気分が上がるものだけを選ぶのが正解だとわかった。 上がらないものは全力で避ける。 『Pの刺激』 ペイパーバック版の出来に不満があった。 そんなものが書店に並んでいることを思うだけで気が滅入る。 そもそも出版からして楽しめなかった。 悩んだが絶版にして CreateSpace で出し直すことにした。 前回は丸ひと月かかった作業がたった一日で完了し、 現在は評価待ちだ。 『ガラスの泡』 を併録し、 なおかつ取り分を上乗せしても 1300 円程度に抑えられた。 某社の POD サービスでは取り分ゼロで 1728 円。 CreateSpace は無料で手軽で何度でもやりなおせるし、 何より使っていて楽しい。 気分が上がる。 某サービスがいかに自分に向かなかったか実感できた。 無駄金もかなり突っ込んだし、 精神的にも疲労させられた。 日記をふりかえってみても急にテンションやモチベーションが失速したのがわかる。
あのサービスでは出版に必要な最低限の作業をするために、 何をするにもサポートに頭を下げてイレギュラー対応をお願いしなければならなかった。 些細な作業もいちいち代行してもらわねばならず、 迷惑をかけることに負い目を感じた。 やりたい修正を思ったようにやれず、 残念な結果に終わった。 有料の表紙作成支援と称するものはオンラインの無料サービスでやれるような単なる PDF 変換だった。 自前の ISBN を使うだけで二千円をとられた上に、 苦情をいわなければそのサービスの銘柄で出版社表記がされるところだった。 商品ページに日本語が使えることだけが取り柄なのに、 それすらままならないのでは話にならない。 Amazon POD のシステムなどさまざまな制約があるのはわかる。 しかし 「思ったように出版する」 というニーズが満たされなかったのも事実。 そういうサービスではないということだろう。
『悪魔とドライヴ』 のときは Amazon 以外でも売ることを考えていて、 むりやり JAN コードを載せたりしたけれど、 どのみちそんな面倒なことは実行しないことがわかったので、 今回は ISBN だけを表紙に記載することにした。 失敗から学ぶことは多い。 CreateSpace と Amazon POD の違いも学習できたし、 それなりに得るものはあった。 何より表紙の歪みに気づけたのがよかった。 正確にいえば歪んでいるのは知っていたが、 四六版のペイパーバックを実際に手にするまで気にしていなかった。 実物は画面で見るよりも絵の下手さが際立つ。 今回の再出版でようやく人前に出せる本がつくれそうだ。 『悪魔とドライヴ』 も二度ペイパーバック版をつくっている。 何事も最初からうまくはやれない。 可能であれば年内に 『KISS の法則』 もペイパーバックにしたいと考えている。
だれにも期待されずに書き、 編集し、 出版している。 地道な作業で得るものは少ないが、 自分にとってよいことだと信じている。 吉野寿さん (イースタンユース) のインタビュー記事を読んで、 人格 OverDrive がやっていることと似ていると感じた。 何もないところから音楽をつくり、 演奏を録音して編集し、 プレスし、 受注して梱包し出荷する。 公演や巡業を企画する。 そうしたすべてをアーティストが責任を負って主体的に行う。 音楽の世界ではすでにそれが当然になりつつある (あるいは本来がそのようなものだった)。 出版もまたこれからは同様だろう。