GONZO
by: 杜 昌彦
姫川尊の噂をするとき、わたしたちが浮かべる表情は、決まって揶揄であり蔑みだった……頭のおかしい嘘つきおばさんが語る、ばかばかしくも切実なZ級BLアクション!(2021年作)
姫川尊の噂をするとき、わたしたちが浮かべる表情は、決まって揶揄であり蔑みだった……頭のおかしい嘘つきおばさんが語る、ばかばかしくも切実なZ級BLアクション!(2021年作)
杜昌彦さんの 『GONZO』。
Amazon での本の紹介文には “頭のおかしい嘘つきおばさんが語る、 ばかばかしくも切実な Z 級の BL アクション!” とあり、 面白可笑しい男同士のイチャラブ物語⋯⋯と思いきや、 新興宗教や経済、 政治が絡む人間模様が舞台。
この 7 月に日本で起きた衝撃の出来事1を想起するような設定、 展開は、 著者が 2020 年にこの本を書いていたということに驚かされるほど。
仙台の国分町? らしき街がステージの一つで、 東日本大震災や原発、 コロナ禍当初の混乱やオリパラから派生した数多の不祥事等を読み手に重くグサグサ思い出させつつ西部劇のようなエンタメ感、 という際どいバランスがエグい。
ご自身が運営する独立出版レーベルだからこその忖度ない記載や率直かつ図星な表現は、 小説とはいえこの数年のあらゆる出来事を思い出させながら、 日常で忘れていた自分にも銃口が向いているような、 著者に冷ややかに見透かされている感じ。
タイトルの gonzo は単語としては型破りな、 みたいな意味。 主観的な記述スタイルであるゴンゾー・ジャーナリズムに由来しているそうで、 だから “頭のおかしい嘘つきおばさんが語る” なんだろうけど、 実際は嘘つきおばさんどころか、 誰もが記憶のかなたに揺れ動く曖昧模糊としたものを振り返るときの、 無意識に自分の痛みを回避する心のありようを正直につづっているだけで、 杜さんは本当に、 記憶の底に眠らせておきたいことを、 ぐっさり無邪気に ?! 掘り起こす。
また、 BL とあるけど、 ある種の時代小説に出てくる武士と武士の友情と愛情と憎しみの狭間のような。 著者がツイートしてた 「ドラえもんとのび太の愛憎劇」 が一番ぴったりな紹介文に思えた笑
これまでに読んだことのないような一冊。
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