Kindle 版初出時に発表された 「みもと ふめい」 氏による書評をご厚意により転載します。 注釈はすべて編集部によります。 (編集部)
お久し振りです、 みもとです。
いや、 なんだかすみません⋯ GeneMapper を読んで感想を書くつもりだったんですが、 生活がばたばたして全然パソコンに触れなかったうえに、 実はついうっかり他の本を読んでしまって⋯
というのもですね、 前の記事でも書いた気がしますが、 どうもわたし、 SF をあまり読みなれていなくて、 最初の数ページでちょっと疲れてしまいふとした拍子で他の本を開いてしまったんです⋯それがこの本、 P の刺激です。
最初に言ってしまうと、 とっても面白かったです。 これがインディーズ (って言うんですかね?) の本なのかというくらい楽しめました。 というよりも、 ここ数年の中でもトップ 3 に入る読書体験でした。
と、 感想、 の前に、 まずなんでこの本を読んでしまったのかを。
わたしは本を読むのが好きで、 いわゆる紙の本をそんなに多くはないけれどちょこちょこ読んでいたんですよ。 けれど、 どうもですね、 こう、 物足りなくなってきてしまって、 ちょっと小説から離れてしまっていたんです。
そんなとき、 インターネットで KDP の存在を知ったんです。 音楽みたいに、 小説にもインディーズがあるんだと。
紙の同人誌やネット小説も含めれば、 そんなのずっと前からあったんでしょうが、 Amazon を通して、 表紙も自分で作る本、 というのに不思議と惹かれました。
最初はあまり知らないままに Kindle 本体を買ってしまったのですが、 どうもスマホでも読めるようで今はもっぱらスマホで読んでいます。 KDP の他にも色々な電子書籍があるようですが、 なんとなくピンとこず、 まだ KDP の本しか読んでいません。
そんななか、 インターネットで面白そうな本を探していると、 どうも頻繁に目にする名前がありました。 それがこの本の作者、 ヘリベマルヲさんでした。
早速 Amazon で作品を調べてみると、 なんとどの作品も 0 円、 無料じゃないですか。 とりあえず試しに一冊、 のつもりが気が付けば全ての本を揃えていました。
最初に手にしたのはこの P の刺激です。 この作者の最初の作品、 ということと、 タイトルがカッコ良かったからです。 (でもちょっと P、 刺激、 だなんて、 なんか別の意味を考えてしまいますよね、 わたしだけでしょうか⋯?)
早速本を開いて、 文字を少しだけ大きくし、 背景をセピアにして読み始めました。 む、 ちょっと読みにくいです。 一文一文が短く、 翻訳文のような雰囲気があります。 どうもリズム合わず、 読み進めるのに時間がかかりました。
ちょっと苦労しながら中盤くらいまできたときでしょうか。 たぶんですが、 文章もなめらかになりわたしも文章のリズムに慣れてきました。 ストーリーが頭にするすると入ってきて、 どんどんと読むスピードがあがってきました。
わたしは、 椎奈が好きでした。 強くて弱くてワガママで愚直で。 わたしにないものをいっぱい持っていました。 丸米も好きです。
後半になると、 わたしはすっかり夢中で読んでいました。 ページを進めるのがもどかしく、 悪夢の景色が極彩色で目の前に広がりました。 惹きつけられ、 引っ張られるような描写です。
読み終えると、 わたしはすぐにこの本が発行された日を確認しました。 いったい、 現実にあったあの日からどれくらいの期間でこれが書かれたのか知りたかったのです。 どこかで見た、 ヘリベマルヲさんが東北に住んでいるという話を思い出しました。
でも、 それとは無関係にこの本は面白かった。 です。 現実がおはなしに侵食される瞬間。 それはどんな読書体験にもないくらいの恐怖と興奮でした。
わたしはたぶん、 いずれこの本を読み返すと思います。 わたしが読み返す本は、 とっても面白かった本だけなのです。
このブログで最初にこの本の感想を書けたことを、 作者のヘリベマルヲさんに感謝します。
みもと