杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第92回: 手懐ける

書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2017.
11.08Wed

手懐ける

Facebook は友達はいません機能を実装してくれないものかケニアの中学生に知り合いはいないと何度言えばわかってくれるのだろう何がトリガーとなったのか見当もつかないちゃんと居住地域も年齢も設定しているはずなのにかつて友達に設定していただれかがナイロビに引っ越したのだろうかとも考えたがそれでは中学生が表示される理由にはならないケニアで十代に人気のバンドを知らずにフォローしたのかもしれない

Spotify でお薦めされて気に入るたびに国籍なんていちいち気にせず Facebookページをフォローしているロシアのシューゲイズバンドやブラジルのボサノバメタルバンドをフォローしたらバンドメンバーから友達申請がきた海外では見知らぬ他人でも割と気軽に申請したり許可したりするらしいおれは外国語ができないし社会的能力に欠陥があるので無視したけれどもふつうはそのようにして世界中に交流の網を広げるのかもしれない

youtube や Spotify ではお薦めの精度が高いのに Amazon のアルゴリズムは糞すぎてゴミばかり表示される対処法がようやく見えてきたyoutube では気に入らない音楽の再生を途中でとめたり表示されても消したり好まない理由を教えたりしていたそのようにして知らず知らずのうちに調教していたのだ一切手を入れなければ youtube だって糞みたいな表示をするたまにシークレットモードで閲覧するとワイドショーの芸能人ゴシップやら芸人気どりの若者がくだらないことをやる動画やらが表示されて驚かされる

Amazon でこれまでやっていたのはふたつだけだった閲覧をお薦めに反映させないようにすること購入品をお薦めに反映するチェックを外す反映させたい購入品だけチェックを入れること実はもうひとつあったお薦め商品のジャンルで kindle ストアを選び表示されるものをひたすら興味がありませんにチェックしていくのだこの Kindle のお薦めがことさら精度が悪いそもそも Kindle 化されるコンテンツが少ないので最近ようやく増えてきてはいるが⋯⋯)、 偏った商品がベストセラーのランキングにあがる彼らはその偏ったランキングから適当に選り抜いた本をこちらの好みを無視してお薦めしてくるのだ

ちまちまと手を入れるうちさらにすごいことに気づいたお薦めされる本をひたすら関心がないにしていくと表示される本が変わるのではなくただ減っていく関連づけの情報がまだ充分に蓄積されていないのだあるいは単にまだ Kindle で読んだ本が少ないせいかもしれない少ない理由は読みたい本が Kindle 化されなかったりされたとしても印刷版よりずっと遅れたりするからだ

以前、 『Pの刺激ペイパーバック版を三冊と海外文学を五冊ほど同時に購入したが関連づけはされなかったおそらく関連づけられるための購入数が決まっているのだと思われる現在の Kindle ユーザの購買行動にはその閾値が高すぎるのではないかそのためランキングに表示される本だけで関連づけが循環しその外側にある本はひたすら疎外されていくアルゴリズムというよりチューニングが糞なのかもしれない普及率の低さを考慮に入れた閾値の調整をしていない可能性がある

上記三つの対処をしてゴミを見る機会はぐっと減るだろうと安堵していたそうは問屋が卸さないとばかりゴミばかり薦めるメールが届いた自著のペイパーバック版をおすすめ商品に反映しないにチェックしていなかったからかもしれないだとしたらペイパーバック版もすでにゴミと関連づけられていることになるし関連づけの論理も売れ行きとは関わりがないことになる自分で一冊ずつ買っただけだからだ

ゴミといえば改稿中の黒い渦があまりにひどいやはりこの時期2006年はほんとうに精神病だったのではないか三人の医師から精神病でも人格障害でもないという診断をもらっているがどうにかこうにか精神科に行く気力が湧いたときには自然治癒していたのかもしれない。 『Pの刺激の次がこれではなるほど作家になれなかったわけだここまで手をつけたからには最後までやり遂げたいとはいえ自著として胸を張って表に出せる代物ではない既刊三作と並べるのには抵抗があるストアのゴミに文句を言いながら自分でゴミを増やすようでは話にならない

Pの刺激KISS の法則はペイパーバック化にあたり数カ所に手を入れている。 『悪魔とドライヴは改稿版が仕上がった登場人物の名前を変えヒロインが教師に執着するきっかけの事件を追加し伏線を増やすなどしてミステリとしての構造を強化した要望の多かったカルトの詳細な描写は加えなかった主題が不明瞭になるからだまた劇場テロ事件の描写が増えたことでカルトの描写が不足している印象はなくなったプロットは変わらないが別の小説になったといって差し支えないそれだけ書き足していながら 400 字詰原稿用紙換算では十枚減っている改行を減らしたからだ公開中のバージョンでは本を読み慣れていない読者を想定して意図的に改行を多くしていたページ数が変わるような改版はできないので扱いを決めかねている

書影の不具合はいまだ解決しない。 「あんたのいうことは嘘じゃないかでも Look Inside! は要らんから無効にしてくれと言ったら、 「あなたの言うことがわかりましたと返事が来たけれども前半は完全に無視されていた確かに Look Inside! はただちに無効にされたが案の定書影は裏表紙のままおそらく現時点で問い合わせても二日待てといわれるだけだろうほんとに伝わってるのかなぁ⋯⋯


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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