杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第82回: シンプルに刷る

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2017.
10.13Fri

シンプルに刷る

CreateSpaceはあっさり承認が下りた。ノウハウが蓄積され試行錯誤しなくても最小の手間でやれるようになった。ストアに出す前にメールで書影の修正を依頼した。これまではストアに並んでから依頼していた。今回のやり方がうまくいくようなら次の本からはルーチン化できる。まずインデザでPDFをつくる。CS謹製のツールにページ数を入力して表紙のテンプレートを得る。テンプレートに表紙画像をはりつける。裏表紙には英語タイトルとバーコード用の白い余白をつける。垂直反転画像を上下に、水平反転画像を左に塗り足しとして加える。表紙PNGをウェブの無料ツールでPDF変換し、アップロード。版下が承認されたら問合せフォームから書影修正の依頼をかける、という手順だ。

ほんとうはこの手法で他人の本を出したかった。おれのISBNを使うので発行元が人格OverDriveになることを了承してもらい、印税不要ならおれがアップロード、必要なら(海外口座は必要になるけれども)PDFの版下だけ提供というやり方を考えていた。その編集作業をアクティヴィティ上で行う予定だった。その過程は公開もできるし内輪だけに見せるようにもできる。手がけたい本がいくつかあった。どの著者にも話していない。話す前にいやがらせが激化し、巻き込むのを防ぐためにはすべてを諦めねばならなかった。その後おれに悪意をもつ連中とだれもが親しくしているのを見て、目が覚めた。やはり自分ひとりでやるのが性に合っている。

朝起きて身支度して出社なり登校なりしようとしたら、頭のおかしい輩が群がってきて「おまえが外出するせいでみんなが迷惑する」とギャアギャアわめかれて殴る蹴るの暴行をされて、携帯を取り上げられて友だちにまで厭がらせをされそうになって、ごく当たり前の一日を断念せざるを得なくなったとする。だれだって「勘弁してくれ」と思うはずだ。まちがっていることをまちがっていると書くのは恨み言とはいわない。それはただの指摘だ。ただの指摘を恨み言と揶揄されるようでは何も書けない。

この国の「セルフパブリッシング」はゴミで交流や世渡りをする遊びだった。そういうものとは縁がないし関わりたくもない。いまおれがやっているのはただの自費出版だ。読みたいといってくれる知人に手渡すためと自己満足のためにやっている。ゴミで交流や世渡りをするなんてまっぴらだし黙らされるのもごめんだ。読んで書いて出版したいだけだ。

『Pの刺激』旧版を出すのに使ったサービスから「出版後に改修できるオプションを追加しました」というメールが届いた。「有料オプションとして出版後の改修申請(5000円+税)を追加しました」だそうだ。このタイミングでかよ……と溜息が漏れたが絶版にする意思は変わらない。Amazon PODを外部企業が利用するのにいちいち金がかかるのは確かにしょうがない。しょうがないからといって、じゃあ使うかとはならない。利点は商品ページに日本語が使えるだけ、実際にはそれすら怪しいと判明したいまでは使う理由はない。それにペイパーバックにするなら四六版はありえない。5×8インチは思ったよりよかった。手に馴染むサイズだし、あえてカバーなしを選んだかのように見栄えがする。KDPの表紙を使いまわせるのもいい。

作業フローは極力、単純にしたほうがいい。以前は電子版の複数ストア配信に業者をかませて失敗した。版を改めるのにも何をするにもいちいち手間と時間がかかりすぎる。印刷版の出版はそれより悪い。迷惑をかける上に思うように出版できない。本来やれるはずのこととの差を埋めるために金がかかりすぎるし、金をかけても差は埋まらないばかりか「厄介な客」になってしまう。CreateSpaceは無料だし使いやすいし自動化されているので気兼ねが要らない。そして何より楽しい。それだけだ。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
ぼっち広告