書写を始めてしばらくしてから、 硬筆書写検定というものがあることを知った。
前回私は、 趣味への動機づけに他者評価を利用するときには依存しすぎないよう注意が必要だと書いた。 けれども、 自分の字のレベルがどのあたりにあるのか知りたいと思った場合、 こういう外部評価はひとつの基準になると思う。 また目標にもなり得る。
どういう書写技能が評価されるんだろう?と思って試しに 3 級のテキストを買ってみた。 検定を主催している一般財団法人日本書写技能検定協会によると、 3 級は受験者が一番多く、 合格率は 8 割程度で、 一般的に中学・高校生が受験するレベルらしい。
出題は実技問題が 6 問と理論問題がある。 試しに実技の第 1 問速書きをやってみたけど、 115 字を 4 分で書くというのが、 思っていた以上にできなかった!最近、 縦書きでゆっくりていねいに書くということばかりやっていたせいもあるが、 速く書くと 「自分しか読まなくていい字」 に一気に崩れてしまう。 現状、 他人に読めるくらいの字を速く書くというのは、 今の自分に欠けている技術だ。 さらにこの問題は、 行の中心をそろえて書くことと、 漢字よりひらがなを小さく書くという手書きの基本ポイントはもちろん、 字間・行頭をそろえることなども必要になってくる。
第 2 問は漢字を楷書と行書で書くというもの、 第 3 問は漢字を行書にして縦書きで文を書き写すというもの、 第 4 問は漢字を楷書にして横書きで文を書き写すというものだった。 模範解答のポイントを読んでいると、 字形の整え方がでてくる。 このあたりは書写の教科書にも書かれている。 へんとつくり、 上下からなる漢字のバランスについての記述だ。 今は楷書を丁寧に書くことしかやっていないけれど、 行書も練習すると楽しいだろうなあ。
第 5 問はハガキの宛名を書き、 第 6 問は掲示物を書くというもの。 実用を想定したらしい課題だけど、 私は第 6 問の課題をみていると頭が勝手に Word の手順を考えてしまうので、 やるとしたら一番苦手な問題かもしれない。 少なくとも掲示物を手で書こうとは思わないので。
理論問題は知識を扱うもので、 部首の名前や筆順、 草書、 漢字の間違い探しをマークシートで解答する。 ぱっと見たところ、 常用漢字の間違い探しは曲者な気がした。 行書、 草書を見慣れている人は見落としがちな漢字がいくつか紛れている。 いわゆる旧字体も多い。
世の中には色々な検定があるけれど、 3級というのは学んでおいて一番ちょうどいいレベルなのかもしれない。 漢字にしても英語にしても書写にしても、 3級より上か下かで自分の技能をはかることができる。 他者評価に惑わされることがあると同時に、 自分が勝手に他人の上ばかり見すぎて落ち込んだり、 下ばかりみて優越感にひたってみたり、 そういう状況にはまってしまったとき、 基準のひとつとして戻る場所をつくることはいいことだ。 受験する・しないは措いておくとしても、 今の自分にできていることと、 できていないことを確認する手段として、 3級のテキストは使っていこうと思う。 色々な方法で字へのアプローチができるのは、 基本的に楽しいことだ。
買ったテキスト。 書き込み式でなおかつミシン目が入っており、 問題を切り離して使える点がよい。
使った文房具
漢字を基本からやるときは十字補助線入りが便利。
シュナイダーはペン先の硬さがちょうどよく、 好んで使うペンのひとつ。