D.I.Y.出版日誌

連載第66回: 本を刷る

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2017.
08.22Tue

本を刷る

インプレスのオンデマンド印刷サービス NextPublishing を利用すべく準備している自分で取得した ISBN を利用するのに五千円かかるというCreateSpace では発番すら無料なので驚いたインプレス所有の ISBN を使う場合も同額のようなので外部サービスであるためにかかる手数料が五千円ということのようだ自前の ISBN を利用しても出版社名に自分の屋号は使えないこのサービスを利用した時点でその旨の事前説明はなかった)。 あるいは先行する類似サービスに価格帯を揃えたのかもしれないPDF で提供されているガイドを読むかぎり仕様に共通点は多いが表紙・背表紙・裏表紙を別々にアップロードするなど相違点もある技術的に同じ仕組みを使いながらも外部サービスゆえの手数が生じるということなのだろうKDP の表紙画像を転用できる 5×8 インチの代わりに四六判が使えるなど日本の出版事情に合わせた違いもあるようだ

いくつかのサービスを比較検討している出版ごっこを気楽に愉しめるのは BCCKS ださまざまな楽しみ方があるし料金も安いオンデマンドながら販売価格もそこそこに抑えることができるただし折の関係でページ数が自由にならないうまくやらなければ白紙ページができるそれに BCCKS という汎用性のないストアでしか売れないどうせ趣味なのだからそれでいいのかもしれない少なくとも日本語は使えるISBN を使えるのかどうかはわからないおそらく公式な機能としては使えないと思う表紙と奥付に印刷して紹介文に記載すれば使えるという程度ではないか初期は文字が左右にガタガタにぶれていて整列していなかったが現在はとても美しい印刷だと聞いている初心者向けだが割り切ってうまく使えば満足度は高いBCCKS と同価格帯でオンデマンド印刷と販売に特化したサービスに製本直送がある自分のサイトやブログに販売ボタンを貼れるらしいブランド価値がありサイトを持っている著者なら適しているかもしれないこれは実際には試していない

CreateSpace は価格も最安値だし自由度も高い原稿用紙 300 枚程度の中編なら千円以下の売値で Amazon に出せる販売をはじめて数ヶ月たつと値下げされその価格になる取り分は変わらない円相場とも関係がないようで理由はわからないBCCKS と違ってページ数を自由に決められる作成ツールは BCCKS ほどゴージャスではないが必要充分で行き届いており英語がわからなくても直感的に操作できるむしろ簡素な分だけ BCCKS よりも制約がない公式のツールや資料も含めて情報が豊富でぐぐれば大抵の問題は解決するただし致命的なことに商品画像が背表紙になるかけあえば一時的に正しく表示されるがすぐに裏表紙に戻るおまけに紹介文に日本語が使えない日米 Amazon と CreateSpace のサポートにさんざん掛け合ったがどうにもならなかった自分専用の記念品として本をつくるのには最適かもしれない激安製本サービスといったところだAmazon でありながら売ることを切り棄てる決意が要る

上記のサービスと較べると NextPublishing はどういう層を対象として想定しているのか首を傾げたくなる非常に使いにくくわかりづらくツールも資料もほとんどないその割に一般向けのような説明文に出くわしたりする利用者が少ないのでウェブの情報にも期待できない料金も安いとはいえず著者の取り分をゼロにしたところで非現実的な販売価格にしかならない。 「専門的な作業をセルフでやる分だけ割安になる自費出版という感じだAmazon は KDP Print も CreateSpace も日本で展開するつもりはないようだ客寄せコンテストに協賛していることからも NextPublishing がほぼ公式扱いであるのがわかるAmazon で売るのを重視すればほかに選択肢はない日本の外部企業という条件を考えれば価格も使い勝手もやむをえない営利であるからには当然オプションで稼ぐ余地も必要だろうさまざまな不満はあるが顧客対応には誠実さを感じた支払い手段をイレギュラー対応してくれた上にかなり丁寧に調べて説明してくれた日本のウェブサービスでここまでやってくれるところは少ない顧客対応がこれなら納得できるし信頼に値する二千円追加して表紙もやってもらおうかとさえ考えた背表紙・裏表紙の自由を手放すことになるが塗り足しのわずらわしさからは解放されるそれともフルセットの adobe を導入すべきかいずれにせよ最終的には印刷版のみを売り場に出すつもりだ

追記:諸般の事情から NextPublishing 版は絶版としCreateSpace で出し直したさまざまなサービスを利用したがやはりもっとも優れている今後オンデマンド版を試す方には CreateSpace をお薦めする


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。