D.I.Y.出版日誌

連載第55回: 出版の民主化

アバター画像書いた人: 杜 昌彦
2017.
06.23Fri

出版の民主化

見たままの場所に書き込める UI が好みですtwitter や Facebook は対人能力に障害のある人間には向きませんWordPress は管理画面に遷移するのが不満でした前のサーバでは使えなかった Social Articles があっけなく動作したので今後はこのプラグインで書くつもりですWordPress といえば創始者マット・マレンウェッグが三年前に来日したときの記事を読みました。 「ウェブが美しいのは僕たちにフォーカスが当たっているから』」 「地理的な状況による差別は良くないといった言葉に勇気づけられました出版の民主化当レーベルが目指すのはまさにそういうことですWordPress ばかりではありませんそもそもウェブの目指すところが本来はそのようなものだとさえいえます

ところがこの考え方は日本ではなかなか受け入れられません多くのひとは社会的な活動の一環として本を読みます交流の口実だったり人脈や社会階層をアピールするものだったりしますそしてその前提としてだれもが同じであることがまず第一に要求されます書いて出版することも同じです自由な出版に関係があるかのように謳う NPO に一時期ちょっとだけ所属していました実際には東京近辺のライターの人脈づくりを意図した団体でした地方で小説を書いて出版する僕たちとは無関係でしたまたあるとき何人かの有志で著者が自分たちで品質や価値を高めて販促するツールをつくろうとしたことがあります関係者に危害が及びかねない脅迫を受け断念せざるを得ませんでした

ソーシャルメディアを眺めて感じるのは日本人は権力ありきだということです。 「常識にはだれもが従わねばならない人権は国家の寛大さにより賜るもので障害を持っていたり貧しかったりよそから来ていたり珍しいジェンダーだったり何かひとと違う要素があれば制限される大きな流れに身をゆだねたいひとりひとりの人間がものを考えるようになっては困る⋯⋯敗戦から 70 年以上も経つのにひとの価値観はそう簡単には変わらないのかもしれませんあるいは逆に時代の変化によって社会規範をより重要に感じるようになったためでしょうか警官に火炎瓶を投げた世代が教育を受ける機会を子どもから奪ったり店員や駅員に暴力をふるったりするさまを反面教師とすればやむを得ない流れかもしれません

規範はもちろん重要ですしかしそれはあくまでひとりひとりの権利を守るため責任を負うことは権利であって制約ではありませんだれかのいいなりになることではないのです想いも言葉もそのひと自身のものですありようを強制される謂われはありませんウェブはひとびとの関わり方を促進しますひとりひとりを尊ぶなら言葉の自由をだれもが同じであることを求めるなら同調圧力を加速しますこの国はどちらへ向かうのでしょうかだれかに認められることは少なくとも機能や手段としては読んで書いて出版する前提ではなくなりました。 「やれると自分に証明するために技能を向上させたい動機はそれで充分です


(1975年6月18日 - )著者、出版者。喜劇的かつダークな作風で知られる。2010年から活動。2013年日本電子出版協会(JEPA)主催のセミナーにて「注目の『セルフ パブリッシング狂』10人」に選ばれる。2016年、総勢20名以上の協力を得てブラッシュアップした『血と言葉』(旧題:『悪魔とドライヴ』)が話題となる。その後、筆名を改め現在に至る。代表作に『ぼっちの帝国』『GONZO』など。独立出版レーベル「人格OverDrive」主宰。