D.I.Y.出版日誌

連載第74回: 大人買い

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2017.
09.20Wed

大人買い

枕元には獅子文六2冊とブコウスキーの復刊本とジュンパ・ラヒリとピンチョンとロベルト・ボラーニョが積まれているiPhone にはテジュ・コールオープン・シティも待っている新潮クレスト・ブックスを kindle で読めるなんていい時代だやはり書くより読むほうが性に合っている読んで書評を書くとか何か高尚な読み方をするとかではなく単に読んで楽しむだけだそれもたいした読書量ではない出版もできあがった本の不様さを見れば読む側の人間であることはあきらかだJAZZ は好きだが演奏しようとは思わないそういうことだ

山のように本を積んだのはこの商品を買った人はの表示をコントロールするためだほしかった数々の本を出版した本と同時に買った買う人間がほかにいなければ関連づけられるはずだと考えたそううまくはいかなかったたったひとりでは表示に影響を及ぼせないあるいは著者だからなのか今回の出版体験は最悪だったできあがった本も装画がひどすぎて二度と見たくない描いた自分が悪いのだがサポートに気兼ねして修正できなかったせいもあるあのサービスをまた利用したいとはどうしても思えないインスタントストアが死んだいまでは CreateSpace の利用価値も半減したあと一冊だけ出すつもりではいるが意欲は失せた

KDP Print は日本語のドキュメントが整備されつつあるco.jp では利用できないと明記されているのでどの言語でもヘルプページを統一しているだけなのだろうどっちに転んでもいいように準備だけはしている印象もある外部の業者にやらせてみて商売になるかどうか様子を見ているのかもしれないなると判断されたら業者は容赦なく切られるだろうKDP Print も CreateSpace 同様に flash ベースだとそれらのドキュメントで知ったてっきり BCCKS のように HTML5 で書き直されるのだと思っていたBCCKS も当初は flash で開発されていた)。 flash のままであれば日本語対応は難しいだろうcom で日本語の書籍をつくるわけにはいくまいかとも考えた日本のサポートに問い合わせて断られた記憶があるやはり現実味は薄い

屋号で検索すると凍結した FB ページがトップに表示される不愉快なので再公開した筆名も今後それで何かを書くつもりはないがサイト上の表記は復活させた獅子文六信子にでてきた看板の話に納得したせいもある泥を塗られてはいても看板に違いはないISBN を取得して紙の本を二冊も出したからにはこれでやっていくもっとも趣味の茶室に何々庵などとそれらしい名を掲げたようなものにすぎない厭がらせをされてまでやるようなことではない厄介な連中に目をつけられたのは不運だったが身の程をわきまえず派手にやりすぎた反省はある

取るに足りない無名人に対して活動停止に追い込むまで偏執的に厭がらせをするのはなぜか自主出版のようなささやかな活動にも利権があるのかもしれないAmazon などのサービスが利用されるからには実際に金は動いている金が動けばおこぼれにあずかろうとする人間も集まる集まったひとびとは特権を得たように感じ都合よくユーザを管理したがるだろう思惑から逸脱するユーザはわがままとして罰せられるそうすることで彼らは力を及ぼし自己愛を強化する

この国でほんとうに自主出版をやろうとしたら人目につかぬよう隠れねばならない知人に見てもらうために Amazon を利用したり Google 検索で見つけやすくしたりするのは避けられないがそれさえなければ独自サイトのみでの販売や検索避けを行うべきだましてソーシャルメディアはみずから進んで悪意の標的になるようなものだつまらない連中をまともに相手にしたところで心身を消耗させられ同次元に堕ちるだけだやりたいのは政治ではない読むのが私的な内省の行為であるからには出版もまたそうあるべきだ


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。

コメントは受け付けていません。