杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第67回: 大いなる収穫

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2017.
08.31Thu

大いなる収穫

読書録ツールとしてそこそこ満足のゆくサイトにできた。アイキャッチに書影を設定し、カスタムフィールドにASINを、要約に本の紹介文を、タグに著者名を、記事名に書名を入力すれば自動的に本の紹介ページができあがる。旧サイトでは一冊分に30分は少なくともかかっていた。いまは設定自体は五分もかからない。感想を書く余裕がある。むりに長い文章を書かないと決めている。他人に読ませるつもりはないからだ。あくまで備忘録。メモ書き程度でいい。さらにおすすめ本と自著の紹介を一体化することにも成功した。著者名をクリックすれば著者のタグページへ飛ぶ。自著にはリダイレクトを設定してアクティヴィティを表示させた。古今東西の名作傑作と自著を同列に扱えるわけだ。セルパブGang!! の頃からこれがやりたかったんだよ。ついでにサイト名を人格OverDriveにし旧サイトから転送するようにした。『Pの刺激』印刷版を出すのは人格OverDriveであり、それはこのサイトにほかならないからだ。『信子』の感想にも書いたけれどもなんだかんだいってこの屋号にはこれまでの積み重ねがある。容易には棄てられない。

一方で著者一覧ページ、おすすめ本ページの著者紹介部分、などはうまくやれなかった。著者紹介はタグページに設定したカスタムフィールドを投稿に呼び出す方法がわからず断念。著者一覧はさまざまな方法を試したけれどもどれもうまくいかず。今後の課題だ。それ以外は旧サイトだけではなくセルパブGang!! でやろうとしたことまでも技術的にはかなえられている。登録ページを用意するだけで理想は実現する。でもさすがにもう他人を招き入れようとは思わない。他人と関わるのはトラブルのもとだ。そもそも日本にはセルフパブリッシングの土壌がなかった。あるのはコミケの文化だけだ。しきたりと相互監視の村社会でしかなかった。善悪ではなく単にそういうものだった。しきたりと相互監視と、お中元お歳暮的なご挨拶。そういうことが好きな連中が寄り集まって、そういうことをする。それが日本のセルフパブリッシングであり、主体的で自由な読書や出版を夢みるのは、魚屋でにんじんを求めるようなものだった。どのみちもう小説は書かないし、コミケ的な世界には関心がないので、そういうものだとわかって見切りをつけられたのはよかった。

NextPublishingはCreateSpaceと違って非常にわかりにくい。表紙PDF作成を二千円で代行してもらうことにしたら実態は単なるPDF変換サービスだった。塗り足しを加えてくれるのかどうか明確に質問していなかったこちらに非があるし、有益な助言を得られたので文句はない。これまでにさんざんしてもらったイレギュラー対応を考えれば安いくらいだろう。しかし今後は不要だとわかった(追記:その後、諸般の事情から絶版にしてCreateSpaceで出し直した。今後オンデマンド版を検討される方はCreateSpaceをお薦めする)。塗り足しは乱暴な手段でごまかした。5×8インチだとKDPの表紙が転用できるが四六判ではそうもいかず、その点でも不満が残った。商品そのものの体裁は絶版にした『悪魔とドライヴ』のほうがはるかに出来がよい。商品ページに日本語を使い、商品画像に裏表紙ではなく表紙を載せるためにはやむをえない。なんだかいろいろと本末転倒な気もするなぁ。『悪魔とドライヴ』は前面改稿版を秋のうちにどうにかする。もちろんKindle版を出すつもりはない。そもそも表に出さない。そういえば夏のうちに水着美人がプールで寛ぐ画像をアイキャッチにするつもりだったのに時機を逸した。今年も部屋の窓から花火を見て、別の花火の音を聴き、そうして虫の声と秋風の季節になった。収穫のときだ。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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