杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第63回: バディムービー2連発

杜 昌彦書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2017.
07.19Wed

バディムービー2連発

福山雅治主演のバディムービー『SCOOP!』を観た。風刺のきいた知的なお伽噺。なるほどこれはヒットしなかっただろうなぁ! いい意味で。気の利いた台詞回しといい練られた脚本といい、無駄のない編集といい最高だった。文句なし。映像も音楽もいい。役者がまたよかった。あの配役であのネーミング。さじ加減が適度。もしあれがリアリティのある配役でもっともらしい役名だったら台なしだった。どうやらかなりの低予算だったらしくて前におれが使っていた一万円くらいの椅子が出てきた。

伊丹映画のカーチェイスみたいだと思ってぐぐったら同じことを考えたひとがいた。うーんでも二階堂ふみが撮るに至るまでは必然性あったと思うけどな? あれは①長すぎるベッドシーンとその後のキャパの写真集、②問題の撮影、それをはさんでの③現像室でのふたりの女のやりとり(「ちょっとピンぼけ」なのが気が利いてる)、の三つでセットになってるわけでしょう? コンゲームものでありバディものであると同時に、気の利いた恋愛ものでもあるわけだ。そういう意味で必然だし、素直にいい場面だと思うよ。男が撮りたかったキャパの写真を、教え子であり女である相棒が撮ったわけだから。あれ? そう考えるとこのプロットライン、なんか身に覚えあるな……。

つづいてミシェル・ゴンドリー『グッバイ・サマー』を観る。これまたバディムービーの傑作。しかしなんでこんなつまらない邦題をつけたんだろう。『ミクロ君とガソリン君』でいいじゃないか。万事において「転換」がうまい映画だった。序盤と後半の埋める場面の使い方もいい。ミクロ君が序盤で死を畏れていて、帰りの搭乗券を手にしてからの展開につながるのもいい。そこで棺桶のショットを入れるのがうまい。坊主頭で「男」になって、見送られる側になるのもいい。韓国と混同されているのは日本人としては落ち着かないところだけれども。ミシェル・ゴンドリーのいいところが抑制されたかたちで鋭く活かされていてよかった。少年期のひと夏の想い出を描いた青春映画、と思わされながら観ていると微妙にへんてこだったり、そのままさりげなく背筋が冷える展開へ連れて行かれたり。こういうのがいいんだよ。ちょっと三木聡『熱海の捜査官』みたいだったよね。

求心力となっていたはずの大きな要素を中盤で無効化して、そこからの展開がすごいんだよな。大きい転換がまずうまいし、ちりばめられた小さな転換もうまい。これがたとえば宝探しものだったら、探していた宝物が中盤であっけなく見つかって、でもそれは思っていたようなものじゃなくて、そんなことよりももっとでかい問題が起きていて……みたいな。そうそう、お話ってこんなふうに構成するんだよと膝を打ちたくなる。ジャック・レモンとウォルター・マッソーのかけあいを観たくなったなぁ。じつは続編のほうが68年の『おかしな二人』より好きだったりする。そういえば「シャキーラが怖い」というギャグはおもしろかった。デビュー当時はあんな魔女みたいな野獣みたいなけばいお姉様ではなかったんだけどな……黒髪のアンニュイ美少女だったのに……。


(もり まさひこ、1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、藤井太洋氏、十市社氏らによる指導を受けた『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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