妄想中年日記

連載第69回: 白いページから

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2017.
09.09Sat

白いページから

親友と定例会。彼がいてくれてよかった。これまでの人生で最良だったのは89年。友人がいて夢があって好きなことをやっていた。いまは当時をうわまわっているかもしれない。安定した生活があり、好きな本や音楽や映画を好きなだけ愉しめる。月イチで飲む親友がいるし、職場でも、おれがひどい目に遭ったら怒ってくれるひとたちがいる。こんな幸せはそうそうない。これがもしもすぐに過ぎ去る瞬間だったとしても、そんな時期があったというだけで、最良の人生だったと断言できる。2017年、おれは幸せだった。墓石に刻んでもらいたいくらいだ。

二日間で旧サイトの倍以上のコンテンツをつくった。省力化の仕組みは思った以上に効果があった。技術的にどんなことを成し遂げたのかはおれしか知らない。過去の自分に教えてあげたい。機械音痴のおまえでも、努力すればこれだけのことがやれるんだって。WordPressってすげえなぁ。まったくの素人でも調べれば思い通りのサイトをつくれる。創設者は「出版の民主化」をめざしているそうだけれども、まさにその通りのツールだ。こういうお遊びがやれるのは生活が安定しているからで、生活の安定は職場のひとたちのおかげだ。

読書記録と日記のサイトで、膨大なコンテンツには見向きもせずにアクティヴィティだけ見ていくやつがいる。悪気があるにせよないにせよ、「あいつまだやってるってよ」といいふらし、輩的な連中を誘導するやつがいるからだ。鵜の目鷹の目で落ち度を探すため、貶めるために熱心に通ってきてるんだろう。ご苦労なことだ。ご希望通り、書くのはやめてさしあげた。人生は有限だよ。もっと意味のあることにお使いなさい。おれはもう別の生活に入っている。あなたはいつまでそこにいるんですか。

小説はやっぱ読むもんだね。書くものじゃないよ。小説を書くのは他人か自分を癒やすためだ。単に書くだけなら生まれつきの性分で呼吸みたいなものだ。小説は考えて組み立てねばならない。技術も経験も頭も要る。そこまで苦労して書くかと問われたら、だれかのために働くか否かの選択になるわけで、書いても悪意を招くだけ、疲弊するだけでだれも喜ばず、そもそも自分が幸せならもう書く必要がないんだよ。要するにおれは趣味の人間なんだと思う。自分だけの場所で、好きなように読んだり書いたりする。分相応とはそういうことだ。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『逆さの月』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。最新恋愛小説『ぼっちの帝国』連載中。
ぼっちの帝国