文房四宝とは、 中国文人の文房趣味のひとつで筆、 墨、 硯、 紙の四つを指す。
趣味としての書写を行うさい、 書くための道具、 すなわちペンの選択は重要だ。 何を使って書くかによって紙の選択も変わるからだ。
まずわたしたちが一番書きなれているのは、 鉛筆だと思う。 間違えたら消しゴムで消すことができるし、 芯の硬度の種類が多い。 現在は 6B から 9H まで種類がある。 1 鉛筆メーカーは色々あるが、 私が今、 書写用に使っているのは三菱の硬筆書写用の 6B か 4B だ。 私が小学生のころはトンボの HB をよく使っていたような気がするけれど、 2000 年以降に小学生が使うのは HB より 2B のほうが多いらしい。 色が濃いと筆圧をそれほどかけなくていいからかもしれない。
次にシャープペンシル。 学生時代に使う筆記具といえばこれだ。 授業中、 ノートをとるときに使う芯の太さは 0.3 ~ 0.5mm だと思う。 シャープペンシルは軸の太さ、 重心の高さ、 グリップの有無など、 使い心地で個人の好みに差が出る。 特に学生時代は授業で大量の字を書くから、 手になじまないシャープペンシルを使うと手首や指先が疲れてしまう。 社会人になるとシャープペンシルで大量に手書きすることはなくなるが、 年齢を重ねると筆圧をかけるシャープペンシルはつらい。 私は書写では kaweco special 0.9 を愛用している。 太い芯がラクだということと、 ペンそのものの重み、 軸のひんやりとした金属の感触が好きなのである。 以前は軽いプラスチック製の KOKUYO enpitsu sharp を使っていた。 こちらは kaweco に比べて入手しやすいと思う。
その次はボールペン。 社会人になると使う頻度が高くなり、 油性、 水性、 ゲルインクとインクの種類で分類される。 販促でもらうものからプレゼントまで、 ボールペンも様々だ。 書写に限らずとも普段使いするペンはなるべくストレスの少ないものを持ちたい。 最近はなめらかな書き味を謳うものが多いように感じる。
ぬるぬる書ける代表ボールペンは三菱 uni の jetstream だ。 インクは油性。 日常使いのノック式からちょっとしたプレゼント向けの回転式まで多くの種類が出ている。 ペンの色も黒1色からカラーを含む 4 色までとバリエーションがあるし、 軸の色の展開も豊富だ。 ゲルインクだとゼブラの SARASA の人気が高そうだ。 なによりゲルインクは油性と違ってボールペンのダマ (ボテ) が出ないのが良い。 乾くのも早いからうっかり手を置いて擦れることもない。 カラーバリエーションも多い。
最後は万年筆だ。 近年は低価格・入門用の万年筆が多く出ている。 プラチナ万年筆が低価格万年筆である preppy( プレピー ) を販売したのが 2007 年で、 PILOT が入門用の万年筆として kakuno を発売したのは 2013 年だ。 そのあたりから万年筆という筆記具はそれ以前よりぐっと身近な存在になった。
万年筆はメーカーが多いし、 色々なデザインや種類もある。 筆記具のなかでも趣味性やコレクション性が高いといえる。 それゆえデザインに目が行きがちだが、 洗浄等のメンテナンスや使えるインクカートリッジの規格にも気を付けて品物を選びたい。 ほかにも国内メーカーと海外メーカーの違いでいえば、 同じ F 字 (細字) でも国内メーカーは漢字を書くことを考慮して海外メーカーよりペン先が細かったりする。 手帳用に買った海外メーカーの万年筆が思ったより太字で困った、 ということも起こりうる。 一番いいのは店舗で試筆して買うことなので、 その際は文具店に店員さんに気軽に聞けばいいと思う。
弘法筆を選ばずとは言うが、 道具を使う人はたいてい 「良いものを使え」 と言う。 私もその通りだと思う。 道具というのは身体の拡張だ。 それと同時に環境の一部でもある。
ペンは人間の身体である手と、 字が書かれる紙とを媒介する。 ペンを使いこなすことができれば、 人は思い通りの字を書くことができる。 頭に思い描いた文字のイメージをペンに伝えていくには、 体幹で上半身を支え、 背中から肩、 腕、 手首、 指先へと力を伝えていく必要がある。 ペンを思い通りに動かしていくという過程を繰り返すことで、 ペンは徐々に身体の拡張としての道具になっていく。
また、 ペンは紙と接触する道具でもある。 文字を書く際にペン先から伝わる抵抗は、 外部からの刺激として脳にフィードバックされる。 書かれた文字のラインが思い描いていたイメージとずれた場合は、 次にそれを修正してペンを走らせる。
自分の操作と連動して思い通りの文字が書けたとき、 人は道具にも文字そのものにも自己帰属感が生まれてくるのだと思う。 気持ちよく使える道具は道具ではなく 「自分の身体の延長」 である感覚をもたらすからだ。 特に書写は文字を書くことのみに集中するため、 ペンという道具に対して愛着を持ちやすいかもしれない。
今回使用した文房具
参考サイト