杜 昌彦

D.I.Y.出版日誌

連載第58回: 偏在する多様性

書いた人: 杜 昌彦, タグ:
2017.
07.01Sat

偏在する多様性

いっときの局所的な流行とはいえマストドンのようなものが注目されたのは興味深い出来事でした出版もまた本来は中央集権ではなく偏在する点のゆるやかな連合であってもいいのではないでしょうかひとは裾野という言葉で語るとき東京の大手企業を頂点とした三角形のヒエラルキーを想定します経済の上ではそのような認識になるでしょう出版や読書そのもののありようとしては必ずしも適切ではありません

ウェブは評価経済をブーストしますそこでは共有に最適化された話題や上から目線で他人を貶めること効率よくクリックさせる技術の三点が尊ばれますいずれにも関わらない本はニーズがないとして淘汰されますしかしここでいう淘汰は社会的に不可視になることであって根絶と等しくはありません

ウェブの大手ストアは見かけがどうであろうと出版や読書とは何の接点もありません商材はユーザのクリックを効率的に誘発するゲームの構成要素のひとつにすぎません社会における人間ウェブにおけるアカウントの価値も同じですいいねやフォローやリツイートを効率よく誘発するゲームでしかありません替えのきかないものはそのように効率よく消費できません。 「そこにしかないものそこまで足を運ばねばならないものだからです労力は厭われます

ヒエラルキーを喧伝する声がいくら大きくかつまたどれだけ支持されようと偏在する無数の小さな点のうちのひとつでしかありませんそこだけ拡大するからあたかも巨大なピラミッドのように見えるだけです社会的に不可視な出版が現代では無数に偏在するはずですウェブは閉じた出版を疎外し貶める話題として共有します声の大きなひとたちに活動を諦めさせられる出版者も多いでしょうしかし同時に多様なありようを可能にするのもまたウェブなのです


(1975年6月18日 -)著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『悪魔とドライヴ』が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。最新作は『ぼっちの帝国』。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。
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