製スピーカーから流れるザ・フーの『ババ・オライリー』に耳を傾けている。ポニーテールの女性バーテンダーと目が合い、彼女が笑顔を浮 […]

第4話: アーカンソン州リトルロック

一六時に仕事を終えたマーガレットはその足でアーカンソン・ステート図書館に滑り込んだ。予算削減の煽りで小型化した、パルテノン神殿のようなエントランスを早足で歩き、CDの棚に辿り着くなりPの列を探しはじめた。ポール・マッカー […]

第5話: カリフォルニア州ロサンゼルス

ロサンゼルス空港に到着したマーガレットは浮足立っていた。少しでも落ち着こうと、かつてした旅行について思い出そうとするが、思い浮かぶようなものは一つもなかった。彼女の片手に持っている旅行鞄には替えの服と、泣く子も黙るDNA […]

第6話: カリフォルニア州サンタモニカ

大陸横断を開始するにはうってつけの場所はどこか? それは州間高速道路一〇号線の最西端、サンタモニカ。  フロリダ州ジャクソンビルまで続く道はヤシ並木ではじまり、おそらく、ヤシ並木で終わる。州間高速道路は物語のように形式的 […]

第7話: カリフォルニア州ビバリーヒルズ

人口三万人ほどにして、郡保安局ではなく独自の警察を組織するビバリーヒルズ。マーガレットはサンタモニカブルーバードからウィルシャーブルーバードまでの五〇〇メートルほどの高級ショッピングストリート、ロデオドライブを歩いている […]

第8話: アリゾナ州エルコ

青と薄茶色で構成された保守的なアリゾナ州のエルコ。人口は五〇〇〇〇以下、人口密度は一キロメートルに一人。ドワイト・アイゼンハワー・ハイウェイで長距離バスを降りたマーガレットは天使のような気分だった。三半規管は乱れ、静止し […]

第9話: 一九七〇年カリフォルニア州ロサンゼルス / ミスター・ジョンソン。死んだよ

教会のように天井が高いリハーサル室では、苛ついた顔のミラーがドラムスティックを冷酷な看守のようにしならせながら「ダグはどこに行った?」と言った。肩を上下させたフーパーがフェンダー社製ギター、ストラトキャスターを伸びた爪で […]

第10話: 私たちは何者か?

記者 オーギュスト・マクルーハン  今年に入って、民間DNA検査会社がどれだけ設立されたか、ご存知だろうか?  DNA検査が捜査機関だけのものという考えは過去のものになった。現在、DNA検査は手軽な価格で可能だ。会社によ […]