杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第103回: 忘れる

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2017.
12.17Sun

忘れる

『黒い渦』の改稿が終わった。知的障害を痛感した。せいぜい努力して直したがそれでも知能の低さは隠せない。書き直す前はさらに精神障害が色濃く出ていた。物事の捉え方や考え方の道筋が支離滅裂で、それが文章にも表れていた。そんなものを人前に出してあまつさえ金まで取っていたのだから厚顔無恥もいいところだ。文章さえ直せばいけると錯覚していた。精神疾患による混乱した文章を整理して、読めるようにしたら出版価値がなかった。1999年の初稿では600枚から700枚はあったのに最終稿では179枚になった。中編ですらない。書いた当時は技巧的には最高傑作だと思い込んでいた。技巧ではなくゴミを詰め込んだだけだった。

まったく無意味な作業だったとまでは思わない。どれだけ価値も才能もなかったか振り返る意義はあった。でも、それだけだ。自分を金星人と思い込んだようなものだ。健常者のやることがひとつもできないのに小説など書けるわけがない。才能以前に人間として機能していない。職場に恵まれたおかげでどうにか日々ごまかせているだけだ。さっさとアップロードして忘れるか、わざわざ恥を晒すまでもなくお蔵入りか。三ヶ月かけた仕事だからとの気持も棄てきれずに迷っている。具体的な改善法さえわかれば直したいとも思うが、救う手立てなどない事実もわかっている。何よりこれ以上この気詰まりなゴミに関わりたくない。

自主出版では最低限の常識として、プロの出版物と同等かそれ以上の品質が求められる。商業出版と異なり一作に時間をかけることが許されるからだ(頻繁な刊行を重視するのならわざわざ自主出版でやる意味はない。即時性、速報性を求めるのは小説の仕事ではない)。加えて商業出版には適さないような独創性がなければならない(下手くそであることやウェブでネタとして消費されることは独創性ではない。ここを履き違えるのは本の価値を貶めることにつながる)。これらの条件を満たさない本は読者にとって迷惑でしかない。Kindle Unlimitedを解約したのはゴミばかり目につくからだ。その状況に荷担していた事実が悔やまれる。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
ぼっち広告