書写という趣味

連載第7回: 「書写」の教科書を読む

アバター画像書いた人: 28(にわ)
2023.
07.27Thu
書写
ノートは百円均一の漢字練習帳84字,鉛筆はuni硬筆書写用6B

「書写」の教科書を読む

私は書写を趣味としているけれどそもそも書写という言葉を聞きなれない人のほうが多いと思う私自身小学校の教科書くらいでしかこの言葉を見たことがなかった

学校教育でいうところの書写とは、 「文字を正確に書く力をつけるためのものである小学校のうち1~2年生は硬筆のみを行い3年生からは毛筆による指導が追加されるしかし一般的に硬筆によるものは書写と呼ばれ毛筆によるものは書道と呼ばれることが多いちなみに毛筆以外のペンはすべて硬筆である鉛筆万年筆ボールペンサインペンマーカーなどが硬筆に当てはまる

小学校の教科書は市立図書館に所蔵されていることが多い貸し出しができるかどうかは各図書館によって違うかもしれないがいくつかの出版社から見本誌として提供されているのを保存しているようである小学 1 年生の書写の教科書にはたいていひらがな・カタカナの五十音表が載っており見比べてみると微妙な違いが感じられて面白い執筆している先生が違うのだから五十音表に書かれている字が違うのは当然である私の場合、 「などのむすぶ個所があるひらがながなかなかうまく書けなくて試行錯誤しているので教科書ではそれらを注視していた何年か前の教科書は貸し出しできる形で置いてあったから五十音表のコピーをとり東京書籍の平形精逸先生のひらがなをお手本にして練習したりしている大人になってから字をきれいに書く練習をするとき自分がなりたい文字を自分で選ぶことができるのは嬉しいことだ

小学生の児童にとって文字を正しく読み書きすることは学習において必要不可欠であるすべてここから始まるといっても過言ではないひらがな・カタカナ・漢字は国語科で習うけれども残りの授業でももちろん読み書きはする板書をノートに書き写すことは書写指導のひとつでもある文字が正確に整えられて読みやすく書かれているかどうか

それは小学校教育では基本的にどんな提出物・掲示物も文字を手書きさせるからだかつては社会に出ても手書きで文章を書くことがあっただろうけれど今となってはほとんどないただ文字を覚えるための漢字の読み書きなら漢字一字や熟語をひたすら書いて練習することで覚えることができる文字は至るところにあるので読むことは日常だけれど手で文字や文章を書くことが稀となりつつある現代である意味それは非日常になりつつある今後大人になって稀にしかおとずれることのない手書きのために筆順を覚えとめ・はね・はらいを丁寧に書く癖をつけ字形を整え文字の大きさと配列に気を配って文章を書く練習をする世の中にはそれが意味のないことだと言う人もいるかもしれない

学校教育はほぼすべての人が受けているからそれぞれの人がその人なりの学校教育観をもちそれを語ることができるただ一個人が 9 年間の義務教育と 3 年間の中等教育高等学校のことを経たあとの学校教育観と約 150 年続いた日本の近代教育史を比べるとその重みは違う時代に左右されない普遍さというものがありそのなかで残すべくして残されたものがあるはずなのである

しかも義務教育というのは受けているあいだにそのメリットを実感することはできないむしろなんのためにそれを学んでいるかわからないからこそそれを学ぶ意義がある事後的にしか学びの意味はわからないしそれがわかったときにはじめて学んだメリットが現れるもちろん人によってその現れかたは異なるからあの勉強はまったく使わないし無駄だったという人もいるだろうただ長じてからの学びにおけるメリットを多くの児童に享受させるためにはまんべんなく様々な種を蒔くしかないそれが義務教育というものであるそのなかで教科書は子どもの教育に対して真面目に考えている専門家が子どもに基礎が身につくようにまた発展の要素をさりげなく目配りさせながら作っているものである

書写という教育を受けたことをすっかり忘れたあとに大人になってから書写を趣味にするなんて私自身まったく想像もしていなかったことだったそしてあらためて書写の教科書を読んでみると当時はわからなかった運筆の理屈や意味に気づいたりする

書写にテストはないが在学中の学力テストの結果だけでなく大人になってから学びに対する気づきがあるということは学校教育の成果のひとつであり学校教育がきちんと機能している証拠だと思うのである

使用した文房具

6B ともなると筆圧をあまりかけずに濃い字が書けるのが良い

鉛筆で書くときの下敷きはもっぱら共栄プラスチックのライティングマットを使っている柔らかくて字が滑らないのがいい


遠つ人。日常+ 読書。Huginn(思考)とMuninn(記憶)