D.I.Y.出版日誌

連載第94回: ささやかな日常の営み

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2017.
11.15Wed

ささやかな日常の営み

二回目の注文が届いた初回購入時Pの刺激の表紙に見られた印刷ズレは解消されていたCreateSpace では本文がいつも上のほうにズレて印刷されるが Amazon ではそのようなことはほぼない表紙がズレるのは初めてだった装幀の完成度は悪魔とドライヴが一番いいくみた柑さんの美しい装画のおかげだ。 『Pの刺激』 『KISS の法則はとりあえずペイパーバックにしてみましたといった程度の出来自己満足ならそれで充分だ

KISSの書影は著者セントラルからアップロードした PNG 画像に置き換えられたようだCreateSpace 側が手配したものではないそう判断する根拠はふたつ彼らが送信した画像には塗り足しが含まれていた著者セントラルから審理中の文字が消えた対応していない PNG がなぜ受け付けられたのかはわからない

おそらく日付が変わったタイミングかと思うが在庫数が 7 冊になった。 『Pの刺激もだ少しずつ増えている。 『悪魔とドライヴのときにはそのような動きはなかったおそらく出版と同時に購入配送と同時に二度目の購入をしたからだろういますぐ三度目の購入をすればさらに在庫が増えそうな気もするけれども国会図書館納入用と記念用の二冊でとりあえず充分だ読んでくれるひとがいればもう一冊買い足す名刺のように配れるのがオンデマンド最大の利点だCreateSpace なら価格も一冊あたり千円前後で済む

このところ日付が変わって Facebook の過去投稿が更新されるのを毎日楽しみにしている過去のおなじ日に何を考えていたのか知れるからだ三年前のきょうはいまの人格 OverDrive を予言していた逆の言い方をすればずっと考えていたことを三年間で実現したのだ口先ばかりの人間でなかったことを確かめられた口先だけにとどめておけばつまらない恨みを買わずに済んだかもしれないが⋯⋯全文引用する

本をつくったら epub を放り込むかもしくは amazon の該当ページを登録するだけでランディングページが生成されるようなツールはないのかおなじツールで facebook 的な UI の流れる画面と書く画面がおなじになってるブログツールがあって過去の投稿は分類されなくていい押し流されていくだけでいい検索の必要もないそのとき思いついたことを書き留めておく個人的な掲示板というかメモ帳みたいなfacebook にノートがあるようにそのブログツールには本があるなんでそんなあたりまえのものがいまはまだないんだろうすごく不便だインターネットもあるし本もある時代なのにそういう時代で書く習慣があるひとは当然そういう道具が日常になければ困るのに

なんかウェブサービスにかかわってるひとたちっていうかIT 的なスキルあるひとたちはブログとか本とかが特別なものだと思ってるんじゃないのかなぁもっと日常的なささやかな営みに属するものであっていいのに承認欲求とかが絡んでこないと金にならないからなのかなほんとに便利な生理的になじむ道具があったら月額一万とか払ったっていいのに一万は高いかでも払うよ

ほんと個人的でささやかな日常の営みなんだよ書くことはで本だってその延長にあるウェブも電子書籍もなかった時代はどうだったか知らんけどすくなくともいまはなんかまだ特別なものとしてしか存在してないみたいな扱われようなんだよなぁ実際はもうそうじゃなくなってるのに生理的な膚で感じる感覚としては

求めるものとはちがうけどパブーあれブログエディタ的な部分と閲覧部分はああいう中途半端なんだったらいらないんじゃないかなぁコミュニティ的な部分と本棚だけでいいんじゃないかそんでそれとは別に著者近況が気軽にアップできて閲覧できるような流れる掲示板があるといいあれは電子書籍サービスというより手作り本のコミュニティみたいな質感だからそっちのほうが向いてる気がする

とりあえず現状は facebook を本来とちがう使い方で運用していくしかないのかなぁでもまちがった使い方なのでこのままだと他人に迷惑かけるし個人のサイトでやらなきゃだめなんだよな

現在このサイトでは書影をアイキャッチにASIN をカスタムフィールドに紹介文を要約文に指定すれば自動的に本の紹介ページが生成される当然ランディングページとしても利用できるタグを指定すれば特集ページも自動生成されるPriPre というプラグインを使えば理論的には単行本化も容易だtwitter のようなタイムラインを備えているので他人を招き入れれば編集に必要なやりとりもできるその気になれば管理画面を触らせずに投稿する画面も用意できるそれらを使えばこんな使い方が実現可能だ著者であり読者でもあるひとたちを集めて本の紹介記事を投稿してもらいアクティヴィティで編集会議をし記事が溜まれば PriPre で単行本化する⋯⋯一連の流れをすべてサイト上でノンストップでやれるのだ

というわけで PriPre を試した結果は微妙epub にエラーが多すぎて修正のしようがない必要に応じて投稿日時を表記させたいがそのためのオプションがない並び順はドラッグアンドドロップで直せるが記事数が多いと困難になる縦中横がうまく動作しなかったがこれは設定もしくはビューワの問題だろう結論として用途はかなり限定される本の紹介記事や連載小説ならどうにかなりそうだが通常のブログ記事では使いものにならない単行本で読ませることを前提としPriPre の癖のようなものに合わせた編集をした上で投稿しなければならないからだ

ひらかれたブログとパッケージされた本では発想も見せ方も別物だ媒体にあわせて編集しなければならないのは当然といえる広く大勢に開放するのであればどのみち投稿ルールを厳格に定めなければならないのでアリだがひとりで運営するサイト特に人格 OverDrive の用途には適さないHagoromo で epub にし目次のエラーを手作業で修正したほうがいい

Kindle 化される本も少しずつ増えてきたしAmazon が見せたがる景色を無視さえすれば三年前に夢想したような個人的な営みにはそれほど影響がない読みたいように読み書きたいように書くだけだこれまでもこれからも


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。