公共施設での銃乱射事件において武装した民間人の応戦によって解決した事例はほとんどない。 全米の教師を武装させれば業者が潤うので子どもたちの生命よりもそちらを選ぶのだろう。 先日のスクールシューティングでは銃を携行したスクールポリスが常駐していたそうだ。 校舎外から傍観するだけで何もしなかったとして批判されている。 その警官を責められない。 アサルトライフルに短銃で立ち向かうのは不可能だ。 射程距離も威力も違う。 では強力な火器を持っていればよかったのかといえば、 そうではない。 学校のような場所では巻き添えの死傷者を増やすばかりだったろう。
今回使われた AR-15 は M16 自動小銃からフルオート機構を削除した民間版で日本でも猟銃として合法的に利用できる。 レシーバー内の部品構成や配置を変えてフルオート用トリガーブロックを組み込めないようにしてある。 0.223 口径 (5.56mm) で秒速約 3300 フィート (約 1000 メートル)。 一般的なグロックの拳銃に比べ銃口速度は約 3 倍。 有効射程は 1300 フィート (約 400 メートル) 以上で、 グロックの 160 フィート (約 50 メートル) を大幅に上回る。 アメリカ司法省アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局では屋内での使用は禁じられていた。 威力が強すぎるからだ。 標的に命中しても貫通しほかの人間を殺傷する畏れがある。
クリントン時代に攻撃用武器を禁止する連邦法が定められたがブッシュ時代に失効した。 フロリダ州では 18 歳以上で犯罪歴がなければ誰でもすぐに AR-15 を買える。 1989 年に 5 人が死亡、 29 人以上が負傷したカリフォルニア州ストックトンのスクールシューティングでは AK47 が使われた。 この事件によって半自動小銃が民間人にも購入できることが広く知られた。 以降、 AR-15 は民間人によく売れている。 セール品なら五万数千円で買える。 スコープや大きな弾倉、 バンプストックを加えられるので人気がある。 バンプストックは前後に動く構造のストックで、 指を固定し反動を利用することで擬似的にフルオートを実現できる。 連邦法のフルオートの定義は 「トリガーを一回引いて弾が複数発発射される機能」 を指すので規制を逃れられる。 ただしカリフォルニア州法では手動か電動かを問わずバースト射撃を可能にする装置すべてが規制されている。
銃を規制すれば公共施設での無差別殺傷事件が根絶できるとはいいきれない。 現に刀狩りの伝統があるわが国でも類似事件はたびたび起きている。 たとえば歩行者や公共施設に車で突進する手法はおれの街ではじまった。 現在では世界中で模倣されている。 ソーシャルメディアはこうした暴力を助長する。 暴力的な投稿を容認して加害者を事件へ至らせたばかりではなく、 全米ライフル協会の支持者による被害者に対するヘイト行為をも野放しにしている。 スパム対策や嫌がらせ防止のツールで対処すると twitter 社はコメントしているが、 これは何も対策せず、 助長はしても制限はしないという意味だ。 スパム対策や嫌がらせ防止のツールが実質的に機能しないことは広く知られている。 そして彼らはそれきり何も事件について触れていない。
今回の事件では多くの教員が武装案を拒否し、 子どもたちが授業をさぼって抗議行動に参加するのを黙認したという。 そこに希望を感じる。