D.I.Y.出版日誌

連載第3回: 真夜中のパレード

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2014.
12.18Thu

真夜中のパレード

そもそも他人に読まれるようなものは書いていない本にまとめたらだれでも自由に持っていけるようにしてあとは知らんって感じにしたい商品として人前に出すとどうしても無能を意識させられる金というのは絶対的な基準であり優劣をまざまざと見せつけられるからだ価値がない事実は知っているけれどわざわざ意識したくない売りさえしなければだれがどれだけ持って行ったかわからないようにしてさえおけば読まれようが読まれまいが気にならない

執筆や出版もまた社会スキルを競う場だSNS で媚を売りまくり無料キャンペーンでランキングの露出を高めればいいと同時にリアルの会合にも抜け目なく顔を出し名刺を配りまくり媚と顔を売る商売という土俵に本を出すならばそうすべきだとわかってはいるけれどやりたくないし能力もない他人と能力を較べられる行為は向いてないのだ己の無価値は痛いほど知っているすぐばれる嘘もつきたくないむしろ商売ならずともどんな土俵にも立ちたくないSNS もしかり社会スキルがはかられる場なんてまっぴらごめんだ

どれだけのことができるのか自分に証明するために書いている他人との比較や社会における価値の話ではない自分がどれだけマシになれるか何ひとつまっとうにやれない人間にどれだけのことがやれるのかただ知りたいだけなのださまざまな場所で何度も説明してきたのだけれど伝わったためしがない自己満足や承認欲求の話にすり替えられてしまう健常者には理解できないのだただ普通に生きてさえいればなんでもまっとうにやれてしまうからそうした輝かしいひとたちが視界に入ってくるのはつらい社会スキルのなさが自己肯定感を低下させ書く元気を奪うのであれば他人と関わらないことだ読まれようが読まれまいが知ったことではないそんなことは副次的な結果でしかないまずはいいものを書くことだ

まわりを気にせず書いていきたい


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。