D.I.Y.出版日誌

連載第104回: 見たいものを見る

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2017.
12.24Sun

見たいものを見る

見たくないものが視界に入るとメンタルに負荷がかかる自宅で寛ぐときくらいは見たいものだけを見ていたいAmazon の調教に手間をかけるのはそれが理由だ。 「興味がありませんよりもおすすめ商品に使わないが優先されるようだ反映に数ヶ月かかった地味な作業の積み重ねがようやく臨界点に達したのかもしれない

特定の本で関連づけの傾向がおかしい。 『アーダ』 『幻影の書には特定の個人の好みが反映されているかのような違和感がある。 『水底の女にはチャンドラーどころか小説の読者ですらないような客層がうかがえるどうしてそうなるのか知りたい

ウェブサービスを使うには他人の都合に合わせねばならない商品ページに裏表紙が表示されていたのでCreateSpace に修正を依頼したら画像を消された前回と同様に著者セントラルから画像をアップロードした一時間と経たずに反映されたCreateSpace に任せていたらいつまでたっても消えたままだったおすすめの調教にしてもそうだけれどもこうしたノウハウは自分にしかニーズがないのだろうか

過去の自分の活動をふりかえる昨年まではことさら露悪的にふるまうことに関心があったようだ健常者のようにふるまえない自覚をもとに行動を律すべきだった他者とは極力かかわらず他人の目に触れずに楽しみを追求するのがよいこのサイトを構築するまではウェブサービスを利用するしかなかった健常者の世界に闖入するのは双方にとって不幸でしかない

胸の悪くなるような人生しか知らずそのことに怒っていたおなじ経験をしたひとの役に立ちたかったそれは無意味だったし過ぎ去った自分の欠陥だけに向き合えばよくなった謎解きやアクションのようなジャンル的な作法にも関心がなくなった語られる物語もなるべく穏やかなものがいいひととひととの関わりで生じる出来事について淡々と語るのがいい

また書けるようになりたいとの気持はあるまともな読み物を書けるようになりたいともそのための訓練をしたいとも思うでも若い頃のような切実さは薄れた何もしたくないしだれともかかわりたくないいまはただ自分を消し去りたい


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。