杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第105回: 浅い眠りのあいだに

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2017.
12.23Sat

浅い眠りのあいだに

三ヶ月かけた仕事が惜しくて過去に書いた短編を読み返した。もっとも出来がよいと信じていたものでさえゴミ以下だった。知能に障害のある人間が書いたことがわかる。『黒い渦』を短編集に収めるのは諦めた。不条理なまでの無能でどの職場でも厄介者扱いされてきた。それでも小説は書けると信じて支えにしてきた。精神障害による認知の歪みだった。

『KISSの法則』ペイパーバック版の商品画像がまた裏表紙になった。Amazon側でなんらかの更新がかかると設定が初期化される。そのたびに問い合わせた。PC操作の苦手な老人だと思われ、担当者がシニアサポートを名乗るようになった。Look Inside! を無効にすれば直る、と事実と異なる説明をされた。嘘と知りつつそれでお願いしますと頼んだ。結果がこれだ。今回の起因はわからない。

無効化を頼まなかった『Pの刺激』は表紙が一応表示されている。一応、というのは画像に塗り足しが含まれるからだ。google翻訳では話が通じず、裁ち落としや塗り足しについて説明する定型文しか返ってこない。グループ企業ではあっても別会社なので、Amazonとの連携で何が起きるかはCreateSpaceにもわからないようだ。『悪魔とドライヴ』の商品画像にも当初は塗り足しが含まれていた。いつのまにかしれっと直っていた。

今年はお薦めの精度について考える機会が多かった。YouTubeのお薦めは利用者それぞれに最適化されている。検索や再生の履歴から利用者の好みを把握しているからだ。好みを教えて調教する仕組みも整っている。あるいはgoogle検索の履歴とも連動しているのかもしれない。一方Amazonは利用者それぞれの好みを重視しない。他人が何を買っているかで個人の好みが決まるかのように取り違えている。加えて自分たちが売りたいものだけを見せることで購買行動を都合よく管理しようとする。

ブックパスやBookLive! では薦められた漫画を素直に購入している。自動的な関連づけではなく人間(おそらく版元か取次)が推したものだ。電子書店は漫画においては(Amazon以外では)出逢いの場として機能している。おかげで20代後半からひさしく関心のなかった漫画を大量に読むようになった。一方、小説はどのストアでも関心のない本しか表示されない。好みを教えてやっても反映されない。

ストアのお薦めには期待していない。Facebookで版元をフォローしていればある程度の情報は得られる。週に一冊が今年の抱負だった。二週間に一冊がせいぜいだった。しかしサイトを整備したおかげで読書を楽しめた。思い出深い出逢いがたくさんあった。書くほうはまるでだめだったが小説は読むものだ。書くものではない。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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